サザンオールスターズ @ 新横浜 日産スタジアム

もはや言わずと知れたこの夏の国民的行事、サザンオールスターズ無期限休止前の日産スタジアム4デイズ、8月16・17・23・24日の最終日。先週にひき続き、あいにくの雨。17:55、ステージで何かが始まる様子なので「えっもう?」と慌てて席に着くと、なんと三浦知良が登場。ライブの開幕を宣言する。続いて、100人はいるんじゃないかって規模のブラスバンドが登場、インストで“勝手にシンドバッド”を華々しく演奏。そして、ビジョンに小林克也が登場、いよいよこれからライブが始まることをアナウンス。

18:00ぴったりに、メンバーがステージに現れ、“YOU”でライブがスタート。4曲目“女呼んでブギ”から24曲目の“メロディ(MELODY)”までを「青山から鎌倉まで」と題して、MCやブレイク一切なしのぶっ通しで、21曲連続でプレイ。ファンには説明の必要もないが、「青山」は彼らが出会った青山学院大のこと、「鎌倉」とは85年のアルバム『KAMAKURA』のことであり、つまり、78年のデビューから85年までの曲をやるコーナーだったってことです。30曲目“涙のキッス”から32曲目“夕陽に別れを告げて”までの3曲は、アリーナ後方の小さなサブステージに、メンバー4人+ギターの斉藤誠&パーカッションの三沢またろうの6人編成、つまり本来のサザンの楽器編成で移動してアコースティック楽器にてプレイ、大いにスタンドを沸かせる。ちなみに31曲目“チャコの海岸物語”では、「きれいな女を 見つけたのさ そうでもない人も いるものさ」と歌詞を変えて、スタンドをおちょくる。36曲目“I AM YOUR SINGER”では、カラオケでメンバーがPV通りに踊り(腰の療養でライブはお休み中の毛ガニも登場。あと毛ガニは、アンコールの“勝手にシンドバッド”でも登場、パーカッションをプレイしてくれた)……。

……って、こまごまとメモりながら観ていたのですが、ここまで書いて気付いた。この4デイズ、ものすごいプラチナチケットだったから、参加できなかった人のために、こういう事実関係をこと細かに書いたほうがいいと思ったんだけど、WOWOWで生中継してたんだから、そういう人はみんなそれ観てますよね。さっき会社に電話したらフェス事業部の上代が出て、「あ、サザンに行ってたんですか? 私、会社のテレビで観てましたよ」って言われて、思い出しました。なので、細かいレポートはここでやめます。何を書こう。えーと、まず、セットリスト。アンコールまで含めて全46曲、でも3時間20分弱で、とてもあっという間でした。

1.YOU
2.ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
3.LOVE AFAIR〜秘密のデート〜
MC
4.女呼んでブギ
5.いとしのフィート
6.お願いD.J.
7.奥歯を食いしばれ
8.ラチエン通りのシスター
9.TO YOU
10.C調言葉に御用心
11.働けロック・バンド(Workin’for T.V.)
12.松田の子守唄
13.Hello My Love
14.朝方ムーンライト
15.思い出のスターダスト
16.夏をあきらめて
17.Oh! クラウディア
18.東京シャッフル
19.そんなヒロシに騙されて
20.あっという間のTONIGHT
21.メリケン情緒は涙のカラー
22.顔
23.Bye Bye My Love(U are the one)
24.メロディ(Melody)
MC
25.愛の言霊〜Spiritual Message〜
26.シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA
27.爆笑アイランド
28.ごめんよ僕が馬鹿だった
29.ロックンロール・スーパーマン 〜Rockin’Roll Superman〜
30.涙のキッス
31.チャコの海岸物語
32.夕陽に別れを告げて
33.いとしのエリー
34.真夏の果実
35.TSUNAMI
36.I AM YOUR SINGER
37.希望の轍
38.OH!! SUMMER QUEEN 〜夏の女王様〜
39.エロティカ・セブン EROTICA SEVEN
40.HOTEL PACIFIC
41.ボディ・スペシャルII(BODY SPECIAL)
42.マンピーのG★SPOT

アンコール
43.夕方HOLD ON ME
44.みんなのうた
45.勝手にシンドバッド
46.Ya Ya(あの時代を忘れない)

はい、以上セットリストでした。で、どういうライブだったか、私が感じたことを書きます。

「いつも通りのサザンです!」「あくまでも通常のライブです!」、桑田はMCのたびにそういうことを口にしていた。「今日はただの途中経過です!」とまで言っていた。まあ、特別な日っぽくしたくない、湿っぽくなるのはヤだ、あくまで普通のライブとして楽しんでほしい、という気持ちでそう言っているんだろうとは思う。思うが、無期限休止前の最後のライブなんだから、やっぱり通常のライブではないでしょ、それは。こっちの気構えもそうだけど、サザン側がやってることも。さっき書いた「青山から鎌倉まで」のメドレーでは、こんな機会じゃないとやらないような懐かしい名曲、いっぱいやってたし。サブステージがあったのもそうだし。それに、アンコール前に、画面の指示でスタンドに“We Are SAS FAMILY!”という人文字が出て、これも画面の指示でメンバーが出てきたら「30周年おめでとう!」と客席全員でコールする、というサプライズもあったし。あと、アンコールの最後、“勝手にシンドバッド”で終わらずに“Ya Ya(あの時代を忘れない)”をやってシメたのも、休止ライブならではだと思う。ちなみに、その“Ya Ya”を歌い終えたとき、桑田、ちょっと泣きそうになっているように(僕には)見えた。

……って書いて、また気付いた。でも、今書いたこと以外は、いつものサザンのライブだった。代表曲だらけ・有名曲だらけ・名曲だらけなのも、“マンピーのG★SPOT”で桑田がハゲヅラを装着してエロいおネエちゃんダンサーが出てくるのも(ちなみに今回のダンサーのあの覆面みたいな衣裳は、永井豪のマンガ『けっこう仮面』の主人公からいただいたのだと思われます)、アンコールの“みんなのうた”で桑田が放水ホース持って走り回るのも、“勝手にシンドバッド”でサンバチームが出てきてすぱーんと銀テープが飛んで花火がばんばん上がるのも、これまで僕が何度も観てきた、いつも通りのサザンだった、考えてみれば。

つまり、今夜は「通常」と「でも特別」が入り混じった、だから逆に「特別」で塗りつぶされるよりも、よっぽど感動的な夜だったってことだ。そうか。だから俺はあんなに、何度も泣きそうになったのか。

観ていて、本当にいろいろ思いだした。“ミス・ブランニュー・デイ”がシングルで出た時、『桑田佳祐のオールナイトニッポン』に「今度の新曲、サビがアントニオ猪木の入場テーマ“炎のファイター”にそっくりじゃないですか?」という投稿が来て、「ええ? そんなことないでしょ? えーと……(それぞれのメロディを口ずさむ)……ほんとだ。似てる。やばい!(笑)」と、桑田が生放送で慌てていたこと。桑田が初めて“女呼んでブギ”をバンドに持ってきた時の練習で、歌いだしの「女呼んでもんで抱いていい気持ち〜」でメンバー全員笑い転げて演奏が中断した、と関口和之の名著『突然ですがキリギリス』に書いてあったこと。“真夏の果実”が出た当時、僕は京都のローソンでバイトしていて、そのローソンのBGM(6曲ぐらい入っていてそれが一晩中リピートで流れるのです)にこの曲が入っていて、聴きながら夜中じゅう働いていたこと。“ボディ・スペシャルII”が出た頃は日本のバンド小僧の間でヘヴィ・メタルが流行っていて、僕もそれにかぶれてちょっとサザンから離れてたんだけど、この曲のイントロのギターを聴いて「そこらのメタル・バンドよりもサザンの方が全然ハードでヘヴィってどういうこと?」と、動揺したこと。あたりまえだけど、僕だけじゃなくて、ここに集まった7万人が、いや他の日に来た人も合わせて28万人が、いやいや来れなくてWOWOWを観ていた人も合わせて何十万人もしくは何百万人が、そういう「観ながらいろいろ思いだす」状態になっていたと思う。

サザンよりシングルを売ったバンドも、アルバムを売ったバンドも、いくつもいる。だけど、そんなように、本当に「みんなのうた」になった曲たちを、これだけいっぱい持っているのは、圧倒的に、サザンだけだと思う。

“I AM YOUR SINGER”の時、画面に “We will be seeing you again soon!”というメッセージが出た。みんな盛り上がっていた。僕も盛り上がった。ただし、サザンが休止するってことは、その間桑田はソロをやるってことだろうから、僕はそれも楽しみにしている。これまでのような「サザンがなんとなく休止している時のソロ」と、今後のような「無期限休止ってはっきり決めてからやるソロ」では、必ず、何かが違うと思うので。(兵庫慎司)
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