キックオフナンバーはヴィヴァルディの“春”をモチーフにした“走れエロス”。リアドの疾走感のあるビートに乗って金井の高音ボーカルが場内をすごい早さで飛び回る! オーディエンスの熱は一気に最高潮になって、巨大なシンガロングが巻き起こる。そんな狂騒の中、ステージ両脇から勢い良く何かが飛び出す。始めは紙吹雪か何かだと思ったが、やけに大きいということでよく見てみると、それはなんとコンドーム! 女の子の家に泊まることになったものの、コンドームを持っていないことに気がついて自動販売機に走る男の姿を描いたこの曲に合わせた演出だ。続いて「赤鼻のトナカイ」のセッションを挟んで“テレーゼのため息”をプレイ。金井と柿沼によるツイン・ギターが、東出のヴァイオリンの旋律と真っ向からぶつかり合うことによって生まれる緊迫感のあるグルーヴでもって、序盤を猛スピードで駆け抜けていく。
「さあみなさん、愛で地球を回す時間です! 世の中だいたいお金で回っていますけど、せめて今だけは愛で地球を回してみませんか!」という金井のMCからの“Lovescape”では、地球儀を模した青いバルーンが会場に投下され、祝祭ムードがまた一段と盛り上がる! ハチャトゥリアンの“剣の舞”をモチーフにしたインストナンバー“ツルギが無い”では、元々BPMの高いこの楽曲を更に加速させたスペシャルヴァージョンを披露。オーディエンスがリズムに合わせて体を揺らそうと思っても間に合わないくらいの超高速のアンサンブルが、客席に向けて放射されるグリーンのレーザーライトの演出と相まって、ちょっと尋常じゃないくらいの迫力を放ちながらオーディエンスの理性のタガを粉々に破壊していく。続くMCでは、今日の会場である九段会館でライブをすることになったいきさつの話に。金井が言うには、「ちょうど1年ぐらい前なんですけど、ゴロゴロしながらテレビを見てたら元某首相が記者会見をしていて、そこで『お母様からの巨額の献金が…』という話を聞いて。お母様からの巨額の献金…、巨額…お母様…、巨…母…、……BIGMAMAやないかーい!」と思い、この会場を押さえてもらったそうだ。
第一部のラスト直前、ステージ上から降りてきたスクリーンを使って、昨日12月24日に敢行されたクリスマスプレゼント企画の模様が上映される。知らない方がいるかもしれないので一応説明させていただくと、これはクリスマス前後に特製の靴下に入れられた「クリスマスプレゼント」として自宅に届けられる完全受注生産のシングル『I'm Standing on the scaffold』と、ライブDVD『Back To The “2008.4.13”&“2009.4.12”~We Don't Need a Time Machine~』の発売に併せて行われた企画で、注文者の1人の自宅にメンバーがサンタクロースの格好をして直接商品を届けにいくというもの。ちなみにこの映像は彼らの公式HPから観ることができるので、今日来られなかったファンの方はぜひチェックしてみてほしい。やらせ無し、ぶっつけ本番のリアルな感じがなかなか笑えます。
映像が終わってスクリーンが上がると、映像と同じサンタの衣装に身を包んだBIGMAMAのメンバーが立っていて、「どうもメリークリスマス! これからプレゼント大会をやります!」という嬉しいサプライズが! これは入場時に集められたチケットの半券を使って抽選を行い、見事当選した方には各メンバーが選んだプレゼントが直接手渡しされるというもので、各メンバーのプレゼントは以下の通り。ちなみに全て5人のサイン入りとのこと。
リアド:本ツアーを一緒に回ったシンバル
安井:特大サイズの“虹を食べたアイリス”のイラストパネル
東出:クリスマスキャンドルと、東出が一番好きだという神戸にあるイスズベーカリーのパン
柿沼:昔キャンプに行く時に購入したチューニングの合わないギター(名前はフォーエバーフラット君)
金井:中学の時に通販で買った、つい最近まで使っていたという作曲用ギター
抽選で選ばれた幸運な当選者がステージに呼び出され、無事にプレゼントの受け渡しを済ませたところで「今度はみなさんにクリスマスソングをプレゼントしてもよろしいでしょうか!」という金井のMCから“My Greatest Treasure”をサンタの衣装のままプレイ。「Merry Xmas!」というシンガロングで会場のクリスマス気分をぶちあげて、サプライズ満載のアガリにアガった第一部はここで終了。
第二部の冒頭で、一人でステージに出てきた金井が語ったのは、2010年ももうちょっとで終わりだということ。今年で25歳になったということ。はじめは25歳で音楽をやめようと思っていたということ。それでもあきらめたくなくて頑張って、2011年は予定がびっしりになったということ。2012年の予定もぽつぽつと決まりはじめたということ。そして最後に「それもみなさんのおかげです! この歌を贈らせて下さい」という感謝の言葉を口にして、“I Don't Need a Time Machine”をアコースティックギターで弾き語る。通常よりも音数が少ないせいか、金井の高く伸びるボーカルと、歌のメロディの心地良さが際立っていたように思う。そしてこの曲から次の“CPX”にかけての、曲の途中でメンバーが順々にステージに現れて、必要最低限の情報量で届けられていた楽曲に色を着けていくという演出はとてもドラマチックだった。
中盤には、「今年結婚した方はいますか? 今月結婚した方は? あなたにこの歌を捧げます」というMCから、『Roclassick』にボーナストラックとして収録されている、メンデルスゾーンの“結婚行進曲”をモチーフにした“チャラララーンの歌”をライブ初披露。イントロが鳴った瞬間に大歓声があがったキラーチューン“Paper-craft”では、ステージ両脇からトイレットペーパーが発射! そんなトイレットペーパーがヒラヒラと舞う会場に、盛り上がりすぎて半狂乱状態になったオーディエンスの拳が力強く突き上がる! そのまま畳みかけるように“荒狂曲 "シンセカイ"”をプレイ。全員がものすごいテンションになってぐしゃぐしゃに音を吐き出しているはずなのに、全体として極めて一枚岩なアンサンブルが、ラストに向けてオーディエンスを留まることなく熱狂させていく。
そしてラスト直前にはヴァイオリン奏者2名と、ビオラ奏者とチェロ奏者を招いて『I'm Standing on the scaffold』のカップリング曲、山下達郎のカバーで“クリスマスイブ”をプレイ。9人編成で繰り広げられる叙情豊かなクリスマスソングを会場に降り注ぐ特殊効果の粉雪が彩り、ライブは多幸感溢れる最高の雰囲気に。本編ラストは東出を中心とした変則弦楽五重奏のしっとりとしたイントロから“計算高いシンデレラ”をプレイ。「ラーラーラーラーラー」というオーディエンスからの大音量のシンガロングに、メンバーは感極まったかのような表情を見せながら、最後まで会場に幸せを振りまいてステージを去っていった。
アンコールでは、金井が「俺が言うとウソっぽく聴こえると思うけど、ホント感謝してるんすよ。もっと他に好きになるものもあるだろうに、今日この場所を選んでくれて本当に嬉しく思います。ありがとうございました! 今からちょっとだけここをライブハウスに戻したいと思います!」と高らかに宣言して、“the cookie crumbles”、そして“Dowsing For The Future”をプレイ。オーディエンスはそれに全力のシンガロングでもって応戦し、今宵のスペシャルなライブに幕。終演後、再びスクリーンが降りてきて、今日のためのリハと思われる映像をバックにエンドロールが流れ、最後は「Merry Xmas」という文字と共に照明が点くという嬉しい演出もあった。さらに、ここまででも数えきれないぐらいのプレゼントをもらったのだけれども、なんと退場時にも、アンコールで演奏された2曲のライブ映像が収録された特製DVDをメンバーがオーディエンス一人一人に直接手渡ししてくれるという嬉しすぎるサプライズも!
本ツアーの追加公演となる、翌年2月9日からの新宿ACB、下北沢ERAなど、キャパ200〜300人規模の小さめのライブハウスで行われる5DAYS公演や、3月30日に行われるSHIBUYA-AXでのグランドファイナル公演の発表。最後にもらったライブDVD。そして何よりも幸せだったライブ空間。今日の彼らが私たちにくれたとびきりのクリスマスプレゼントは、とても靴下には入りきりそうにない。(前島耕)
[セットリスト]
第一部
1. 走れエロス
2. テレーゼのため息
3. かくれんぼ
4. as one
5. 英雄を抱いてマリアは眠る
6. Lovescape
7. "MISSION 481"
8. ツルギが無い
9. Neverland
10. ダイヤモンドリング
11. 虹を食べたアイリス
12. My Greatest Treasure
第二部
13. I Don't Need a Time Machine (アコースティック金井+柿沼)
14. CPX (アコースティック全員)
15. Do You Remember? (アコースティック全員)
16. チャラララーンの歌
17. I'm Standing on the scaffold
18. Paper-craft
19. 荒狂曲 "シンセカイ"
20. クリスマスイヴ(山下達郎カヴァー)
21. 計算高いシンデレラ
アンコール
1. the cookie crumbles
2. Dowsing For The Future