SonarSound Tokyo 2012 2日目 @ 新木場ageHa/スタジオコースト

4/21にオールナイト開催となった初日に引き続き、4//22の午後から行われたSonarSound Tokyo2日目の模様をレポート。ダンス・パーティというだけではない、様々な手法を凝らして感覚を揺さぶってくれる先鋭的なアクトばかりなので、いちオーディエンスとしてもとにかく気持ちが昂ったままなのだが、この感覚はSonarSoundならではのもの。楽しくて仕方がない。

メイン・フロアとなるSonarClubの2日目トップは、宇川直宏が率いるUkawanimation! Presents XXX Residentsである。シルクハットに巨大な目玉のマスク、そしてテクノ・ナンバーに再構築されたレジデンツ楽曲によって、かの米国バンドが築き上げてきた前衛性・批評性に敬意を表すというプロジェクト。メンバーのマスクは、目玉の色がそれぞれ異なっている。全身タイツの女性がロープで緊縛されるという実演ショーが始まったと思ったら、女性はステージ上空にまで吊り上げられ、蜘蛛のアニメーション映像と重なりながら羽毛を撒き散らすというパフォーマンスを見せてくれる。美しい。更には自転車と共に逆さ吊りにされて空中で漕いでみせたり、休日の日中からいきなり、ストレンジで恍惚とした世界に導いてくれた。
SonarSound Tokyo 2012 2日目 @ 新木場ageHa/スタジオコースト - Ukawanimation! presents XXX ResidentsUkawanimation! presents XXX Residents
テント型ステージのSonarDomeにて、自然音コラージュとは思えないようなキャッチーかつチャーミングなダンス・ミュージックを披露するYosi Horikawaに触れた後、海外での活動においても高い評価を受けるAnchorsongのパフォーマンスへ。メロディアスな上モノのリフレインからベース音、ビートまで、MPCで次々にプレイを重ねてロッキン&ファンキーな楽曲を構築する。ソロのクリエイターはみんなそうだと思うけれど、あらゆるフレーズがミュージシャンの中で等価に「生かされている」ことをリアルタイムで伝えてくれる素晴らしいパフォーマンスだ。普段は一人きりのステージが多いそうだが、今回は特別に男女4人のストリングス隊を迎えた楽曲も披露していた。
SonarSound Tokyo 2012 2日目 @ 新木場ageHa/スタジオコースト - AnchorsongAnchorsong
プール・サイドのSonarLabでオオルタイチのライヴを観ようと思ったが、出演時間が入れ替わっていたらしく、前日にグローバル・コミュニケーションとしても出演していたトム・ミドルトンのDJタイム。メロウでダブ処理されたトラックを投下しているというところ。余裕と貫禄が伺える。さて、全身で浴びる強烈な低音という意味では、いかにもダブステップなステージになっていたのがグラスゴー出身のラスティーだろう。序盤からダフト・パンクのナンバーを思いっきりベース・ミュージックに解体・再構築してみせたり、ブリーピーなレイヴ・サウンドで飛ばす後半まで、熱いプレイだった。

まったくの予備知識なしで触れてみて良かったのが、NYのシンガー、ジェシー・ボウキンス三世。間で聴かせるポスト・ダブステップのトラックの上で、甘くソウルフルなファルセットをたっぷりと堪能させてくれる。会場で2008年作のアルバムを購入してみたが、こちらも良かったのだけれどいわゆるネオ・ソウルの流れを汲む作風であり、今後はエレクトロニックな作風にも期待したいところ。そしてSonarClubには、こちらもポスト・ダブステップの注目株であるロンドンの2人組、マウント・キンビーが登場。深いエコーがかかったシンセ・パッドを打ち鳴らすところから始まり、2人が様々なパートを担当しながら、ゆっくりと時間をかけてダンス・ビートを立ち上がらせてゆく。とてもドラマティックなライヴで、なおかつ新しい時代を引き受けようとする作曲の着想の数々が素晴らしい。力押しだけではないダンス・ミュージックの可能性を感じるステージであった。
SonarSound Tokyo 2012 2日目 @ 新木場ageHa/スタジオコースト - Mount KimbieMount Kimbie
さて、今月50歳の誕生日を迎え、SonarSoundの後には単独ツアーも控えているヴィンセント・ギャロである。彼含め3人のメンバーで、フレキシブルにパートを変えながら、素朴にして途方も無く美しい楽曲を披露してくれる。難しいプレイは何もない。派手な演出もない。なのに音楽がどこまでも自由で、近い。まさにストリート・ミュージックの極致である。「ポップ」な「ミュージック」は本来、こんなふうにプレイされ、聴かれるべきだろう。あの『バッファロー ‘66』の“ムーンチャイルド”がなんでもないことのようにカヴァーされるに至っては、視界がぐにゃりとねじ曲げられるような体験だった。

ギャロに後ろ髪引かれながら向かったのが、昨年キャンセル(仕方なかったと思う)の分まで楽しみたいSonarDomeのトリ、ハドソン・モホーク。開演前からテント前に長蛇の列&入場規制の盛況ぶりだ。ヨコ乗り派にはたまらないファットなヒップ・ホップ・ビートに、彼らしい繊細でユーモラスなフレーズの数々が飛び交う。天井から吊るされたスピーカーの使用は出演者次第だったようで、モホークのときには使われなかったことが音響面でちょっと残念だった。ずっとオーディエンスで満杯だったので。

さあ、今年の2日間を締め括るのは、ザ・シネマティック・オーケストラだ。そもそもがジャズ・エレクトロニカ的な手法によって高い情景喚起力を誇る音楽を生み出し、或いはサイレント・ムーヴィーのためのサウンドトラックを制作したりしてきたグループなので、先鋭的な音楽と映像のコラボレーションという意味では、屋上に屋を架すというほどではないけれど「そんなのばっちりハマるに決まってるじゃん」というぐらいの完璧なアンカーである。
SonarSound Tokyo 2012 2日目 @ 新木場ageHa/スタジオコースト - The Cinematic OrchestraThe Cinematic Orchestra
ストリングス隊を含めた大所帯バンドによるコンセプチュアルで緊張感に満ちた演奏、そしてアナログもデジタルも刺激的な処理を加えられた美しい映像の数々。視線はどうしても映像の方に持って行かれてしまうのだけれど、バンド・メンバーそれぞれの演奏技術もとんでもないレヴェルなのが困る。前日出演のドリアン・コンセプトがゲスト出演していたのも嬉しかった。この人、ここ2年の開催でイヴェントの顔役みたいになってしまっている。 初日に比べると、比較的ゆったりと時間が流れる印象の2日目だったが、ポスト・ダブステップの現在地を伺わせるアクトの数々、そしてギャロやシネマティック・オーケストラの、アートによる感動の遥かな高みに至るまで、充実の内容であった。一貫した思想を掲げるSonarSoundが、このまま毎年のように、恒例のイヴェントとして根付いて行けば本当に嬉しい。(小池宏和)
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