ラ・ラ・ライオット @ 代官山UNIT

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ラ・ラ・ライオット @ 代官山UNIT
2008年にリリースしたデビュー・アルバム『The Rhumb Line』で一躍ブレイクを果たし、昨年には待望の2ndアルバム『ジ・オーチャード』を発表したニューヨークの6人編成バンド、ラ・ラ・ライオット。ボーカルのウェス・マイルズが学生時代に関西外語大学に留学していた経歴を持つ彼らは、先月の震災以来、ブルックリンのチャリティ・フェスティバルへの出演やAmazon mp3ストアからの収益の寄付などを通じて積極的に支援活動を行ってきたが、このたび初の日本単独ライブが実現することになった。来日公演自体は、昨年の「NANO MUGEN CIRCUIT 2010」(http://ro69.jp/live/detail/37689)に唯一の海外アクトとして出演して以来となる。

大歓声に迎えられて登場したラ・ラ・ライオットは、ステージをいっぱいに使って左からウェス・マイルズ(Vo/Key)、アレクサンドラ・ローン(Cello/Chorus)、マシュー・サントス(B)、マイロ・ボナッチ(G)、レベッカ・ツェラー(Violin)が一列に並び、後ろにドラムのガブリエル・ドゥケッテが構える布陣。「コンバンハ。僕らはラ・ラ・ライオットです。来てくれてありがとう」と今日はメガネをかけているウェスが挨拶し、1曲目の“Massachusetts”に入る。
ラ・ラ・ライオット @ 代官山UNIT
予想以上にエネルギッシュなドラムとベースのアンサンブルにまず驚かされる。家でアルバムを聴いているとやはり曲によって好みに差のようなものが出てくるのだが、ウェスが中央に移動してボーカルに専念し、アレクサンドラがキーボードを弾いた“Too Too Too Fast”や新作からの“Shadowcasting”のあたりまでは、今どの曲をやっているかということがほとんど意識に上らず、ただただ演奏の迫力に圧倒された。

ラ・ラ・ライオット @ 代官山UNIT
次いでバラードに移行し、もともとはウェスとヴァンパイア・ウィークエンドのロスタム・バトマングリによるエレクトロポップ・デュオ、ディスカヴァリーのデビュー作『LP』(あまり話を聞かないけれど、嫌味のない実験精神に溢れた注目すべき作品だと思う)の未収録曲だった“Do You Remember”、そしてアレクサンドラの操るエレクトリック・チェロとレベッカの弾く側面にスパンコールの付いたバイオリンの静謐な二重奏で始まった“Run My Mouth”で中盤の山場を作る。

MCでは今日の昼間に明治神宮に行ったことや、メンバーが「raw fish egg」(イクラのこと?)を初めて食べたことなどを語ったウェス。彼がバスドラムからジャンプして見せた“Boy”、それから「このショウを被災者の方々と、地震と津波があったとき日本にいた全ての人に捧げます。ガンバッテネ」という前置きに続いて披露された本編最後の“Too Dramatic”でフロアの歓声は最高潮に。
ラ・ラ・ライオット @ 代官山UNIT
“Do You Remember”と“Run My Mouth”、そして代表曲“Can You Tell”などによく表れているように、ラ・ラ・ライオットの優れた特徴の1つは、マイナー・キーの楽曲から確かな幸福の手触りのようなものを引き出すことができるところにある。そしてそれを支えているのは、クラシック音楽の素養を活かしていつも背筋の伸びた音を聴かせるチェリストとバイオリニストをダイナミックなリズム・セクションに大胆に組み入れたことと、才能のあるシンガーがひしめいているニューヨークの音楽シーンの中でもとりわけ光彩を放っているウェス・マイルズの恍惚とした、しかし耽美に堕することのない歌声だろう。

それぞれの曲の最も感動的な瞬間に、彼らの音楽は例えば人が人生のある特別な時期にだけ持つことのできる切望や、子どもの頃に嗅いだ土や草や夜の匂いを思い起こさせる。そうしたことが起こるのは、ラ・ラ・ライオットの音楽がメンバーたち自身の個人的な記憶とその中にある場所に深く結びついているからではないかと思う。
ラ・ラ・ライオット @ 代官山UNIT
アップステート・ニューヨークにあるシラキュース大学で、大学生活の最後を楽しむために最終学年で結成されたラ・ラ・ライオットが、『ジ・オーチャード』のデモ曲を同じアップステートにある桃の果樹園(オーチャード)で制作したこともそれと無関係ではないだろう。メンバー間でしきりにアイコンタクトを取りながら夢中で演奏する様子は、1年半前にこの代官山UNITのステージに上がったヴァンパイア・ウィークエンド(http://ro69.jp/live/detail/27724)にも似ていたが、ほとんど完全なまま記憶に封じ込められた過去の体験を共通体験として提示できるという点で、彼らは全く独自の道を進んでいるのだと思う。(高久聡明)

セットリスト
1. Massachusetts
2. Too Too Too Fast
3. Shadowcasting
4. Oh, La
5. Do You Remember
6. Run My Mouth
7. You And I Know
8. Saccharin And The War (Sparksカバー)
9. Kansai
10. Each Year
11. St. Peter's Day Festival
12. Foolish
13. Can You Tell
14. Boy
15. Too Dramatic

アンコール
16. Ghost Under Rocks
17. Dying Is Fine
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