真心ブラザーズ@中野サンプラザ

真心ブラザーズ@中野サンプラザ
真心ブラザーズ@中野サンプラザ
真心ブラザーズ@中野サンプラザ
真心ブラザーズ@中野サンプラザ
真心ブラザーズ@中野サンプラザ
真心ブラザーズ、2011年最初のワンマン・ライブは、「中野区にから ~'11寒中見舞~」というなんとも「らしい」、ついつい微笑んでしまうようなタイトルがつけられた。全席指定の中野サンプラザは開演前からびっしり埋まっている。デビュー20周年を祝して真心としてのリリースや記念イベントが盛りだくさんだった一昨年に比べると、昨年はそれぞれソロ活動に精を出していた印象だったが、それを堪能しつつ(したから、もあるか)、ファンの真心への欲求も高まり続けていたということだろう。

開演は18時からの予定だったのだが、17時50分から15分ほど、オープニング・アクトとして事務所の後輩だという星羅がパフォーマンスを見せてくれた。エレアコ弾き語りで3曲という簡潔なセットの中で、驚かされたのが、真心の”ENDLESS SUMMER NUDE”のカバーを演奏したこと。これまでも多くのシンガーがカバーしてきた曲だが、その先人たちと同様彼女もまたあの名曲を完全に自分の色に染め上げていた。具体的に言うと、AメロBメロでイノセントな透明感のある歌声を聴かせた後、サビで一気にエモーションを爆発させて曲が元々備えていたセンチメンタルな部分を強調する、というような感じ。つまり、歌の表現力だけで曲の表情を自在に変えていたのだ。短い時間だったが、「歌」という自分のストロング・ポイントを、恐らく彼女をまだ知らない人もいたであろう観客席にしっかりアピールしていたと思う。

真心ブラザーズのライブは、18時15分に始まった。暗転した舞台から、桜井秀俊のゾクゾクするようなエレクトリック・ギターの音と≪ババッババッ ドゥーバッ ドゥービドゥビ≫というあの印象的なコーラスが響き渡る。1曲目から、“拝啓、ジョン・レノン”!もう、最初から飛ばしまくり、フルスロットルだ。特に桜井のソロはジミヘン並の爆裂っぷりで、今からこんなに飛ばして大丈夫なのか!?と心配になるほどだったけれど、結果を言ってしまうと、アンコールの最後までそのテンションでプレイし続けていた。凄すぎる。また、今日のバックはコーラスのうつみようことマウンテン・ホーンズ4人も揃った8人の、MB’sフルメンバー。後で桜井も「久々のMB‘s全員揃ってのワンマンですが、きれてますよ、今日は!」と言っていたが、ハイテンションの2人にがっちり組み合った演奏を聴かせてくれた。1人1人の演奏力の高さもさることながら、2人(特にYO-KINGの自由さ)に全員が呼吸を合わせる柔軟性という点で、いつもながらつくづく優れていると思う、このバンド。

2曲目は“傷だらけの真心”。そして、この曲のサビで≪先はまだ長そうだ≫と歌った余韻を消さぬまま次の“新しい夜明け”を≪僕らはどこまでも歩く 終わることなきこの道を≫という決意の言葉で歌い始めた。思わずガッツポーズしたくなる繋ぎだ。真心が何の制約(新譜の存在やバンド編成の問題)もなく名曲をセットリストに散りばめると、こうした遊びがいくらでもできるのだろう。ライブの後半には“ENDLESS SUMMER NUDE”からの“Dear, Summer Friend”という「サマー・アンセム」2連発もあった。全く離れた時期に作った曲がこうして連なった物語性を持つのも、彼らがミュージシャンとしてブレていないからだと思う。

演奏のテンションが最初のクライマックスを迎えたのは、“素晴らしきこの世界”。YO-KINGの弾き語りからバンド・サウンドに以降する構成の曲ゆえに、フォークからロックというYO-KINGのボーカルの変化、その「ロック化」の瞬間のダイナミズムが凄まじかった。本人も「一言言っとくけど、今日俺ノド絶好調だわ」と言い放っていたが、それに全力で頷きたくなるような圧巻のボーカル。いや、いくら絶好調といっても、ちょっと凄すぎる。声質にしろ歌いまわしにしろ、YO-KINGの歌がずーっと格好良かったのはもちろんなのだが、その標準装備の格好良さに加えて歌唱技術の高さがとんでもないことになっていたのだ。高音の伸びやフェイクのキマり方など、うっとり聴き惚れてしまうような完成度。以前YO-KINGは「2006年頃初めて歌を上手く歌うことに意欲が出てきた」と語っていて、デビュー15年を越えて初めてそんなことを思うなんて捉えどころがないというか、YO-KINGらしいなぁ、と思っていたけれど、それを実際にこなしてしまうあたり、やはり凄い男だと思う。そして、次の“スピード”でもまた、バンドもフロア(全席指定のはずの会場が、気付けばダンスホールと化していた)も絶頂を維持し続ける。終わったあとYO-KINGが漏らした「かぁっこいいねぇ!」という言葉は、それまでのどのMCよりも心の底から出ていたように思えた。

今日は新曲(未CD化の曲)も3曲披露された。真心ブラザーズとしての新曲は、NHK教育テレビで朝6時55分から放映している5分番組「0655」でオンエアされている“朝が来た!”(ボブ・マーリー“Soul Captives”のカバー)と“のりこえるの歌”。ライブで演奏するのはそれぞれ初めてとのことだったが、今日のベスト盤的セットリストに組み込んでも浮かないくらい、両方ともばっちり「真心の歌」になっていたと思う。そして、3曲目の新曲は、桜井がM.C.SaKu、ベースの上野一郎がM.C.Ichiro、サックスの首藤晃志がM.C.Koushiに変身(それぞれ色違いのスカジャンにサングラス、キャップを着用)して組むラップ・ユニット「50円玉」の“炎の後半戦”!3人がやりたい放題にラップする中、バックの演奏はYO-KINGがベースを、うつみようこがギターを務めていた。一見するとただの悪ふざけなのだが、いや、悪ふざけであることは変わりないかもしれないが、それにしてもクオリティが高い。ポップス寄りヒップホップの曲も、加齢を自虐する歌詞も、ギャグとしていちいちセンスが良い。一番笑ったのは、“スピード”の歌詞をパロった≪肩こり大したことないぜって叫んで歯茎から血が出た!≫というライン。いやぁ、楽しかった!

と、思いきや、会場を大合唱に巻き込んだ“EVERYBODY SINGIN' LOVE SONG”で本編を締めた後、アンコールにて再び50円玉登場!『俺たちは真心だ!』収録の“M.C.SaKuの今夜はラップでパーティー“を演奏した(もっとも今度は既存曲のため、M.C.IchiroとM.C.Koushiはほとんど出オチのような扱いだったが)。こうしてエンターテインメントに振り切れることができるのも、その次にやる1曲ですぐ空気を元に戻せる自信があるからだろう。それを裏付けるように、アンコール2曲目の”BABY BABY BABY“は圧巻の出来だった。着替えてすぐ元通り鉄壁のグルーヴを築ける50円玉の3人も凄かったが、ここにきて本日最高を更新するようなYO-KINGの異常なまでの声量に度肝を抜かれた。この曲で一気に会場のムードを真心モードに切り替え直し、そのままフィナーレに相応しい少しスローでソウルフルなアレンジで演奏された”RELAX~OPEN~ENJOY“で今日のライブは大団円を迎えた。

真心ブラザーズは3月2日から東名阪のジャズ・クラブ(ブルーノートとビルボードライブ)をまわり、各会場で1日2公演を行うという「タンデムダンディ22」ツアーを開始する。また、桜井はMCで「今年はいっぱいツアーをやりたい。2人なら今まで行けなかったところも行けると思うから、日本全国挨拶回りをしたいな、と」とも言っていた。期待は膨らむばかりだ。とにかくどんな場所・形態のライブでも、今年も真心に付いて行けば間違いない、改めてそう確信したライブだった。(土屋文平)

<セットリスト>
1.拝啓、ジョン・レノン
2.傷だらけの真心
3.新しい夜明け
4.Sometimes 時々
5. All I want to say to you
6.メトロノーム
7.うみ
8.素晴らしきこの世界
9.スピード
10.朝が来た!
11.のりこえるの歌
12.炎の後半戦(50円玉)
13. Song of You
14. ENDLESS SUMMER NUDE
15. Dear, Summer Friend
16.空にまいあがれ
17. EVERYBODY SINGIN’ LOVE SONG
アンコール
18.M.C.SaKuの今夜はラップでパーティー
19.BABY BABY BABY
20.RELAX~OPEN~ENJOY
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