藤巻亮太 @ 赤坂BLITZ

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藤巻亮太 @ 赤坂BLITZ
藤巻亮太、ソロ活動を始めてから初のワンマン・ライヴ。2月29日にリリースされたソロ・デビュー・シングル『光をあつめて』の購入者対象の抽選招待ライヴであり、これ1本きり、とはいえ、シングル1枚出しただけでワンマン、というのは、考えたらけっこうむちゃだ。ヒダカトオルみたいに「バンドの曲も普通にやる」ってスタンスなら可能だけど、藤巻、そうじゃないし。昨年末にイベントに出たり、5月のフェス『ROCKS TOKYO』への出演が決まっていたり、というくらいの尺なら、あのシングルに入っていた曲たちプラス新曲を2,3曲やれば可能だろうけど、ワンマンとなるとそうもいかないし。しかもお客さん、シングル以外の曲たちはまだ知らないわけだし。あるいは、実はもうアルバムが完成していて、あとは出すだけなのです、ってくらい仕上がった状態なら、それでも多少は安定した心積もりでステージに立てるだろうけど、この日の藤巻のMCでは、そんな感じではなかった。まだ全然作っている途中、みたいな言い方だった。まずは持ち時間が短いイベントに出まくるとか、アルバムが完成してからツアーやるとか、そういうセオリーに乗らず、まだアルバムを作っているらしきこの時期に、なんでこの1回のワンマンをやることにしたのか。それは、本人が最初のMCで言っていた。

「超久しぶりのライヴ。2010年は80本やって、去年はほんとライヴをしなくて、ライヴにめちゃめちゃ飢えています!」

本当に、この言葉どおりの動機なんだろうな、と素直に思った。徹頭徹尾そういうライヴだったからだ。藤巻の意志や気持ちや気分そのまんまの、思ったまま感じたままがストレートに外に出ている、ほんとに嘘のないライヴだったからだ。背後にバンド・メンバー(後述します)がぐるっといて、それぞれの機材がある以外は、セットも映像も何にもなしのステージ。藤巻の格好は写真のとおり、「地味」と言っていいくらいの普段着テイスト。で、みんなが最近知った曲(シングルの曲)とまだ誰も知らない曲(新曲)をたてつづけにやっていく。バンドのサウンド・プロダクトも同じ方向性であって、基本的に、シンプルでゴツッとした音作りだった。じゃないと、今のこの藤巻の歌に、合わないんだと思う。さっき「思ったまま感じたまま」とか「嘘のない」とか書いたけど、それを超えてもう「あけすけ」とか「無防備」とか、そういう言葉で形容したくなるステージだった。

藤巻亮太 @ 赤坂BLITZ
藤巻亮太 @ 赤坂BLITZ
さっき引用したやつもそうだけど、MCで言うことも、もうほんと、いちいち「そうだろうなあ」というか「そのまんまだなあ」というか「本音だなあ」というか、そういう感じ。「ひとりぼっちがイヤなのにソロを始めて、自分でもよくわからない」とか。「新しい気持ちになりたくて始めた」とか。「こうしなきゃいけない、ああしなきゃいけない、みたいなことから、どれだけ離れられるかがソロだと思っている」とか。いずれも、「とか言ってるけど本心はどうなんだろう?」みたいな感じ、ゼロ。
というか、これ、MCとかライヴのやりかた以前に、曲自体が本当にそうだ。あのシングルに収められている曲たちも、この日初めて聴いた新曲たちも、誰がどう聴いても今の藤巻そのまんまなので。特に1曲目にやった“キャッチ&ボール”なんて、もう、宣言のようだった。

藤巻亮太 @ 赤坂BLITZ
ちなみに、バンド・メンバー、音を聴く前からその顔ぶれの時点で「うわあいいセレクト!」と言いたくなる人たちが集まっていました。で、出た音は、その期待以上でした。以下、そのメンツ。他でどういう活動をしてきた方々なのかも書いときますが、私の知識なので偏ってるところもあると思います。ご容赦ください。
ステージ向かって左から、ドラム:佐野康夫(AIR、ORANGE RANGEなど多数。休止の時の真心のツアーでも叩いてた)/ベース:林束沙(本業はSCARLET、HINTOをはじめサポート多数)/キーボード:河野圭(プロデューサーでもある。宇多田ヒカルとの仕事が有名、他も多数。確かsyrup16gのレコーディングにも参加してた)/ギター:田中義人(スガ シカオのバンドで弾いていた。この方もプロデューサーでもある。あと、元々大沢伸一まわりの仕事が多かった人で、birdとかMONDO GROSSO関係も)

ただし、藤巻、そのすばらしいメンバーたちの出す音に寄っかかっていなかったし、頼っていなかった。まずひとりで自分が立って、それをメンバーがサポートする、というたたずまいだった。アンコールで、ひとりでアコースティック・ギター弾き語りで1曲やった時に、最も強くそれを感じました。

何も隠そうとしていないし、何もごまかそうとしていないし、何も守ろうとしていない。とにかく、そんなふうにステージに立っていた、ソロ・アーティスト藤巻亮太は。で、そのありかたが、なんだかすごくよかった。確かに新しい風が吹いていた。

あともうひとつだけ。Aメロは地味で淡々としていて、いかにも「このコード進行なら出てきそう」くらいの感じで、Bメロも最初はそうなんだけど途中から「あれ?」と言いたくなるコード進行&メロ展開になって、サビで大爆発してとんでもないところまでいってしまう。というのが、藤巻亮太の書く曲の特色であり武器であると僕は思っているんだけど、この日やった曲たち、どれも、それが炸裂していた。あと、その「とても歌えそうにないメロディを普通に歌ってしまう」という武器も、同じく、炸裂していた。ほんと、アルバム、楽しみになってきました。(兵庫慎司)

セットリスト
1.キャッチ&ボール
2.ハロー流星群
3.ひとりぼっち
4.新曲
5.新曲
6.新曲
7.月食
8.光をあつめて
9.Beautiful Day
10.新曲
アンコール
11.新曲

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