中田裕二 @ Shibuya DUO -Music Exchange-

中田裕二 @ Shibuya DUO -Music Exchange-
中田裕二 @ Shibuya DUO -Music Exchange-
今年1月に発表された椿屋四重奏の突然の解散。誰もが驚いたことは記憶に新しいが、その中田裕二がついに本格的なソロ活動をスタートさせた。ソロ活動の幕開けは、彼が2009年からスタートさせたソロ・プロジェクト「SONG COMPOSITE」での全国ツアーだ。カバー曲を中心に名曲を届けるという「歌」に重きを置いたこのプロジェクトで、バンド解散後ソロとして初のツアーを6月から行ってきた。本日は東京・Shibuya duo MUSIC EXCHANGE2日目の公演。ライブ中、中田がアンケートで来ている観客の年齢層を聞いていたのだが、今日は中田と同年代くらい(昭和生まれ)の人が多かったらしく、上質なお酒を黙ってじっくり愉しむように、1曲1曲に酔いしれながら静かに聴き入っていたのが印象的だった(ちなみに、1日目は平成生まれの人が多かったらしい)。そして、中田はそんな観客一人ひとりに向けて、数々の名曲の核にある「歌心」をしっかりと伝え、またソロとしてのオリジナル曲を通して「歌」のあり方と真正面から向き合う姿を見せてくれた。

椿屋四重奏時代のサポートでもお馴染みのキーボーディスト、YANCYとともに白シャツにベージュの7分丈パンツというラフな格好でステージに現れた中田。「旅する公開カラオケパブ、中田裕二『SONG COMPOSITE』のお時間がやってまいりました。全身全霊、魂をこめて本気でカラオケをやりたいと思いますのでよろしくお願いします」と挨拶すると、往年の名曲や彼が多大なる影響を受けてきたアーティストの楽曲のカバーを次々と披露していく。割と最近の曲でもいいところをついてくるなと思わせる選曲もあって、なかなか奥深い。そして、今回はYANCYのキーボードと中田のアコースティックギターに加えて、中田がアコギのボディを叩いたり、カッティングしたりしながらリズムを多重録音していき、その場でループさせてパーカッションにして音を鳴らすという試みに挑戦していた。タンバリンやオーディエンスの手拍子なども録音してリズムにし、単なるアコースティックセットとはまた違った臨場感のあるサウンドが鳴っていたのも見所だった。

「いい歌すぎる! こんな曲、今の日本のヒットチャートにないですよ」と歌い終えるたびにその楽曲がいかに素晴らしいかを語っていた中田だが、この日披露されたカバー曲に共通するのは、楽曲に宿っている歌の力が凄まじいということ。ヒットしたから名曲になり得たわけではなくて、歌っている人のキャラクターや生き様が歌に投影されているからこそ、人の心に残るものとして存在するというようなことを中田は熱弁していた。そんな強烈な個性を放つ名曲たちを、完全に中田のものとして鳴らしているのが凄い。やはり実力派のボーカリストだなと感じさせる。浮遊感溢れるウィスパーボイスで歌われる原曲を中田の艶やかなボーカルで染めてみたり、誰もが知るポップソングをレゲエ風にアレンジしてみたり、元々凄みのある歌をスペインのフラメンコ的な情熱の塊をぶつけるようなアレンジでさらに熱っぽく歌い上げてみたり……どこをとっても中田裕二という唯一無二の歌い手としての歌心が滲み出ていたのだ。

肩肘張らずに自由に伸び伸びと楽しそうに歌い上げた名曲カバーの中に、織り交ぜるようにして披露されたソロとしてのオリジナル曲も、ジャジーでメロウに聴かせる曲だったり、ハンドマイクでしっとりと歌い上げる王道のバラードだったり、歌そのものに陶酔できる楽曲が揃っていて、これからのボーカリスト・中田裕二を予感させる。特に「生と死、輪廻について歌った歌です」と紹介して後半に演奏した新曲は、いつかは終わりを迎えるけれども、また新しく生まれ変わっていくという意味で、バンドの終わりと自らのソロとしての始まりを匂わせつつも、普遍的な広がりを見せる歌だと感じた。今、中田裕二は一人の歌い手として生身の自分を曝け出し、歌を歌うことの歓びや、歌心をオーディエンスに伝えられることの感動を心の底から感じているんだろうなと思う。それくらい穏やかな表情で愉しみながら音楽を奏でていたのが、観ている側としても嬉しかった。

アンコールの楽曲は、自称歌謡ソムリエだという中田が、楽曲をワインに例えて赤か白か、重いのか軽いのか、各地のお客さんの好みを聞いてから選曲して歌っているそう。この日は赤の重いものということで中田が選んだ意外な楽曲も、見事に彼の歌として響いているのが新鮮だった。それ以外にも会場との和やかなコミュニケーションが微笑ましく、「ものまねやって!」というリクエストにも中田は快く応えて、なんとSOPHIAの松岡充、森山直太朗のものまねをサービス。さらにはまだ練習中だというある曲のカバーもワンコーラス披露してみたりと気分も上々の様子だ。そして、最後に「このツアーが終わったら、レコーディングを始めて、できたら今年中にソロデビューアルバムなるものを出したいなと思っております。どこにもないような感じの作品になりそうな予感がしているので、楽しみに待っていてください」とソロデビュー作に向けての堂々宣言もあった。ソロとしての第一歩を歩み始めた中田裕二。今回のツアーで歌を歌うことを心から愉しんでいる今の中田の姿を見た人は、これからの彼の活躍を期待せずにはいられないはずだ。これからライブを観る方は本当に楽しみにしてほしいと思う。

なお、この日のセットリストはツアー終了翌日の8月2日に公開するので、こちらもお楽しみに。(阿部英理子)


セットリスト (※8月2日に追記しました)
1.少年時代(井上陽水)
2.落日(ICE BOX)
3.リバースのカード(オリジナル)
4.sunday monday(オリジナル)
5.Like A Star(Corinne Bailey Rae)
6.ベール(オリジナル)
7.Ti Amo(EXILE)
8.PRIDE(CHAGE & ASKA)
9.白日(オリジナル)
10.バルコニー(オリジナル)
11.シンシア(原田知世)
12.もう恋なんてしない(槇原敬之)
13.恋人よ(五輪真弓)
14.みずいろの雨(八神純子)
15.涙そうそう(夏川りみ)
16.エンドレス(オリジナル)
17.ウィスキーがお好きでしょ(石川さゆり)
18.テネシーワルツ(江利チエミ)
19.ひかりのまち(オリジナル)

アンコール
1.ワインレッドの心(安全地帯)
2.また君に恋してる(坂本冬美)
3.接吻(ORIGINAL LOVE)
4.見上げてごらん夜の星を(坂本九)
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