10-FEET @ 吉祥寺CLUB SEATA

3月18日(日)石川県・小松The Mat'sからスタートした全18本のツアー『“どこ行く年! どないすん年!”TOUR 2012』の10本目、吉祥寺CLUB SEATA。キャパは……私の見た感じですが、新代田FEVERと新宿BLAZEの間くらい、600とかそれくらいかなあ、というところ。なんで10-FEETで東京なのにZeppやSTUDIO COASTではなくここなのか、というと、このツアー自体が「普段行かない場所へ行く」という趣旨のようで、前述の1本目も石川県で金沢ではなく小松(空港があるところですね)のThe Mat’だったり、16本目=5月21日(月)の福岡も福岡市ではなく小倉のFUSEだったり、そういうスケジュールの切り方になっているのでした。
なお、このツアーと並行して、4月には福島・仙台・岩手を回る「“東日本大作戦”TOUR 三幕」を行ったり、その合間合間に『PUNKSPRING』やら『ARABAKI』やら『ROCKS TOKYO』やら各地のライヴハウスやらのイベント出演がひっきりなしに入っている、という、もうとにかくライヴだらけなことになっている、今年の上半期の10-FEETは。ライヴの本数だけ見ると、最も多い5月でも12本なので、10-FEET的にはそんなケタ外れに多いわけではないかもしれないが、「ツアー」「また別のツアー」「多数のイベント出演」の3つのモードのライヴをいっぺんにやる、というのは、やる側としては、かなり大変なのではと思う。

ゲスト=NUBOの汗と情熱まみれのステージが終わったあと、ちょっと長い転換を経て、10-FEETの登場。始まってすぐ、「あれっ?」と思う。PAか機材のトラブルなのか、出音、よくない。各楽器の音量のバランスがジャンクだったり、ギターの音が途中で小さくなってしまったり。途中のMCの時、ソデにスタッフが数名出てきて色々やっている様子だったので、結構シリアスな状況だったのかもしれません。加えてTAKUMAの声も、ちょっとつぶれ気味。歌えないほどひどくつぶれてはいないが、ピカピカに絶好調な時のそれではない。
あと、最も「あれっ?」と思ったのが、演奏そのもの、歌そのものに向かうバンドのスタンスが、「勢いまかせ」「気合いまかせ」「テンションまかせ」みたいな、やたら原始的な、それこそ組んだばかりのパンク・バンドのようなそれだったこと。前にも何度も書いたが、10-FEETって、技術的な意味でもアイディア的な意味でも、自分たちの実力の上限を突破したアルバムを作ってから、ツアーをやることによって自らの音楽的基礎体力をそこに追いつかせていく、だから最初は全然できないけどツアーが終わる頃にはすばらしくなっている、というふうな成長のしかたをしてきたバンドである。と、僕は思っているんだけど、何か、そういう感じのライヴではない。これ、新しい作品のリリース・ツアーではないわけで、やり慣れた人気曲を各地で披露して、バンドは余裕だしファンは大喜び、みたいな楽しいライヴになってもいいはずなのに、全然そんな空気じゃない。3人とも必死だし、やたらせっぱつまっているし、ギリギリなオーラを全身から発している。

って、観ながらここまで考えて、「あ、前回もそう思ったわ」と気づいた。そうだ。昨年12月20日に新木場STUDIO COASTで観た、シングル『その向こうへ』のリリース・ツアーも、新しい曲はそのシングルだけなのに、ほかはほぼおなじみの曲たちなのに、そんなふうな、やたら必死でやたらせっぱつまったライヴだった(ライヴレポはこちらです。http://ro69.jp/live/detail/61799)。
で。今日のこれ、まだ全然続くツアーだし、セットリスト書くのはNGだろうな、でも何曲かだけでも書きたいな、と、終演後にスタッフに確かめたら、「全曲OKです」。「え、マジで? まだ半分くらい残ってるでしょ?」「いや、このツアー、毎日全然セットリスト違うんですよ。だから問題ないです」。毎日全然セットリストが違うということは、「こなれない」「ライヴの流れが身体に入らない」「毎回ツアー1本目みたいな状況」なわけで、じゃあ誰がそれを10-FEETに強いているのかというと10-FEET自身なわけで、つまり僕が今書いたような「必死」「せっぱつまってる」状態に、あえて自分たちを追い込んでいる、ということだ、とも言える。

そういえば、ライヴ自体の尺、1時間20分に満たないくらいだったけど、終わった時、3人とも息も絶え絶えだった。あと、TAKUMA、後半に「今日はアンコールも続けてやります」と宣言、ひっこまずにそのまま最後までやった。いったんブレイクを置くと、肉体的にも精神的にもテンションがもたなくなる、ということだったのかな、と、終わってから思った。

なんで10-FEETは、今、いや、去年からか、そういうツアーをやっているのか。ということを考え始めると、ほんとさまざまな理由や必然が推測できるけど、書くのやめときます。ただ、シングルを除くともう2年半以上アルバムを出していないわけで、それでもなお作らないでこういうテンションのライヴをやっている、ということは、今のこの活動で得たものが、そのまんま次のアルバムに表れるということだ、と思う。
楽しみです。昨年末のライヴを観た時は、その自分たちを追い込む姿勢がヒリヒリしすぎていて、ちょっと心配になったりもしたけど、今日のこのライヴのギリギリ感やヒリヒリ感は、何か、次の展開が見えるものだった気がしたので。(兵庫慎司)


セットリスト
1.nil?
2.hammer ska
3.STONE COLD BREAK
4.super stomper
5.EVERY
6.FUTURE
7.2%
8.RIVER
9.CHERRY BLOSSOM
10.SEE YOU
11.4REST
12.1 sec.
13.VIBES BY VIBES
14.風
15.back to the sunset
16.その向こうへ
17.goes on
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