「超久しぶりのライヴ。2010年は80本やって、去年はほんとライヴをしなくて、ライヴにめちゃめちゃ飢えています!」
本当に、この言葉どおりの動機なんだろうな、と素直に思った。徹頭徹尾そういうライヴだったからだ。藤巻の意志や気持ちや気分そのまんまの、思ったまま感じたままがストレートに外に出ている、ほんとに嘘のないライヴだったからだ。背後にバンド・メンバー(後述します)がぐるっといて、それぞれの機材がある以外は、セットも映像も何にもなしのステージ。藤巻の格好は写真のとおり、「地味」と言っていいくらいの普段着テイスト。で、みんなが最近知った曲(シングルの曲)とまだ誰も知らない曲(新曲)をたてつづけにやっていく。バンドのサウンド・プロダクトも同じ方向性であって、基本的に、シンプルでゴツッとした音作りだった。じゃないと、今のこの藤巻の歌に、合わないんだと思う。さっき「思ったまま感じたまま」とか「嘘のない」とか書いたけど、それを超えてもう「あけすけ」とか「無防備」とか、そういう言葉で形容したくなるステージだった。
というか、これ、MCとかライヴのやりかた以前に、曲自体が本当にそうだ。あのシングルに収められている曲たちも、この日初めて聴いた新曲たちも、誰がどう聴いても今の藤巻そのまんまなので。特に1曲目にやった“キャッチ&ボール”なんて、もう、宣言のようだった。
ステージ向かって左から、ドラム:佐野康夫(AIR、ORANGE RANGEなど多数。休止の時の真心のツアーでも叩いてた)/ベース:林束沙(本業はSCARLET、HINTOをはじめサポート多数)/キーボード:河野圭(プロデューサーでもある。宇多田ヒカルとの仕事が有名、他も多数。確かsyrup16gのレコーディングにも参加してた)/ギター:田中義人(スガ シカオのバンドで弾いていた。この方もプロデューサーでもある。あと、元々大沢伸一まわりの仕事が多かった人で、birdとかMONDO GROSSO関係も)
ただし、藤巻、そのすばらしいメンバーたちの出す音に寄っかかっていなかったし、頼っていなかった。まずひとりで自分が立って、それをメンバーがサポートする、というたたずまいだった。アンコールで、ひとりでアコースティック・ギター弾き語りで1曲やった時に、最も強くそれを感じました。
何も隠そうとしていないし、何もごまかそうとしていないし、何も守ろうとしていない。とにかく、そんなふうにステージに立っていた、ソロ・アーティスト藤巻亮太は。で、そのありかたが、なんだかすごくよかった。確かに新しい風が吹いていた。
あともうひとつだけ。Aメロは地味で淡々としていて、いかにも「このコード進行なら出てきそう」くらいの感じで、Bメロも最初はそうなんだけど途中から「あれ?」と言いたくなるコード進行&メロ展開になって、サビで大爆発してとんでもないところまでいってしまう。というのが、藤巻亮太の書く曲の特色であり武器であると僕は思っているんだけど、この日やった曲たち、どれも、それが炸裂していた。あと、その「とても歌えそうにないメロディを普通に歌ってしまう」という武器も、同じく、炸裂していた。ほんと、アルバム、楽しみになってきました。(兵庫慎司)
セットリスト
1.キャッチ&ボール
2.ハロー流星群
3.ひとりぼっち
4.新曲
5.新曲
6.新曲
7.月食
8.光をあつめて
9.Beautiful Day
10.新曲
アンコール
11.新曲