筋肉少女帯 @ 日本武道館

筋肉少女帯 @ 日本武道館 - 大槻ケンヂ大槻ケンヂ
筋肉少女帯 @ 日本武道館 - 筋肉少女帯筋肉少女帯
バックドロップに大きく染め抜かれた「筋肉少女帯」の文字、そして上手側(ステージ向かって右)にセッティングされた橘高の10段積みマーシャル・アンプが、いやが上にも高揚感を煽る――『サーカス団、帰還の途上ツアー』と銘打った東名阪ツアーを経た筋少の、デビュ−20周年記念公演にして14年ぶりの武道館凱旋公演、その名も『サーカス団、武道館へ帰る』。

非モテ少年の衝動逆噴射と中央線沿線アングラ・インディー・カルチャーを、超絶テクのメタル・サウンドと暗黒プログレにジャック・インすることで、80年代後半から90年代の音楽シーンに未曾有のカタルシスを放ってきた筋少。メンバー間の確執から活動休止→仲直りによって活動再開、という超プライベートな背景には思わず苦笑失笑を禁じ得ないが、それもこれもこうして再始動した筋少を目の当たりにできているからこそ、だ。客席を見ても、活動休止以前からのベテラン・ファンと思しきメタル風の出で立ちのファン、非モテ軍団日本代表のような少年たち、ゴスロリからメイド服まで色とりどりの少女(&元少女)……世代もジャンルも超えたオーディエンスが、筋少の登場を待ち詫びている。

18:17、轟音で鳴り響くEL&P“聖地エルサレム”をSEに、サポート・ドラムの長谷川浩二、「死ぬ気のサポート」三柴“エディ”理、そしてギター=本城聡章、ベース=内田雄一郎、ギター=橘高文彦、ボーカル=大槻ケンヂが1人1人登場するたびに、怒号のような歓声が武道館を揺らしていく。“サンフランシスコ”“君よ!俺で変われ!”の2曲で、オーディエンスは早くも最高潮!

だがそれよりも、「今日は地に足着かないまんま終わると思ってたんだよ! だけど、大したことねえじゃねえか! 吉祥寺『MANDA-LA2』でやるのと一緒じゃねえか!」とMCで絶叫してみせたオーケンの絶頂到達スピードのほうが、どうやら早かったようだ。「帰ってきたぜ! 武道館! 今夜の君たちは、単にオーディエンスじゃねえんだぜ! 歴史の目撃者だ! ドラマの目撃者だ! 事件の目撃者だ!」「よもやの、まさかの14年ぶりの武道館への帰還だ! 目撃者として、物販は買ってくれよな!」と、まだ2曲やっただけのMCとは思えないくらいに煽りまくる。それにつられて、会場の熱気はますます天井知らずに高まっていく。

それにしても、このゴス・メタル・サウンドのスケール感! 音だけ聴いてると「どこの来日バンドだ?」というくらいのクオリティを誇りながら、そこに乗っかるのは“日本印度化計画”の「日本を印度に!」「してしまえ!」のコール&レスポンスであり、「きのこぱぅわー!」「ブー! ブー! 高木ブー!」といった合唱の数々……これらをスケールでかいロックの導火線にできるバンドは、後にも先にも筋肉少女帯だけだ。オーケンのモヒカンが揺れる時、あるいはドレス姿の橘高がフライングVを弾き倒しながら鮮やかにターンをキメる時、背徳の向こう側にあるはずのロックが「今、ここ」に出現する。最高だ。

ちなみに、今回の武道館公演は「大仲直り大会」でもあるらしく、“仲直りのテーマ”でKey・秦野猛行が鍵盤ごとステージにせり上がってきたほか、“キノコパワー”ではG・横関敦が、“福耳の子供’08”ではDr・美濃介(この日は歌とギターのみ)が、“バトル野郎”ではDr・太田明が……と、過去に筋少サウンドを支えたメンバーたちが次々に登場してオーディエンスを沸かせていく。が、チューニング&MCタイミングになるとオーケン以外のメンバーが袖に引っ込んでしまったり、内田とのボケ不在の漫才のようなMCの掛け合いがあったりするのも含めたこの日の空気感は、サポート・長谷川の「演奏以外は同窓会、音を出すと凌ぎを削り合ってる」と言う言葉がまさにぴったりくるものだ。

しかし、“香菜、頭をよくしてあげよう”まで飛ばしてきたオーバー40のオーケン、ついにステージ上に崩れ落ちる。「血糖値下がっちゃって……楽屋にチョコレートとかない?」と懇願するもスタッフから応答なし。「20年頑張ってきて、チョコのひときれもないのか!」といったところでようやくチョコ登場。「チョコが、キター!」のモノマネに場内沸騰! “踊るダメ人間”では1万人の「ダーメ!」ジャンプがばっちり決まる! 「サンキュー! 最高だ!」というオーケンの叫びを残して、本編終了。

アンコールの終盤、この日登場したすべての元メンバーたちが登場。計10人で“釈迦”ならぬ“大釈迦”を披露するなど、「再始動の儀式」と「ロック・ショウ」を見事に両立した2時間40分。そして、12月20日@SHIBUYA-AX、12月21日@横浜BLITZの2days公演も決まっている。「武道館やったら解散するんじゃないかっていう噂もあったりなかったりするけども、小銭の入るうちはやりますよ!」と途中で自虐風に言っていたが、それよりも大槻・橘高・本城・内田の4人が揃って「20年間でいちばんの思い出は?」の問いに「今」と答えていたのが印象的だった。(高橋智樹)

1.サンフランシスコ
2.君よ!俺で変われ!
3.日本印度化計画
4.暴いておやりよ ドルバッキー
5.労働者M
6.仲直りのテーマ
7.僕の宗教へようこそ
8.キノコパワー
9.元祖高木ブー伝説
10.福耳の子供’08
11.香菜、頭をよくしてあげよう
12.バトル野郎〜100万人の兄貴〜
13.イワンのばか’07
14.これでいいのだ
15.踊るダメ人間
16.トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く

アンコール
17.俺の罪
18.僕の歌を全て君にやる
19.Guru最終形
20.大釈迦
21.ツアーファイナル
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする