岡村靖幸 @ SHIBUYA-AX

東名阪ツアー『SPORTS』の東京(10/12、NHKホール)の追加公演、SHIBUYA-AX2デイズの1日目。以下、ちょっとネタバレしているので、明日観るという方、ご注意ください。

なんだ、前回のツアーと全然同じじゃないか。ということになってもよし。セットリスト、1曲違わずぴったり同じだって、かまわない。それですばらしい。ということにしよう。
正直言って、僕は、そういう決意をしてから足を運んだ。前回のツアー『エチケット+』は今年の1月~2月だったわけで、それ以降新しい作品などは出ていないし。それ以前に、我々にとって、岡村ちゃんが全力のライヴをやっている、やれる状態であるということ自体が、とんでもなく幸福なことなわけだし。と思っていたのだった。

大変失礼しました。と、ご本人に言いたい。前回と同じではなかった。曲の大半が入れ替わっていたとか、そういうことではない。前回のツアーにはなかった曲もやっていたけど、同じ曲も結構あった。というか、かなりあった。という意味では、前回と同じなのかもしれないが、受ける印象がまったく違う。要は、完成度とかテンションとかが違う。前回のツアーが完成されていなかったわけではない。前回のツアー、僕は1本目とラストを観て両方ライヴレポ書いているんだけど(1本目=http://ro69.jp/live/detail/62640 ラスト=http://ro69.jp/live/detail/63896)、そのラストの方で、「1本目とは完成度とテンションが違う」などと、まったくおんなじことを書いている。ということを、観ながら思い出して、じゃあ俺は今、何をもってそう感じているのか、考えた。

すぐわかった。安心感だ。そのラストの方のレポで、僕はこうも書いている。「今日は、もう、ほんと頭っから最後まで全力だった。すごかった。もつのかなあこれ。と、途中、心配になった。アンコールが終わり、ダブル・アンコールを求めて手拍子が起こった時、一緒に手拍子しながらも『いや、もういいんじゃない? 充分なんじゃない? これ以上は酷なんじゃない?』と思っていました、私」。
つまり、そういうことを、まったく感じなかったのだ。心配しなくてよいというか、心配する余地などないというか、そういうライヴだったのだ。岡村ちゃんの総運動量が、前回よりも減っていたわけではない(なお、岡村ちゃんのライヴにおける「総運動量」とは、「肉体の総運動量」と「精神の総運動量」の両方を指します)。むしろ、明らかに増えている。前回のツアーは、全力でつっ走りながらも、合間合間に「この曲はあんまり動かなくていいやつ」みたいな時がまだあった気がするが、今回はほんとになかった。尺が短かったわけでもない。2回のアンコールを合わせて2時間45分くらいだったし。
もうひとつ言うと、インターバル(インストの曲で岡村ちゃんがひっこむ時間と、マニュピレーターの白石元久がMCをとる間、後方で休んでいる時間)も、前回より短かった。だから、全体に、前回よりもさらにより一層濃密で、前回よりもさらにより一層目が離せない、そういうライヴだった。どうでしょう。すばらしすぎるでしょう、それは。なんなんだ。
特にすごかったのは、本編中盤から後半にかけての、まるで自分の曲でもって生でノンストップミックスをするがごとく、曲をぶっ続けで重ねていったあたり。まさに、天井知らずに、絶頂に絶頂を上書きしていく感じだった。ちょっともう、ゼエゼエするほどでした、岡村ちゃんじゃなくてこっちが。

なお、前回のツアーでやってなくて今回やった曲は、ええと、“真夜中のサイクリング”とかでした。ちょっと意外。得した気分になりました。あとは、前回も場所によってはやっていた岡村卓球の“COME BABY”。それから、“愛の才能”もよかった。

あと、今、ライヴでプレイされるバージョンの“どぉなっちゃってんだよ”を聴くたびに、不思議に思う。これ、もう大好きすぎて20年以上にわたってくり返しくり返し聴いてきた曲なんだけど(という僕のようなファンは多いと思う)、そういう曲って普通、アレンジ変えられるとイヤじゃないですか。「よけいなことすんなよ、そのまんまやってくれよ」って思うじゃないですか、それがどんなにいいアレンジであっても。つまり、音楽としての良し悪しの問題じゃなくて、こっちの思い入れの問題です。そういうがっかり感が、不思議なくらいないのだ。テンポ倍以上になってバキバキの高速ヒップホップみたいになった、あの今の“どぉなっちゃってんだよ”が始まると、「うわっかっこいい!!」って鳥肌が立つのです。なんでかはわからない。すばらしいから、としか言いようがない。あり得ないよなあ、と思う。この曲だけじゃなくて、どれもそうだし。

それから、もうひとつあり得ないこと。昨年秋にツアーして、年の頭にもツアーして、春から夏にかけてイベントとかフェスとかに出て、秋にこうしてまたツアーして、テレビブロスを読めば連載で水道橋博士と対談してて(ちなみに2F席でばったりお会いしました。ご家族でいらっしゃってました)……つまり、「岡村ちゃんが普通にシーンにいる」この状態自体が、そもそもあり得ない。うれしいけど、なんか、ちょっと、怖い。「これがあたりまえだとは思ってはいかんのじゃないか」「この状態に慣れてしまってはよくないんじゃないか」という気がする。まあ、幸せすぎて怖い、というやつです。ライヴがあまりにもよかっただけに、よけい。
アンコールで白石元久が「次のライヴがあったら来る人!」と客席に呼びかけて、みんな「はーい!」って手を挙げて、「じゃあ岡村さんにお願いしましょう!」って、みんなで「もっと! もっと!」とコールする、という一幕があったんだけど、正直、「いや、そんなに『もっと!』じゃなくていいですよ。もうちょっとゆっくりでもいいですから」とか思ってしまった。
いや、ほんと、ツアー、3年にいっぺんとかでも大丈夫ですので。80年代から岡村ちゃんを追っているファンにとっては、「岡村靖幸のツアーが3年に1回ある」というのは、充分に「しょっちゅう」の範疇に入るので。つくづく、何を書いてるんだ俺は。(兵庫慎司)
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