ストレイテナー @ 渋谷クラブクアトロ

ストレイテナー @ 渋谷クラブクアトロ
ストレイテナー @ 渋谷クラブクアトロ
ストレイテナー @ 渋谷クラブクアトロ
ストレイテナー @ 渋谷クラブクアトロ - all pics by (C)橋本 塁(SOUND SHOOTER)all pics by (C)橋本 塁(SOUND SHOOTER)
「『LONG WAY TO NOWHERE TOUR』へようこそ! 俺たちストレイテナーっていいます。最後までよろしく!」というホリエアツシの快活なコールに、この日を待ちきれなかったオーディエンスの大歓声が堰を切ったようにあふれ出す! 8月にリリースしたアルバム『STRAIGHTENER』を引っ提げて12月11日の新木場スタジオコーストまで全国28公演をサーキットするストレイテナーのライブハウス・ツアー『LONG WAY TO NOWHERE TOUR』初日、渋谷クラブクアトロ公演。東京公演は今回のクアトロに加えツアー中盤のSHIBUYA-AX(10月27日)とスタジオコーストの3本あるが、ナカヤマシンペイ自身も「この『初日感』に耐えられない!(笑)。早くツアーの空気に慣れたい! この、100%の人がストレイテナーを観に来てる、って久しぶりじゃない?」と言っていた通り、ツアーを回って鉄壁のグルーヴとアンサンブルを鍛え上げて帰ってくる前のラフで素のテナーが観られるのも、初日ならではの魅力だろう。とはいえ、それはあくまで「テナー内比較」での話であって、その清冽で超硬質な4人の音像が鳴り響いた瞬間、クアトロのフロアが瞬時にエモーショナルでシリアスなロック・アドベンチャーの世界に塗り替わったことは言うまでもない。

なにぶんツアー初日なので書けることも限られているし、1mmたりともネタバレしたくない方はここから先は12月のツアー終了まで読み飛ばしていただきたいが、ひなっちこと日向秀和の鋼鉄ベース・サウンドがOJこと大山純&ホリエのギラリとした質感のコード・ワークとせめぎ合いながら力強く目映い音世界と♪ウォーオーの一大シンガロングを巻き起こしていた“VANISH”をはじめ、最新アルバム『STRAIGHTENER』をしっかりと約2時間のセットリストを貫く主軸に据えた構成であり、自分たちの新作への手応えと自信をオーディエンスとともに分かち合おうとするような意欲的な内容だったことは間違いない。そこに、セルフ・カバー・アルバムでの4つ打ちアレンジによって輝度と強度が跳ね上がった“TODAY”など「今」のモードで再構築&ブラッシュ・アップされた過去曲群、そしてシンペイの爆裂ドラミングでさらに破壊力を増した“KILLER TUNE[Natural Born Killer Tune Mix]”など瞬間沸騰必至の必殺アンセム、思わずフロアから「おおっ!」と驚愕の声が漏れた懐かしの楽曲などなど、自らの足跡も全部引っ括めてそのエネルギーとイマジネーションを全身で謳歌するような、充実のアクトだった。その一方で、「コード間違えちゃった……」とホリエが思わず苦笑する場面があったり……
ホリエ「今日はカメラいっぱい入ってますが……これ言っちゃっていいのかな? 今日のライブの映像を……」
ナカヤマ「はいそこまで!」
ホリエ「Ust(中継)してます!……ウソです!」
ナカヤマ「誰が観るんだよ! 家帰って覗いたら『総視聴数:4』とかだったらどうすんの?(笑)」
ホリエ「今日のライブはなる早でパッケージして、このツアーの物販で売ろうと思ってます!」
ナカヤマ「たぶん北見、北海道から……」
ホリエ「だから、さっきコード間違えたのは痛い!(笑)」
……といった一幕があったり、「首飾り取れちゃって……」(ホリエ) 「そんなこと、ライブ中に言うことじゃない(笑)」(ナカヤマ)というやりとりに「ひと言だけ言わして! 『首飾り』って!(笑)」とOJがツッコミを入れて会場の爆笑を誘っていたり―—といった、和気藹々を通り越して完全ノーガード状態のMCが目立っていた。が、そんな快活で自然体な4人の佇まいからも、4人が味わっている充実感と躍動感がじわじわと伝わってくるようで、なんだか嬉しかった。そして……4人の音の強度が高まれば高まるほど、ストレイテナーのロックが描く、ポジティブやネガティブといった図式化では到底割り切れないままに空高く噴き上がるエモーションの形がより露なものとして響いていた。

ストレイテナーの音楽の中に、明確にメジャー・コードやマイナー・コードが鳴っている場面は、他のバンドに比べて目に見えて少ない(ド・ミ・ソ=メジャー・コードやド・ミ♭・ソ=マイナー・コードの代わりに、基本コードとしてド・レ・ソを鳴らすような感じといえば、テナーの曲をコピーしたことのある人には伝わるだろうか?)。そんな、メジャーでもマイナーでもない音像に、哀しみと希望の間を彷徨いながらそれでも死に物狂いで「その先」を目指すようなホリエのメロディが、鮮烈な色彩感を与えていくのである。メジャー・コード=ポジティブとマイナー・コード=ネガティブの二元論を「メロディはマイナー音階でベース・ラインとコードがメジャー」などといった形でぶっ飛ばすことで「割り切れない僕らの人生のリアリティ」を音楽で描き出してきたのはロックンロールの大きな成果のひとつだが、その「割り切れないリアル」をテナーは独自の方法論で音楽に焼きつけて、その音を鳴らすバンド・アンサンブルをひたすら鍛え上げることで、ポジでもネガでもない、しかし聴く者を突き動かす怒濤のエネルギーを持ったロック・ミュージックを作り上げてきた、ということだ。彼らの音を進化と純化へ導いた強烈な必然性が、この日のアクトの1つ1つの楽曲からあふれ出してきて、思わず胸が熱くなった。

そして、新作曲群の中でも大きなハイライトとなっていたのは“プレアデス”だろう。メランコリックな風景から一気に真っ白に輝くサウンドスケープへとオーディエンスを導く、4人の圧巻のプレイアビリティ。《触れる手のひらが 起こした奇跡を 忘れないように 告げる今言葉で 揺るがない心を 確かめるように》という、ロックのマジカルな力を自ら噛み締めながら冒険の旅路を歩み進むような、誇らしくもシリアスなリリック。「『LONG WAY TO NOWHERE』に行ってまいります!」というホリエの選手宣誓のようなMCとともに、その余韻が熱く、心地好く残った。最高のスタートを切った『LONG WAY TO NOWHERE TOUR』が、どんな形でフィナーレを迎えるのか、今から楽しみで仕方がない。そして、次の公演は9月24日、高崎club FLEEZにて!(高橋智樹)
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