アナログフィッシュ×andymori @ 渋谷クラブクアトロ

アナログフィッシュとandymori。年齢も、出身地も、所属レーベルも、音楽性も、これまで歩んで来たキャリアも異なる2バンドである。本編中のMCやブログで語られていたように、andymoriの音楽に惚れ込んだアナログフィッシュ・佐々木(Vo/B)の熱烈コールによって実現したこの日の渋谷クラブクアトロ・ツーマンライブ。それぞれシーンの主流からある点において「はみだした」ロックを鳴らす2つのスリーピース・バンドの共演は、一体どんなマジックを生み出すのか。超満員のフロアで開演を待った。

■ andymori
定刻になり、お馴染みのSE“The End Of The World”にのってまずは先攻andymoriが登場。オープニング・ナンバー“andyとrock”でシャープな立ち上がりを見せた後は、“Peace”“ベンガルトラとウイスキー”“スーパーマンになりたい”を連続でプレイ。生き急ぐかのように前へと転がる性急なビート、目一杯かき鳴らされるジャキジャキのギター・サウンド、そしてメロディからこぼれ落ちそうなほど詰め込まれた積載過多気味のリリック。それらが渾然一体となって迫り来るandymoriのロックンロール、その圧倒的な情報量の多さとスピード感でもって、序盤のフロアを狂騒へと導いていく。衝動や激情が唐突に剥き出しになり、次の瞬間には何事もなかったかのようにフッと平熱に戻る小山田(Vo/G)の抑揚をつけたボーカリゼーションは、この日もオーディエンスを一気に夢中にさせる不思議な引力を放っている。

続くゆっくりとした楽曲が並んだブロックでは、じっくりと熱を込めて“ダンス”“1984”を披露してから、“Stand by me”をカヴァー。スティーブン・キング原作の映画のストーリーとも相まって、若き日のノスタルジアを強烈に呼び起こすベンEキングの原曲も(今更僕が言うまでもなく)最高に素晴らしいのだが、若さのまっただ中にいるような、少年性を備えた小山田の青く澄んだ声によって歌われるこのandymoriヴァージョンも、原曲とは違った趣のセンチメンタリズムを想起させる名カヴァーに仕上がっていた。その後のMCでは、この日の対バン相手のアナログフィッシュについて、「下北沢シェルターでの(岡山)健二(Dr)の初ライブの時、佐々木さんが打ち上げにいて、すごい酔っぱらってて、もの凄い絡まれて(笑)『おーいおいおい、ロックンロールだろお前!!』って(笑)」と小山田が語ると、「で、今日会ったときはすごい穏やかな顔で『おはようございます!』って言われてまたびっくりした(笑)」とすかさず藤原(B)。そんなメンバーの息の合った掛け合いに、フロアからあたたかい笑いが起こる。

また、終盤には新曲“パーティは終わった”“在る光”を披露。どちらもそれぞれ《パーティは終わった》《何にもないね》と繰り返す、小山田が抱いている世界に対しての虚無感が前面に飛び出したシンプルなナンバーであった。そして小山田がアコースティック・ギターに持ち替えてしっとりと届けられた“16”を終えて、ライブの流れはクライマックスに向けて急加速。“革命”“すごい速さ”から、歌詞の一部を《渋谷の空の下》と歌ってフロアを沸かせた“グロリアス軽トラ”を経て、ラストは“投げKISSをあげるよ”で終了。およそ1時間余りの尺で全20曲を掃射した、実に「これぞandymori」なステージだった。


■ アナログフィッシュ
セットチェンジを挟み、ルー・リード“Walk on the Wild Side”にのって現れたアナログフィッシュ。まずは「こんばんは、アナログフィッシュです」という下岡(Vo/G)の挨拶から“PHASE”へ。今の日本の現状を鋭角に打ち抜くような《失う用意はある?/それとも放っておく勇気はあるのかい》というパンチラインが、瞬く間にオーディエンスを捉えていく様はまさに圧巻の一言。続いてグルーヴィーな佐々木ボーカルの“LOW”から、「俺たちはこの日を楽しみにしてきました! andymoriありがとう! 今日は今までで一番気持ちを込めて歌います!」(佐々木)と、新曲“ロックンロール”をプレイ。何かが変わる瞬間の高揚感を瑞々しく映した軽快な1アンサンブルにのって、佐々木の力強い歌が高らかに響き渡り、熱を帯びていくフロア。その後も“平行”“HTBRID”とライブが進んでいくにつれて、この日のクアトロを包む興奮の度合いは、じわじわと上昇軌道を描いていくのであった。

そして“戦争が起きた”“風の中さ”から、「こんなに夢中になって聴いてるバンドは本当に久しぶりで、初めて“FOLLOW ME”という曲を聴いたとき、これは本当にすごいバンドに出会ってしまったと思って」と、佐々木がandymoriについてMC。その後も「さっきもずっと楽屋が隣だったんですけど、2時間ぐらいずっとビートルズをみんなで歌ってて、楽屋がパーティみたいになってて。それで俺はこんなに(andymoriのように)音楽をずっと好きでいられるのかって、なんかもう本当にすごいなと思って。」とまくしたてていき、そのあまりの心酔ぶりに、フロアが和む一幕も。そこから、“Fine”“TOWN”とアップナンバーを勢い良く畳み掛けたところで、下岡の手元のサンプラーから眩い煌めきを放つシンセのリフが流れ出す。そしてフロアから巻き起こったハンドクラップの中、「今日はこの曲を、皆さんと一緒に共有できたらと思っています! またぜひ来てください!」(下岡)と、9月発売の新作からのタイトルトラック“荒野”を披露。《行きたい場所は選択肢にはない/やりたい事はパンフレットにはない/誰も誰かの代わりにはなれないよ》という下岡の歌が、オーディエンスひとりひとりの心に、確かな感動を刻み付けていった。

アンコールの、ダンサブルにアレンジされた初期の名曲“TEXAS”まで、披露された全11曲のうち、なんと6曲が未発売の新作からという超強気のセットリストで挑んだこの日のアナログフィッシュ。その結果はどうだったかというと、もう、ぐうの音も出ないほどの圧勝。その勝因は明快で、新作の曲がとにかく素晴らしいのだ。世の中への違和感を、様々な解釈が可能な含みを持たせた言葉で伝える、超一級のプロテスト・ソングのマナー(60年代のボブ・ディランとかもそうでした)で書かれた、かつてないほど外向きに働きかけてくるようになった下岡の曲。そしてそれによってもたらされたバンドの変化を、真っ正面から祝福する躍動感溢れる佐々木の曲。かねてからのファンや、この日初めて彼らの曲を聴いて大変な衝撃を受けた方はもちろん、「最近よく名前聞くなあ」とか、「昔聴いてたけど…」という方も、これを読んでいたらぜひ、9月8日(水)に『荒野/On the Wild Side』を手に取ってほしい。10月10日(月)
に行われるバンド初の日比谷野音ワンマン「TOKYO SAVANNA」に足を運んでみてほしい。それこそ「一生聴ける」レベルの名曲を次々と量産している今の彼らの状況が、音楽ファンの間にいまいち伝わりきっていない感じが非常にじれったくなるほど、ここ最近のアナログフィッシュ、あきらかに、過去最高にもの凄いことになっているので。(前島耕)


[セットリスト]
■ andymori
1. andyとrock
2. Peace
3. ベンガルトラとウィスキー
4. スーパーマンになりたい
5. ダンス
6. 1984
7. Stand by me
8. Sunrise & Sunset
9. ボディーランゲージ
10. everything is my guitar
11. ユートピア
12. 無までの30分
13. ハッピーエンド
14. パーティは終わった
15. 在る光
16. 16
17. 革命
18. すごい速さ
19. グロリアス軽トラ
20. 投げKISSをあげるよ

■ アナログフィッシュ
1. PHASE
2. LOW
3. ロックンロール
4. 平行
5. HYBRID
6. 戦争がおきた
7. 風の中さ
8. Fine
9. Town
10. 荒野
アンコール
1. TEXAS
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