「ASPARAGUS presents BKTS TOUR」 @ SHIBUYA-AX

「ASPARAGUS presents BKTS TOUR」 @ SHIBUYA-AX - all pics by Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)all pics by Rui Hashimoto (SOUND SHOOTER)
ASPARAGUS主催の対バンツアー「ASPARAGUS presents BKTS TOUR」。2005年に一夜限りの対バンイベントとして産声を上げて以来、東名阪3ヵ所をめぐるツアー形式で行われた2007年、さらに札幌・仙台・福岡を追加した全国6ヶ所での開催となった2009年と、回を重ねるごとに規模を拡大してきた不定期イベントである。2009年以来3年ぶりの開催となった今回は、前回と同じ全国6ヶ所の会場を、前回と同じ3バンド=the band apart、COMEBACK MY DAUGHTERS、LOSTAGEとともにサーキット。そのファイナルとなるSHIBUYA-AX公演は、1ヶ月をかけて全国をまわり親交を深めてきた4バンド(馬の骨達=BKTS)だからこその、肩の力の抜けたパフォーマンスが炸裂した、この上なくハッピーな一夜となった。

「ASPARAGUS presents BKTS TOUR」 @ SHIBUYA-AX
■COMEBACK MY DAUGHTERS
開演時刻の18時ジャスト。当イベントのMCを兼任するキーボードの小坂裕亮がひとりステージに現れ開会宣言を行い、「COMEBACK MY DAUGHTERS、出てこいや!」とメンバーを呼び込んでスタートしたアクト。シンプルなアンサンブルが淡い情景を描いていく楽曲から、アコギの清冽な音色が聴く者を緩やかに覚醒させていく楽曲まで、抜群の透明感と開放感を湛えたフォーキーなサウンドが伸びやかに届けられていく。本ツアーの会場限定コンピ『BONES Ⅱ』に収録の新曲を軽快に鳴らした後は、アイリッシュ・テイストのサウンドがカラフルに弾けるパーティー・モードへ一気にシフト。ラストは「また会いましょう!」の挨拶から“See You Later”を解き放ち、フロアをハンドクラップで満たして40分のステージを締め括った。エバーグリーンなメロディと柔らかなアンサンブルの輝きで、会場全体が心地よい昂揚感に包まれたアクトだった。

「ASPARAGUS presents BKTS TOUR」 @ SHIBUYA-AX
■LOSTAGE
1曲目の最初のギター・リフ一撃で、カムバックが築いたハートフルな空気をダークに塗り替えてしまったLOSTAGE。鋭いリフとビートが濁流となって押し寄せるダイナミックな轟音が、フロアを戦慄させていく。 浮遊感たっぷりのサウンドの上で内省的な言葉が綴られた“楽園”では、どこか寓話的なイマジネーションを呼び起こす摩訶不思議な世界へとAXを誘ってくれた3人。一方で7月11日にリリースを控えたニュー・アルバム『ECHOES』からの新曲“BLUE”では焦燥感に満ちたシンプルなロックンロールを鳴らしていて、LOSTAGEの新境地を鮮やかに提示してくれていた。後半は、殺傷力抜群の音と言葉がドス黒く渦巻くLOSTAGEサウンドの深淵へと1曲ごとに足を踏み入れていく展開に。最後に“ひとり”を力いっぱいブチかましてクライマックスを迎えると、それまで固唾を呑んでステージを見守っていたオーディエンスから沸き起こる、怒号のような歓声と拍手! ロックンロールの先鋭部のみを取り出したようなストイックな音塊が、これでもかと炸裂した圧巻のアクトだった。

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■the band apart
いつものようにサウンドチェック中から本番さながらのプレイでオーディエンスを沸かせていたバンアパ。硬質なリフとビートが火花を散らした“I Love you Wasted Junks&Greens”などのアッパー・チューンを冒頭から畳み掛け、フロアを力強く揺さぶっていく。中盤には、7月18日リリースのニュー・シングル『2012 e.p.』から2曲を披露。これがどちらも彼ら初の日本語詞の楽曲なのだが、精緻なアンサンブルに日本語詞が重なることで、心の機微を余すことなく描き出した最高にエモーショナルな音世界が広がっていて、とても面白かった。快感のツボを突くことを最大の目的としていたバンアパのサウンドが、日本語詞の楽曲によって新たな深みを手にしたことは、とても喜ばしいことだ。ラストは“photograph”“Eric.W”とキラー・チューンを連打して、ハイジャンプとダイブをこれでもかと誘発させた4人。カタルシスが次々と押し寄せるバンアパならではの熱狂空間と、溢れ出るエモーションが鮮やかに立ち上るバンアパの新境地を、同時に堪能できた充実のアクトだった。

「ASPARAGUS presents BKTS TOUR」 @ SHIBUYA-AX
■ASPARAGUS
そして20時52分。いよいよ今夜のメインアクト=ASPARAGUSが登場! オープニング・チューンは“Analog Signal Processing”。鋼鉄のリフと弾丸ビートがフロアを激しく揺さぶっていく。そのまま“JERK”へ雪崩れ込むと、ステージ上のライトがビカビカと点滅する中、オーディエンスの身体をビリビリと震わすハイエナジーな音塊が炸裂。それでいて、続く“MEND OUR MINDS”では光の中へまっしぐらに駆け抜けるキラッキラのメロディを聴かせてくれるんだから、身体が疼かないわけがない。かと思えば「ぶっちゃけ言うと、このバンドは好きだけどこのバンドはあんま好きじゃない、みたいな人もいると思うんだけど。アスパラのことが嫌いでも、BKTSのことは嫌いにならないでくださーい!」と、どこかで聞いたことのあるフレーズを交えながら爆笑トークを展開していくしのっぴ。つまり序盤のパートのみで、一気に臨界点へと到達する楽曲の強力さ、それを鉄壁のアンサンブルでダイナミックに走らせていくプレイヤビリティ、そしてオーディエンスとフレンドリーに交歓していくオープンマインドな空気感という、実に多彩な魅力をガッツリと見せつけてしまったアスパラなのである。最高だ。

胸を掻きむしるギター・ストロークが届けられた“DEAD SONG”、カラフルなメロディでフロアの横揺れを誘った“I'M OFF NOW”と、アコースティック・チューンを立て続けに奏でた後は、バンド結成10周年を記念するツアーのファイナルとして、11月11日に渋谷公会堂にてワンマン・ライブを行うことを発表。さらに疾走感たっぷりに掻き鳴らされた会場限定コンピ収録の新曲を経て、ライブはいよいよクライマックスへ。“APPROACH ME”“FALLIN' DOWN”のキラー・チューン2連打で、この日いちばんのダイブの波をフロアに巻き起こして45分のアクトを爽快に駆け抜けた。

アンコールでは、まずはカムバックのユースケがイベントMCとして登場し、格闘技のリングアナ風にアスパラの3人をひとりひとりステージに呼び込む。で、そのまま曲に入るのかと思いきや、「ただ曲をやって終わるのも寂しいので、曲やる前にプチ打ち上げをしようかな」としのっぴ。出演バンド全員をステージに招き入れ、ビール入りの紙コップを手に「かんぱーい!」とささやかな打ち上げが行われた。その後は3バンドがステージ両端で見守る中、“FLY”をプレイ。ポップかつ骨太なアンサンブルが天井高く上り詰めて壮大なフィナーレを迎えたところで、なんとステージ端にいたバンアパの荒井がフロアにダイブ! 伸びやかで、フレンドリーで、たくさんの歓喜に満ちた今夜のイベントを象徴するような、多幸感溢れるワンシーンだった。(齋藤美穂)
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