何より、最低限のマイク設備しか通していないはずなのに、どんな爆音よりタフなヴァイブに満ちている7人のコーラス、さらにそのハーモニーを貫いてダイレクトに飛び込んでくるトータスの歌の圧倒的なパワーに、感激する前に思わず驚愕した。同時に、そんな「ほぼ生声」のアクトは、客席を埋め尽くした500人ほどのオーディエンスの合唱とも最高の親和性を見せていく。“いつもの笑顔で”で沸き上がった客席一丸の合唱に「グッジョブ!」と力強く応えたり、“愛がなくちゃ”のパワフルなコール&レスポンスでさらなる熱気を巻き起こしたり……という中で、いつしか「ステージ対オーディエンス」という構図とは違う、この場に居合わせた人たち全員でもってひとつの祝祭空間を描き出していこう、というモチベーションがむくむくと生まれていくのがわかる。「トータス松本とコーラス隊の歌を聴かせる」ものではなく、それこそ「1万人で『第九』を歌う」とかいうのに近い、観客1人1人のアグレッシブな歌とクラップとアクションによって、別次元の高揚感が生まれていくアクトだった、ということだ。
「教会やからって、ちょっと『服装ちゃんとせなあかん』と思ってたとこあるやろ? かと思うと、何も気にせず、俺のグッズのTシャツの人も……(笑)。なごんできたわ! やっぱ教会って緊張するもん!」と、ホットにほぐれてきた会場の空気感を確かめるトータスの顔も満面の笑顔だ。最新アルバム『マイウェイ ハイウェイ』の最終曲“ハッピーアワー”のレコーディングの際、今回ハッピーアワーズのメンバーとして参加しているユリとオリビアのコーラスを聴いて、「コーラスだけのコンサート」のアイデアを思いついた、と語るトータス。「普段はバンドやったりギター弾いたりしてるんやけど、『きっとこんなふうにやったら、バンドとは違うエネルギーの盛り上がりみたいなもんがあるかも』みたいなイメージがあったんですよ。それをもう、1本1本やりながら……ものすごい、自分の中で何かが育ってるんですよね。ほんと、歌えてよかった。ありがとう!」という彼の言葉に、割れんばかりの歓声と拍手が巻き起こる。シンガーとして、アーティストとして、同時にひとりの人間として、生命力をよりリアルかつヴィヴィッドに体感し得る表現方法として、彼が明確な意志を持って「人間の声と拍手しかないライブ」を提示したことが、その歌と言葉からひりひりと伝わってきた。
客席を3分割(客席を区切るトータスの「そのへんから、こっち!」の声に、ハッピーアワーズが♪そのへんから、こっち〜、と絶品のコーラスで応えていたのも笑えた)して会場一丸となっての美麗ハーモニーを響かせたり、「手がかゆかゆになるくらい手拍子してや!」というトータスのテンションを上回る勢いで“明星”の圧巻のクラップがチャペルの空間を満たしたり、“ハッピーアワー”の《負けへんぞ何があっても》という渾身の関西弁が荘厳なハーモニーと融け合って極彩色の化学変化を生み出したり……ツアーの後半戦を残しているので、セットリストの全貌や、ビシッとキメたトータスの衣装などなどの演出に触れることは避けておくが、5月27日福岡/5月30日大阪/5月31日名古屋の3公演の一部がライブ・レコーディング&iTunes配信されている(詳細は http://www.tortoisematsumoto.com/news/ を参照のこと)ので、当日会場に行けなかった人でも、その震えるほどのエネルギーと美麗ハーモニーのほどは体感していただけることと思う。
「もうツアー半分きてしまって……歌うことの嬉しさとか楽しさとか、俺の中でどんどん大きくなってるし、それは止まらないと思うし。みんなもそれぞれやりたいことをやって、日本が元気になっていけばいいと思う。みんなが元気になれるんやったら……また呼んでください!」というトータスの想いが熱い福音のように聴く者すべての胸に降り注ぐ、感動的な一夜だった。翌日=6月3日の品川教会公演もiTunes配信されるほか、この日の公演の模様はトータス松本自身初となるUstream生中継も決定!(高橋智樹)