ジャマイカ@恵比寿リキッドルーム

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ジャマイカ@恵比寿リキッドルーム
ジャマイカ@恵比寿リキッドルーム - pics by Shoichi Kajinopics by Shoichi Kajino
ジャスティスのグザヴィエがプロデュースしたアルバム『ノー・プロブレム』でデビューした、フランスはボルドーのロック・ユニット……なんて言葉はないですが、そうとしか形容しようがない。アントワン・ヒレール(Vo/G)とフロー・リオネ(B)の2人組で、アルバムは打ち込みドラム+ギターとべース+歌+α、という基本構造なので、バンドではないし。でも音は明らかにロックだし。えー、とにかく、そんなジャマイカ、5ヵ月前のフジロック以来というショート・タームでの来日公演です。ただし、フローが病気で来日できなくなり、代わりに友人のバンドのベーシストが入って、そして前回と同じくサポートドラマーが加わった、3人によるライブでした。

僕はフジの時観れなくて、今回がライブは初めてだったんだけど、ちょっと、驚くほどよかった。シンプル。タイト。質実剛健。一切のムダがない。という時点で、充分にいいライブをやるバンドなんだけど、さらにプラスアルファがある。
そもそも、ハウス・レコーディングとか、宅録とか……「とか」って、英語を日本語にしただけですが、とにかくそういう手法で作られている音楽って、独特の感触があるじゃないですか。たとえギター中心のサウンド・プロダクトだったとしても、ちょっとこう、密室っぽいというか。プライベートな感じというか。あれ、ギターがライン録りだったり、ドラムが打ち込みなのでひとつひとつの音のバラつきやゆらぎがなかったり、というような、録音方法が理由だと思うんですが。
で、『ノー・プロブレム』の日本盤のライナーに載っている、グザヴィエのコメントによると、このアルバムはまさにそういうふうに作られたものだそうで、つまり、ストレートで開放的なギター・サウンド/伸びやかで陽性なメロディ/でもとことん開放的ではなくてどっか密室的でプライベートな感触を持っている、そういう作品だったわけです。で、そこがよくもあったわけです。

では、ドラマーが加わったライブだと、どうなるのか。当然、リズムのプライベート感は消える。しかも、かなり手数の多い豪快なタイプのドラマーだったので、大変に生っぽいことになっている。ベースも然り。言っちゃ悪いが、たぶんフローよりうまい、このサウスポーの助っ人ベーシスト。よってますます生になる。ちょっと打ち込みも使っているが、ほんのちょっとなので、断然生々しさの方が勝っている。
ただし、アントワン・フレールの歌が、そうじゃないのだ。歌いだしから「えっ!?」と思うくらい、エフェクトされた声。で、ピッチとか全然ぶれなくて、とにかくもう、正しい音程と正しい抑揚でもって、メロディを形にしていく。まるでCDみたいというか、耳のそばで歌われているみたいというか。そういうものなので、生っぽくてラウドで勢いに満ちた音からは浮き上がっている。よって、はっきりと、くっきりと耳に飛び込んでくる。
つまり、アルバムにおいてはリズムが担っていたプライベート感を、ライブではボーカルが担っているのだ。かといって、無機質で冷たいんではない。すっごいエモーショナルなんだけど、そのエモさが空中に拡散していくのではなく、そのまんま塊としてまっすぐ耳に飛び込んでくる感じなのだ。1曲1曲終わったり始まったりするごとに「おおお!」と歓声が上がるような(そう、「キャー!」じゃなくて「おおお!」という感じ)あっついライブなのに、何か、バンドと自分、マンツーマンでこの場にいるような感覚に陥る、聴いていると。

プライベートな感触を持った音のアーティストは、いっぱいいる。生のバンドサウンドにこだわったアーティストもいっぱいいる。その両者の中間を立ち位置としているアーティストも、全然少なくない。さらに、そういう音でもって、ポップで開かれたことをやろうとしている人なんて、もういくらでもいる。いるんだけど、このジャマイカのライブにおけるアプローチは、ちょっと、いや「ちょっと」じゃないな、かなりめずらしい音楽体験でした、僕にとって。おもしろかった、とにかく。で、そのおもしろさにやられて、年明け間もない平日なのに、リキッドルームが埋まるほどの人が集まってるんだなあ、とか思ったりもした。

なお、セットリストは以下。わずか1時間弱、全12曲のステージだったんだけど、20分くらいに感じた。アルバム全曲やって、カヴァーも1曲やってるんだから、これ以上はやりようがないんだろうけど。アルバムがもう1枚出たら、次はもうちょっとたっぷり観たい。
あ、そのカヴァーというのは8曲目です。ポリスの曲。邦題“孤独のメッセージ”ね。演奏する前に、「カヴァーをやるよ」と告げて、ニルヴァーナの“Come as you are”のさわりだけやって、次にレッド・ツェッペリンの“胸いっぱいの愛を”もさわりだけやって、その上でこの曲に突入してました。

あともうひとつ。オープニング・アクトの日本のバンド、Heavenstampもよかった。初めて観たんだけど、ボーカルとドラムが女性、ギターとベースが男で、ちょっと聴いたことのない「洋楽と邦楽のまじりかた」をしたギター・バンドだった。注目します。(兵庫慎司)

1.CROSS THE FADER
2.SHE’S GONNA
3.BY THE NUMBERS
4.THE OUTSIDER
5.SECRETS
6.JERICHO
7.GENTLEMAN
8.MESSAGE IN A BOTTLE
9.SHORT AND ENTERTAINING
アンコール
10.JUNIOR(アコースティック・バージョン)
11.I THINK I LIKE U 2
12.WHEN DO YOU WANNA STOP WORKING?
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