『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト

『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - 神啓文 pic by RyoNakajima(SyncThings)神啓文 pic by RyoNakajima(SyncThings)
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - 弦先誠人 pic by RyoNakajima(SyncThings)弦先誠人 pic by RyoNakajima(SyncThings)
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - タイラダイスケ pic by RyoNakajima(SyncThings) タイラダイスケ pic by RyoNakajima(SyncThings)
弦先誠人と神啓文、そしてタイラダイスケの3DJが牽引して2006年から続いているライヴ/DJイヴェントの記念すべき60回目。2枚組30曲収録で¥2,000という『FREE THROW COMPILATION #02』のリリースも記憶に新しいところだが、そもそも同コンピ・シリーズの第1弾発表に合わせて2011年3月13日に企画されていた『FREE THROW』が、震災の影響で中止を余儀なくされてしまったという経緯がある。休日のスタジオコーストを日中からたっぷりと使って展開される今回は、他でもなく昨年のリヴェンジ開催でもあるのだ。

13:00の開演時間を迎え、スタジオコーストのメインフロアに足を踏み入れると、通常ワンマン・ライヴなどでも使用されることの多いステージがRIGHT STAGEとして、向かって左手にLEFT STAGEが用意されている。この2ステージが交代で稼働し14組のライヴ・アクトが行われ、またエントランス付近のDJ BOOTHにおいてもひっきりなしに音楽がプレイされるという構成だ。それでは以下、RIGHT STAGE/LEFT STAGEの模様を中心に、レポートを進めていきたい。

『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - The Flickers pic by 木村泰之The Flickers pic by 木村泰之
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - rega pic by 山川哲矢rega pic by 山川哲矢
「『FREE THROW』へようこそー! 一年間、おまたせしました。今日で一年分、楽しんでください!」というFREE THROW3者の挨拶を経て、LEFT STAGEに登場したのはThe Flickersだ。トップ・バッターかくあるべしというソリッドなダンス・ロックで切り込み、安島裕輔の多彩なヴォーカル表現が弾ける。“black light”を皮切りにファースト・ミニ・アルバム『WONDERGROUND』からの楽曲が多く披露されたが、5月には新作を予定しているそう。一方、RIGHT STAGEのトップはrega。キャッチーな部分を盛り込みつつ、4人の音がアクロバットのように交錯しまくるスリリングなインスト・チューンの数々。本当に楽しそうにプレイするバンドで、そのムードにオーディエンスが巻き込まれてゆく。こちらも5月に新作『SOLT&PLUM』をリリース予定。

『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - Czecho No Republic pic by 木村泰之Czecho No Republic pic by 木村泰之
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - SEBASTIAN X pic by 木村泰之SEBASTIAN X pic by 木村泰之
DJ BOOTHでは、弦先誠人がキラッキラで切なメロのエレクトロ・ダンス・ロックを投下しているというところ。さて、ダンス性なんか当たり前、という素振りで瑞々しくカラフルなインディ・ポップの数々を放つのはCzecho No Republicだ。6月に予定されている新作『DINOSAUR』に収められているのだろうか、新曲も披露され、最後はヒリヒリとした情感をダンサブルな楽曲で解き放つ“DANCE”でフィニッシュする。続いては、SEBASTIAN Xが登場だ。ガーリーな衣装を身に纏い、張りのある歌声を放つ永原真夏、そして誇大妄想気味なまでにドラマティックな旋律を奏でる工藤歩里のピアノを含めたギターレス編成が、一気にフロアの景色を塗り替えてゆく。途中、ベーシストの飯田裕がなぜか鼻から出血してしまうというハプニングもあったが、4/30に上野水上音楽堂で行われる自主企画『TOKYO春告ジャンボリー』は、“FORTUNE RIVER”の歌そのままに出会いのエネルギーに満ちたものになるはず。

『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - ヒサシ the KID pic by RyoNakajima(SyncThings)ヒサシ the KID pic by RyoNakajima(SyncThings)
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - DORIAN pic by RyoNakajima(SyncThings)DORIAN pic by RyoNakajima(SyncThings)
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - 東京カランコロン pic by 木村泰之東京カランコロン pic by 木村泰之
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - sleepy.ab pic by 山川哲矢sleepy.ab pic by 山川哲矢
DJ BOOTHでは、THE BEACHESのヒサシ the KIDから神啓文にバトンが繋がれる。ダビーにミックスされた“今夜はブギー・バック(smooth rap)”からDorian feat.七尾旅人&やけのはら“shooting star”に繋ぐというヤバいプレイ。“いっせーの、せ!”でパフォーマンスをスタートさせた東京カランコロンは、「スタジオコーストは……なんか卑猥な感じがする」という緩いMCでオーディエンスの笑いを誘いながらも、いちろーとせんせいの男女ヴォーカルが鮮やかに突き抜けるビート・ポップ・チューン“少女ジャンプ”まで、ファンキーで軽やかなバンド・グルーヴを発揮しながら5曲を披露。そして、冷ややかでありながら神経に直に触れるような刺激的なサウンドのドリーミー・ポップを繰り広げるsleepy.abは、もはや貫禄を纏うような佇まいである。最新EPに収録された“Lost”と“アンドロメダ”を立て続けにプレイし、確信だけで構築されたかのごとき歌とサウンドに痺れる。最後は名曲“ねむろ”で完璧にフィニッシュ。

『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - Sawagi pic by 木村泰之Sawagi pic by 木村泰之
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - Handsomeboy Technique pic by RyoNakajima(SyncThings)Handsomeboy Technique pic by RyoNakajima(SyncThings)
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - QUATTRO pic by 山川哲矢QUATTRO pic by 山川哲矢
メンバーそれぞれの派手なヴィジュアルからしても、思いっきりパーティー性に振り切れている4人組、Sawagi。ハイブリッドなダンス・ミュージックの数々が、一息にオーディエンスを焚き付ける。大振りなビートで繰り出される新曲“HYPER RESCUE”も投下され、「照明落としてください!」と要求しつつ爆発的なアンサンブルを展開し始める。それにアドリブで応じてみせる照明さんもお見事だった。さて、DJ BOOTHに移動してみると、Handsomeboy Techniqueからタイラダイスケへ。ディスコ感満載のファンキーなポップ・チューンに踊る。そして、多くの出演者が同じ思いだったはずだけれど、昨年の開催中止へのリヴェンジに掛ける想いが目に見えて明らかだったQUATTROの大熱演である。変幻自在にしてまったくブレずに一丸となって届けられる5人のアンサンブルが、“Last Dance”に始まり、スウィートなメロとグルーヴの小爆発が渾然一体となった“Flamingo”、『FREE THROW』コンピの第1弾に収められた“QUESTION #7”では、潮田雄一のバンジョーが弾け、ベースを抱えたままの濱田将充がダイブする。「知らない人は〈HEY〉って言えばいいから!」とブルージーに爆発する“HEY”まで、ただただ圧巻のステージだった。

『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - Turntable Films pic by 木村泰之Turntable Films pic by 木村泰之
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - avengers in sci-fi pic by 山川哲矢avengers in sci-fi pic by 山川哲矢
「僕、普段はテンション低いんですけど、これだけはテンション高めで言いたいと思います。『FREE THROW』、60回オメデトウー!!」と、爽やかさの中に淡いブルーが滲んだギター・ポップ・チューンの数々を繰り出しながら声を上げたのは、Turntable Filmsのフロントマン=井上陽介だった。この日は、500円/500枚限定プレスで3曲収録のEPから“Misleading Interpretation”も披露。一方、どこまでもテクニカルなポスト・ロック・サウンドがオーディエンスを呑み込むLITEである。新作『PAST, PRESENT, FUTURE』からは“Bond”が披露されたほか、ライヴDVD化もされたアチコ&avengers in sci-fiをゲストに迎えての共演曲“Pirates and Parakeets”が再現される。そこにthe telephonesのノブも加わって踊りまくっているという、スペシャルな歓喜が溢れたパフォーマンスであった。

『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - LITE pic by 山川哲矢LITE pic by 山川哲矢
ゆったりと紡がれるフレーズが折り重なり、凛としていながら熱を帯びる上邨辰馬の歌声が響くwoodered chiarie。地の果てか水平線上に太陽が覗く瞬間の、ダイナミックな目映さを音像化してしまったような新曲“トワイライト”が素晴らしかった。パフォーマンスを進めるほどに、美しい轟音と強い歌が広がりを見せてゆく。続いては、LITEのステージにゲスト参加していたavengers sci-fiである。カーペットのように敷き詰められた木幡太郎のエフェクター類は、またその面積を増やしていないだろうか。アップテンポな“Yang 2”でツイン・ヴォーカルが走り出す。木幡は「今日はスペシャルですけど、約束とかしなくてもふらっと遊びに行けて、音楽大好きな仲間がいるんで、普段の『FREE THROW』にも遊びに来てください」と語っていたほか、4/25に発売となるニュー・アルバムのタイトル『Disc 4 The Season』を解禁。終盤を“Homosapiens Experience”と“Sonic Firework”の連打によってフロアを爆発させていた。

『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - the chef cooks me pic by 木村泰之the chef cooks me pic by 木村泰之
『FREE THROW vol.60』@新木場スタジオコースト - the telephones pic by 山川哲矢the telephones pic by 山川哲矢
LEFT STAGEのアンカーはthe chef cooks meである。やや小ぶりなステージ上に、アチコやホーン・セクションのサポートを含め総勢12名が賑々しいパフォーマンスを繰り広げる。この、痛みも切なさも全部ひっくるめて音楽の祝祭感で放つ大所帯アンサンブルは素晴らしかった。今年に入って出来たという新曲3曲を立て続けに繰り出し、「ムーヴメントの誕生日だな、って、タイラさんと話してて。ほんとそういう日だと思います。頼むよみんな!」と熱く語るシモリョー。美しい光景だった。そしてRIGHT STAGEもトリのthe telephonesを迎える。楽曲群は超濃縮パーティ仕様であり、いつも通りの瞬発力で沸点に到達。いや、いつでもこれが出来るからテレフォンズなのだというステージを繰り広げる。開演からは実に9時間が経過しようとしているのに、フロアもたった今始まったかのように跳ね上がり、渦を巻く。「今日だけは、人生の真実が音楽にあると思います」と、慎重に言葉を選びながらも昂った感情が溢れてしまって見えた石毛輝。これしかないという万感のアンセム“FREE THROW”で、フィナーレを飾ってみせた。

「今日これができたんだったら、去年できなくてもしょうがなかったのかなと思います」という最後の挨拶。さらりと伝えられてしまったけれど、それはすべてを一から仕切り直してきた当人だからこそ口にすることの出来る言葉だった。さあ、次回『FREE THROW』は4/14の新代田FEVER。こちらもぜひお楽しみに。(小池宏和)
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