山中湖交流プラザで開催するようになってから5回目、日比谷野音でやっていた頃からカウントすると17回目になる、スペースシャワーTV恒例の野外イベント、『SWEET LOVE SHOWER 2012』。今年も、2日間開催/ステージは大2つ(LAKESIDE STAGEとMt.FUJI STAGE)・小1つ(FOREST STAGE)・1日に2アクトだけ出演するアコースティック・ステージ(WATERFRONT STAGE)1つ/大2つのステージはかぶらず交互に進行/トリ後にSPACESHOWER TV STUDIO(公開番組スペース的な場所)にてクロージングDJあり・初日はユアソンJxJx、2日目はやついいちろう/そのお2人も含めて1日目20組・2日目19組の計39組が出演──という概要。1日目は私、2日目は小池宏和がレポートします。以下、1日目である9月1日(土)、自分が観れたライヴに触れていきますが、全アクトではありません。すみませんがご了承を。
ちなみに。RO69ではこのイベント、毎年レポしているのだが、どのライターも必ずと言っていいくらい、最初に書くことがある。「バスが渋滞に巻き込まれて残念ながら最初のアクトを観逃しました」ということです。今年もそうなりました。要は、この季節の休日の朝の中央道は確実に混んでいる、ということです。今年も、各ステージのトップのアクトをすべて観逃し、到着した時にはMt.FUJI STAGEの2番手、きゃりーぱみゅぱみゅが始まったところだった。
きゃりーぱみゅぱみゅ、初出演である、このすごいメンツの中で自分だけ明らかにアウェイである、どうしましょう、みたいなことをMCで言っていたが、「どこが?」と言いたくなる大入り、そして“PON PON PON”“きゃりーAN AN”“つけまつける”などなど、ヒット曲連発で大ウケ。満員のオーディエンスが彼女の指示どおりの振りで腕を動かしたり身体を動かしたりする、それがきれいに揃っているさまは、かなり壮観でした。
続いてはLAKESIDE STAGEのフジファブリック。山内総一郎、「このフェスにフジファブリックが出なくてどうする! と思ってたんやー!」とカマす。こんなに間近に富士山が見える(今日は雨で見えないけど)フェスにふさわしいのはフジファブリックでしょう、というわけです。で、そのあと、このフェスに出るのは3年ぶりであること、この体制になって初めての出演であることを告げる。そうだ、3年前の出演の4ヵ月後に、志村が亡くなったんだった。「ここは志村くんの地元の山梨だし」。確かに。そのせいかどうかはわからないが、5月に出たシングル“徒然モノクローム”を途中にはさみつつ、“虹”“夜明けのBEAT”“Surfer King”“銀河”と、志村の名曲を連打。ただしラストは“STAR”でびしっとシメたのが、特によかった。
次はFOREST STAGEにて、昨夜放送の『タモリ倶楽部』で「ラジオ体操第三」に挑んでいた男、そして腕をぐるぐる回す運動のところで「その回ってる手、なんか短くない?」とガダルカナル・タカに言われた男、浜野謙太が率いる在日ファンク。10月3日にリリースされる新しいミニ・アルバム『連絡』収録の “嘘”と“肝心なもんか”を含む全6曲をプレイ。浜野さん、あのダンスもJBまんまのシャウトも前半は抑え目、その分後半で炸裂、という緩急つけたステージングでした。
あと浜野さんに言いたいこと、2つ。ちょっと前までのこてこてのオールバック&ぎんぎんのスーツよりも、今のようなさらっとしたヘアスタイル&シックな色のスーツの方が素敵だと思います。モテそうです。正解です。それから、ダンスと歌の技術に関してはなんにも文句ありませんが(前者は現状で充分だから。後者は、べつにうまくなくてもいいから)、ただ、声量だけは、もうちょっとつけた方がいいと思います。“こまくやぶれる”や“マルマルファンク”で、ジェントル久保田(トロンボーン)が「イヤアッ!」とかかけ声を入れる時、声のでかさにおいて負けている時があるので。
で。このFOREST STAGE、そのアクトを最後まで観てしまうと、脱出にとても時間がかかる。Mt.STAGEに近いけどすごく混む狭い出口か、混まないけどすごい遠回りな出口のどっちかから出るしかないのです。それで、続くMt.FUJI STAGEの高橋優を観逃してしまった。なお、天気は雨、空はところどころ微妙に晴れていたりするんだけど降り止まず、という状況。芝生のLAKESIDE STAGEは平気だが、Mt.FUJI STAGEと飲食のエリアは水たまりだらけ。
が、続いてMt.FUJI STAGE にて“AMBITIOUS”でライヴをキックオフしたDragon Ash、2曲目に“Bring it”をやり、3曲目に“Run to the sun”(9月19日に出る、IKUZONEのベースが聴ける両A面シングル収録曲)の途中で、Kj、空を指して「見て見て! 晴れたじゃん!」。ほんとだ、いつの間にかやんでる。“Walk with Dreams”(同じく両A面シングルのもう1曲)をやり、続いて“La bamba”に突入する頃にはまた降ってきちゃったが、“For divers area”を経てラストに“Fantasista”をぶちかます頃には、またやんでいた。で、Kj、また「見て見て!」。って、曲名と天気のことしか書いていないが、ライヴ、今日もめちゃめちゃよかった。すべての場を力ずくで祝祭空間にする、無敵の、そして唯一無比のラテン・ミクスチャー。すばらしい。
次はMt.FUJI STAGE、レキシ。箇条書きにします。
・1曲目、“きらきら武士”。2曲目“どげんか遷都物語”。3曲目、“狩りから稲作へ”。以上3曲でおしまいでした。曲が長いからです。あと、しゃべりも長いからです。というか、曲の途中でしゃべるからです。時には、ドラムに「うるせえ!」とつかみかかって静かにさせたりしてまで、しゃべりたがるからです。
・2曲目でゲスト、「織田信ナニ?」ことハマケン登場。途中で池ちゃん、じゃないレキシさん、キーボードを抱えてハマケンとソロの応酬。おお、なんかミュージシャンっぽいことになってる、と思ったら、その次の間奏ではソロを吹いているハマケンのトロンボーンをひったくって演奏をやめさせる。むちゃくちゃだ。と、ハマケン、すかさずマイクをつかみ、ふたりでシャウトし合うという展開に。なんだこれ。でも笑った。
・3曲目では「足軽先生」こといとうせいこうが登場。2曲目が終わっていっぺんひっこんだハマケンも手ぶらで出てきて、コーラスで参加。が、池ちゃん、そのハマケンを完全に無視。で、曲の後半で、無視してたことに気づいて、自分で自分につっこむ。そして「持ち時間あと3分!」「あと2分!」と、すっかりタイムキーパー状態の足軽先生と共に歌いきり、ライヴ終了。
・アーティスト名が「レキシ~信玄餅スペシャル~」となっていますが、最後まで観ても、いったい何が「信玄餅スペシャル」だったのか、わかりませんでした、私。ゲストが出たから? でも、ゲスト出ること多いですよね、この人のライヴ。何が信玄餅だったのか、ご存知の方がいたら、教えてください。単に「山梨だから」ってだけだったらどうしよう。
レキシで笑い疲れてちょっとくたびれたが、次のLAKESIDE STAGEのアクトの1曲目のイントロが鳴り出した瞬間に、いきなり気持ちがしゃきっとした。音、でけえ。で、やたらクリア。そして、すんごいグルーヴ。音楽的には自分たちにしかできないことは何ひとつやっていない、でもピッカピカで新鮮この上ない、つまり矛盾の塊のような音楽としてのロックンロール、THE BAWDIES。不思議だ。何度観てもいつ観てもどこで観ても、不思議なまんまだ。「俺らの音楽は、なんも新しくない。やってるこの4人が前代未聞なだけや」と言ったのは、1995年・ブレイク直前の頃のトータス松本だが、それを思い出した。特にROY、「ダミ声でピカピカ」ってなんなんだそれは、と思うが、でもそうとしか言いようがないからしょうがない。
「いい感じに曇りになってきたんで、今日は暗い曲をいっぱいやって帰りたいと思います」というあいさつでスタートした星野 源・Mt.FUJI STAGE。最初は伊藤大地・伊賀航との3人で始まり、次に高田漣が加わり、そしてホーン隊4人も参加、という、ここんとこの定番のメンバー編成でした。いや、待てよ。フジの時はホーン隊、いなかったかも。まあとにかく、今の星野源の最強メンバーでもって、今の星野源の最強ポイントを並べていくようなステージだった。ただ、暗い曲をやりすぎたせいか、途中から、今日一番の大雨になりました。なんか、星野くんっぽい。と、つい、思った。
あと、メンバー紹介をした時、「最近は『客』というパートがあるんです。客、山口一郎!」と星野くん。すると、ソデに山口一郎が姿を現して、手足を広げてジャンプして、ひっこんだ。なんなんだ。でも、これも、なんか星野くんっぽい。
こういうフェスでよくある光景として、セッティング段階でメンバーが出てきて、リハーサルでちょっと曲をやったりするが、まずあのリハの段階で「あれ?」と思った。で、本編が始まったら、「うわあ」と思った。the HIATUSが、ライヴ・バンドとしていかにとんでもないかなんてことはご存知だと思うのでくり返さないが、でも、細美武士、歌、すごくなってないか? 100歩譲って、表現力とか歌唱力とかは聴く人によって受け取り方が違うってことでさっぴくとしても、まず、声のでかさと声の通り方が、あからさまにすごくなっている気がしてしょうがなかった。なんなんだろう。喉って消耗品だから、使えば使うほど傷んでいくものであって、だからいろんなヴォーカリストが手術したり療養したりするわけで、なのに歌えば歌うほどでかくなるって何なのか。新人ならまだわかるが、細美、もう結構なキャリアで、結構な年齢だし。何が起きているのかわからないが、とにかく、ビリビリきた。
「SWEET LOVE SHOWER」、初めての出演だそうで、細美、呼んでくれたことに対するお礼を言っていた。で、来てみたらほんといいフェスで、これまで来なかったことをちょっと後悔している、とも言っていた。
このへんになると、ステージによってはちょっと時間が押していて、Mt.FUJI STAGEのトリのEGO-WRAPPIN’ AND THE GOSSIP OF JAXXと、FOREST STAGEのトリのavengers in sci-fiが、モロかぶりの状態に。アヴェンズを観た。おもしろかった! タワーレコードのキャンペーンじゃないが、まさに「踊るロック」。特に後半、バンドのテンションが上がれば上がるほど、リズムに16ビート要素がからめばからむほど、民族音楽とかアフリカの部族の祭りの音楽(←適当なイメージだけで言ってますが)みたいな、いわば土着的な匂いがそこはかとなくしてくるところが、特にいい。で、たぶんそれ、本人たちはそんなつもりないだろうな、「そうしてる」んじゃなくて「結果的にそうなっている」感じなんだろうな、と思わせるところが、さらにいい。「人はなぜ踊るのか」ということの、大事な部分に近づいているからそうなるのではないか、という気がするので。
そしてLAKESIDE STAGEのトリ、サカナクション。1ヵ月前、フジロックのホワイトステージで圧勝した時と、基本的には同じ構成だった。つまり、ライヴの頭と中盤の2回、メンバー5人横1列に並んでmacを操作、のフォーメーションになるライヴです。ただ、曲目も曲順も、結構変えていると思う。 “RAP TOP OPENING(これが横1列mac。インストの打ち込みで、最後に「サカナクション、スイートラブシャワー」って会場名を言うナレーションで終わるやつ)”、“モノクロトウキョー”“アルクアラウンド”“『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』”“僕と花”“僕と花”のリミックス(ここで2回目の横1列)“ネイティブダンサー”“アイデンティティ”“ルーキー”、そしてアンコールで“夜の踊り子”というセットリスト。確かフジの時は前半で“ホーリーダンス”とかやってたし、“夜の踊り子”も2,3曲目でやっていた気がする。
で、アウェイかもしれないという覚悟で臨んだであろう(実際は全然ホームだったけど)フジと違って、今年で5年連続出演、つまり会場がここになってからは皆勤である『SWEET LOVE SHOWER』はホーム中のホームなわけだが、そんな余裕など感じさせない、歓喜と多幸感にまみれながらぴんと張りつめた、そんなテンションを感じさせるステージだった。山口一郎も他のメンバーも、もちろんライヴを楽しんでいるとは思うけど、「任務遂行」とか「ミッション完了」とか、そんな言葉で形容したくなる空気がステージに常にある気がする。で、それ、僕がサカナクションをいいなあと思うところのひとつでもある。
今日も、本当に完璧に、トリの任務を遂行した、サカナクションは。くたびれてるはずなのに、楽しかった、最高だった、幸せだった、と口々に言い合いながら帰途につくお客さんたちを見て、改めてそう思った。
明日の2日目をレポートする小池宏和くん。申し訳ないです、こんなに書いてしまいました。この量に揃えなくていいですからね。長きゃいいってもんじゃないし。と、いつも思うんだけど。うーん。すまん。明日に続く。(兵庫慎司)