今回で5回目を迎えるB-DASH主催のライブイベント『SERVICE』。2009年から毎年7月にSHIBUYA-AXで行われることが定例化しており、今年も7月も暮れに差し掛かった今夜、同会場にて開催の運びとなった。今回のゲストは、サンボマスターとMONGOL800。3ピースというバンド編成、年代や「青春」を匂わす音楽性も近くて、バンドが歩んできた道筋も似通っているという、多くの共通点を持ったバンド同士の競演である。しかし。蓋を開けてみれば、彼らが全く違ったスタンスでバンドと向き合っていることが、はっきりと浮彫りになる競演だった。
開演時刻の18:45。“モンキーマジック”のSEに乗って登場したのは、一番手のサンボマスター。「皆さん、準備はいいですかー!?」という山口の合図から、1曲目からフロアを絶頂に導くアンセムを叩きつけていく。バンドの意向で詳しい内容は明かせないが、この日のセットリストは代表曲を漏れなく盛り込んだ鉄板の構成。山口をはじめとした福島出身者で結成したバンド・猪苗代湖ズの“I Love You & I Need You ふくしま”も披露され、楽曲ごとに様々なエモーションが立ち上るライブとなった。そして。やはりこの日も圧巻だったのは、バンドとフロアの凄まじい一体感。山口が「ロックンロール!」と叫べば無数の拳が突きあがり、ソウルフルな歌声が響きわたれば美しい手の波が広がり、“世界はそれを愛と呼ぶんだぜ”では大シンガロングが沸き起こり……という歓喜が次々と訪れるステージに、いつもながら胸を熱くさせられる。それもこれも、バンドがオーディエンスに捧げる愛と信頼が、とてもなくピュアで真に迫っているからだろう。「ホワイトハウスや国会議事堂で何が行われていようが関係ない。それよりもアナタの笑顔が見たいんだ!」といった言葉をしきりに叫ぶ山口と、それに全身で応えるオーディエンス。そうやって剥き出しの感情をぶつけ合っていくバンドとフロアの姿は、かくも美しい。ということを、改めて感じることができた感動的なアクトだった。
二番手はMONGOL800。「ハイーヤイーヤサッサ!」という“enjoy yourself”のSEに乗って、ステージにゆっくり登場。サンボマスター同様、“あなたに”“小さな恋のうた”から最新オリジナルアルバム収録曲“神様”に至るまで、新旧の代表曲を散りばめたセットリストでフロアをモッシュとダイブの渦へと変えていく。ステージ背後の強烈な光に照らされて、郷愁溢れるメロディを紡いでいく3人の姿が、とにかく眩しい。しかしサンボと決定的に違うのは、その佇まいがクールなこと。いや、クールと言うと「冷たい」とか「閉じている」とかいう印象を与えかねないので語弊があるか。もっと正しく言えば、3人とも落ち着いていていることだ。威勢のいいパンク・チューンであれ、伸びやかなスロー・バラードであれ、沖縄節全開のポップ・チューンであれ、淡々と音を奏でていく3人。時折屈託ない笑顔を浮かべる清作の姿には、大人の余裕すら感じられる。そして、この気負いのないムードが心地いいのだ。モンパチの曲が、聴き手の心をダイレクトに揺さぶる力を持っているのは言わずもがな。しかしそれだけでなく、こういった3人のスタンスがあるからこそ、彼らのライブは最高に開かれたものになっているんだと思う。必死の形相で歌い叫ぶサンボのライブとは対照的であるが故に、いつもあたたかく聴き手を包み込むモンパチの大らかさが、ありありと感じられるアクトだった。
そして。20:35、オーガナイザーのB-DASHがついに登場! SE“GO GO B-DASH”に乗って大揺れのフロアとは対照的に、いつもながら淡々とステージに現れた3人。「こんにちは、B-DASHです。1曲目“KIDS”」と挨拶すると、いきなり暴発アンセムを投下する。軽やかなメロディとは裏腹に、ARASEのドラムを土台としたサウンドの音圧がすごい。続く“WATER POW”では、パンクでミクスチャーでハードコアな爆音が場内を戦慄させていく。「今日は『SERVICE』へようこそおいでくださいました。これから新曲2曲やります」と披露された、“JOBAN2”“PEPPO”の2連発でもフロアを圧倒。炎がメラメラと燃え盛るようなヘヴィな音塊、ドラスティックに展開する複雑なアンサンブルに、骨太なロックバンドとしての側面が露になる。かと思えば、Tシャツ&短パンに裸足という出で立ちのGONGONが朴訥なMCを披露したり、“ハーコー”“平和島”という瑞々しいパンク・チューンを爽快に掻き鳴らすところも、なんとも彼ららしいのだが。
ステージ背後の黒幕が左右に開いてスクリーンが現れたところで、「ここでスペシャル・ゲストと中継が繋がっています」として、ファンにはお馴染みのマスコット「トニオちゃん」のCGアニメーションがスタート。リズムに合わせてダンスする「トニオちゃん」がスクリーンに映し出される中、“GO MY FRIENDS”“愛するPOW”が鳴らされる。オーディエンスの衝動を底から突き上げる性急なサウンドと、「トニオちゃん」の脱力系ダンスのコントラストがおもしろい。
その後は怒涛のクライマックスへ。“オジエモン”“ヒポ”“炎”とハードエッジなサウンドが矢継ぎ早に放たれると、すでにモッシュとダイブで入り乱れていたフロアは更に揉みくちゃに。あくまで多くを語らず、音そのもののダイナミズムで熱狂を生み出していくB-DASHの姿に、職人にも似たひたむきさを感じる。そのまま“RACE PROBLRM”まで駆け抜けて、本編終了。アンコールではベートーベン“第九”を取り入れた新曲“M11”、鉄壁のキラー・チューン“ちょ”などを連打して、ライブは大団円を迎えた。
終演後は、サンボマスターとMONGOL800をステージに招き入れ、オーディエンスを巻き込んでの記念撮影。満面の笑顔を浮かべながら、ステージを去る9人の姿がとても印象的だった。ともにバンド初期に爆発的なブレイクを果たし、自らを取り巻く大きなうねりに翻弄されながらも、ひたむきに音を鳴らしてきた3バンド。さまざまな紆余曲折を経験することで、より強固になった3つの信念が、高らかに開け放たれた清々しい一夜だった。なお彼らはROCK IN JAPAN 2011にも仲良く参戦。3バンドの雄姿を、少しでも多くの人に灼熱のひたちなかで見届けてほしい。(齋藤美穂)
B-DASH @ SHIBUYA-AX ゲスト:サンボマスター、MONGOL800
2011.07.28