Nothing’s Carved In Stone @ 新木場スタジオコースト

Nothing’s Carved In Stone @ 新木場スタジオコースト
Nothing’s Carved In Stone @ 新木場スタジオコースト - pics by RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)pics by RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)
「1年前のツアーで、次はコーストでやろうと言ってて。それが今日実現しました」。アンコールでウブがこう言うと、「次は武道館!」という声がフロアから送られる。「さすがに武道館は埋まんないでしょ!」とウブは謙遜してたけど、そんなことないと強く否定してしまいたくなるような、素晴らしいアクトだった。Nothing’s Carved In Stoneの3rdアルバム『echo』を引っさげた全国ツアーの最終日@新木場STUDIO COAST公演。今のロック・シーンを代表するスター・プレイヤーが集うバンドとしての圧倒的なポテンシャルと、バンドの進化がはっきりと見て取れたステージには、彼らのしなやかな強靭さが宿っていた。

18:10、フロアの暗転とともに地鳴りのような歓声が沸き起こる。仄暗いステージにゆっくり現れた4人。ウブのバリバリとしたギター・リフから1曲目“Truth”へ突入すると、4つの音がガップリと組み合った、メタリックなアンサンブルが紡がれていく。村松のソウルフルな歌声とウブのメロディアスなギターが、大喜多&ひなっちの手によるソリッドなビートの上で大きくうねっていくさまは、驚くほどスリリング。いつもながらノリノリでプレイするひなっちの躍動的なパフォーマンスも、フロアの熱をヒートアップさせる大きな牽引力になっている。激しく火花を散らし合う音がフラッシュバックのような酩酊感を呼び起こした“Spiralbreak”、静謐なエレクトロ・サウンドから一気に光の世界へ上り詰めた“November 15th”と畳み掛けた頃には、フロアはモッシュとダイブの乱立状態に! この冒頭3曲だけでも、彼らのライブバンドとしてのポテンシャルの高さを物語るには十分だ。

しかし本ツアー最大の聴きどころは、この後。“Cold Reason”を経て最新アルバムの楽曲が連打された中盤だった。まず先に言っておくと、最新作はこれまでになくメンバー4人の強烈な個性が花開いたアルバムだった。過去2作では、互いのプレイヤビリティを確かめ合うように、一枚岩のアンサンブルをひたすら紡いできた彼ら。それでバンドの地固めをしたことで、より自由でオリジナリティに溢れた音を解き放つに至ったのが、今作の大きな変化だった。それ故に、初めて生で聴く新曲の出来を楽しみにしてたけど、予想以上の迫力! ファンキーでトライバルなグルーヴが不敵に駆け巡った“Falling Pieces”、ギターとベースのソロ・リレーが彗星のごとく駆け抜けた“False Alarm”、音の隙間を埋めるように放たれた轟音がアンビエントなムードを醸し出した“My Ground”――。そのどれもが上下左右に奥行きのある立体的なサウンド・スケープを描いていた。今回初めて挑戦した日本語詞の楽曲“Chain reaction”もすごくいい。深い孤独とロマンチシズムを抱えた村松のヴォーカルがよりセンチメンタルな響きを増していて、エモーショナルなバンドサウンドと絶妙にマッチしていた。

そして何より驚くべきは、4人の自然な佇まいだ。エネルギーほとばしるロックンロールを奏でながら、あくまでも大らかで力みないムードをまとった4人。そうすることで、聴き手に緊張を強いるような切迫したストシズムとは無縁の、しなやかで肉体的なロックンロールを生み出していくさまは、いつ見ても素晴らしい。それに加えて、空に向かってぐんぐん枝葉を伸ばす樹木のような瑞々しい生命力を感じられたのが、今回の新たな発見。数々のバンドやプロジェクト経験を積んだプレイヤー集団である故の、余裕すら感じられる空気感はバンド結成当初から流れていたものだけど、この瑞々しい輝きは、プレイヤーそれぞれが己の本性を剥き出しにした最新作を経たからこそ手にし得たものだと思う。その明確な変化に、作品ごとにバンドを着実にビルドアップさせていく4人の強靭さを痛感したとともに、どこまでもバンドを生き物のように進化させずにはいられない彼らのプレイヤーとしての業が感じられて、胸が熱くなった。

Nothing’s Carved In Stone @ 新木場スタジオコースト
“Around The Clock”“Isolation”などライブ定番曲でフロアのオイ・コールを呼び起こした後は、BPMをグッと抑えた“To Where My Shoe Points”を叙情的に奏でて本編終了。アンコールでは「今回は大人な雰囲気でやろうと思ったけど、ひなっちが暴れたいと言ったので」というウブのMCから、フロアを業火の中へと引きずり込む獰猛なアッパー・チューンを叩きつけて大団円を迎えた。大喜多の前で向き合った3人が、ひたすらアグレッシブに身体を動かしながら楽器を弾き鳴らしたラストシーン。まるでロックを奏でられる喜びを全身で表現しているかのようなその光景が、いつまでも目に焼きついて離れなかった。(齋藤美穂)
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