全11本、うち東京・新木場スタジオコースト公演が5本(!)という強気なスケジュールが組まれた、オフスプリングの2008年ジャパン・ツアー。「スタンディングのキャパ2400人強のスタジオコーストで5日間やるんだったら、1万人キャパの代々木第一体育館を1日押さえたほうがよくないか?」と最初は思ったし、正直なところ、新木場に着くまでそう思っていた。
が……初日のフロアはソールドアウトの超満員! デクスターはじめオフスプリングのメンバーたちが強気なブッキングで示した「侠気」を、日本のファンががっちり受け止めたことに、早くもじーんとくる。オープニング・アクトで登場したTOTALFATのVo・B=Shunの「1999年のオフスプリングのライブをNKホールで観て、その衝撃を持ち帰ってバンドを結成しました! この短い時間を使って、『夢は叶う』っていうことを証明しに来ました!」というMCが、そんなホットな空気に拍車をかける。
そして――20:00ジャストにオフスプのライブが始まった途端、立ち込める熱気と汗の匂い、そして重力崩壊すんじゃないかってくらいの圧倒的な密度で湧き起こる「ウォー!」と「オーオーオー!」の大合唱! パンクを極限までヘヴィーでぶっとく、それでいてキャッチーに、という二律背反的な欲望のフェーダーを両方ともMAXにしてしまったような彼らのサウンドが、手のつけようもないくらいにスタジオコーストの空間の中を暴れ回り、オーディエンス1人1人を爆音で爽快にぶん殴っていくような、それでいてぶん殴られたキッズが満面の笑みで立ち上がってさらにまたステージに挑んでいくような……そんなエモーション無限循環が生まれてしまっている。この、バンドとフロアの高密度なエネルギー交換は、確かに大雑把なアリーナ・ライブでは生まれないものだ。
ツアー初日なので詳細なセットリストは割愛するが、大充実の新作アルバム『Rise and Fall, Rage and Grace』直後のツアーだけに、もちろん“Hammerhead”などもやっていたが、ツアーに先立ってソニーの公式サイトで「ライブでやってほしい曲投票」をやっていたこともあって、新作でガチガチに固めるというよりは、どちらかというと「みんなで楽しむオフスプリング」を第一義に持ってきた内容だった。
“Hammerhead”や“Head Around You”のストイックで攻撃的なパンクと、“Pretty Fly(For A White Guy)”の「あはーん、あはーん」の悪ノリ満載イケイケ・パンク……洋の東西も問わず後進のパンク・バンドたちに何万回も引用されまくったその2つのフォーマットを、まったく矛盾させることなく、今なおバンドの両輪にしてパンク街道のど真ん中を臆面もなく爆走し続けるオフスプ。本編17曲+アンコール3曲というメニューを1時間強で突風のように駆け抜けた渾身のアクトを「余力バリバリ! まだまだ行けるぜ」的な佇まいで披露してみせたのも、彼らなりのダンディズムの形のような気がして、その眩しいくらいのタフさに、またも勝手にじーんときてしまった。
観終わって、気になったのは2点。「明日以降のセットリストが果たしてどうなっているのか?」という点と、「デクスター・ホーランドの伸びた髪が微妙にオシャレ風なカールがかかっていて、一昔前のマイケル・J・フォックスにしか見えないあたりが、そのタフなサウンドとは若干ミスマッチなのでは?」という点。あとはもう、言うことなし。憎いくらいに最高。ちなみに、これを書いている6日22:30の段階では、スタジオコースト残り4日間(10月7日・14日・15日・16日)のうち、最終日=16日以外は残券ありのようだ。ぜひ!(高橋智樹)
オフスプリング @ 新木場スタジオコースト
2008.10.06