怒髪天 @ 渋谷クラブクアトロ

怒髪天 @ 渋谷クラブクアトロ - ※写真は10月18日(木)のライヴのものです※写真は10月18日(木)のライヴのものです
怒髪天 @ 渋谷クラブクアトロ
怒髪天の自主企画イベント「怒髪天 presents トーキョー・ブラッサム」。今年で5周年を迎え、10月4日から8日まで5日間連続で行われた京都での恒例イベント「怒髪天 presents“響都ノ宴”」に引き続き、10月 17日から19日まで3日連続で渋谷CLUB QUATTROにて行われた対バン企画である。17日のTHEATRE BROOK、18日のレキシに続いて、最終日のこの日に迎え撃つゲストはSCOOBIE DO。今年7月にはタワーレコード限定発売のコラボ・シングルもリリースし、兼ねてから親交の深い好敵手との競演である。

開演時刻の19時ちょうど、いつものジャジーなSEに乗って登場したSCOOBIE DO。白いスーツで決めたコヤマ シュウ(Vo)の「We are SCOOBIE DO!」という挨拶を皮切りに1曲目へ 突入すると、オーディエンスが堰を切ったように身体を左右に揺さぶりはじめる。そのまま“Disco Ride”へ流れれば、小気味いいスカのリズムに乗ってフロアは一気に縦揺れ に! さらに怒髪天の“労働CALLING”のカバーを(やたらグルーヴィーでメロウになった「♪ウンガラガッタ」のフレーズが面白かったです)と、「もうすっかり秋だけど、ここは何故だか夏キブン!」と“おんな”の艶めかしい歌とビートを響かせて、怒髪天のTシャツを着たお客さんからスーツ姿のビジネスマンまで観客の腰を豪快にくねらせていくのであった。

その後も“What’s Goin’On”“ミラクルズ”と緩急それぞれの楽曲をテンポよく披露していく4人。「ヘイ、エヴリバディ!」「渋谷、踊ろうぜー!」というコヤマのキレのいい掛け声や、3人のソロ・リレーを間髪入れずに繰り出しながら、場内をゴージャスに染め上げていくライヴ手腕はさすが。その一方で、心にじんわり沁み入る歌とメロディーによって、なだらかな上昇気流が描かれていくメロウ・チューンの柔らかな空気感もいい。中でも印象的だったのは、「ありがとう渋谷! ここに足を運んでくれた皆のタイムアンドマネー アンドソウルに感謝! 呼んでくれた怒髪天にも感謝します。次は、今日集ったすべてのソウルに捧げるナンバーです」と放たれた“最終列車”。ソウルフルな歌声と繊細なアンサンブルに場内全体が酔いしれ、演奏後に温かな拍手がいつまでも鳴り響いたシーンには、スクービーならではの濃密なエモーションが見て取れた。

その後は“トラウマティック・ガール”の極太ファンクから、クライマックスへ向けてノンストップのダンス・タイム! 「床が抜けちゃうぐらい飛び跳ねちゃってくれー!」というコヤ マの扇動によって再び火を点けられたオーディエンスのダンス熱は、続く“Back On”のトロピカルなリズムで沸点へと到達する。さらにマツキ タイジロウ(G)の清冽なギター・サウンドが降り注いだ“夕焼けのメロディー”を経て、フリーキーなリフとビートが縦横無尽に飛び交うラスト・チューンへ! 「今日すげ え楽しかったぞ! これからも大好きなロックンロールをやり続けような! 最後、皆で勇気を出してバカになれー!!」というコヤマのシャウトに乗せて、ミラーボールの煌びやかな光で照らされたフロアは大きな狂騒空間に包まれた。

怒髪天 @ 渋谷クラブクアトロ
怒髪天 @ 渋谷クラブクアトロ
そして20時16分。“男祭”のSEに乗って、いよいよ怒髪天の4人が登場! 挨拶なしで1曲目“情熱のストレート”へ突入すると、いきなり一糸乱れぬシンガロングが発生! 力強い拳がフロアのあちこちから振り上 げられ、闘志みなぎる壮絶な熱狂空間へと化していく。そのまま“俺達は明日を撃つ!”“オレとオマエ”と続けても、一向に収まることないシンガロングの嵐。ふと周囲を見わたすと、若い男の子や女の子のほか、40歳はゆうに超えていると思われるオジサンやオバサンまでもが皆ニコニコとした笑顔でステージを見つめている。なにより、派手なアクションでステージを動き回る増子直純(Vo)を筆頭に、楽器を手にしたばかりの少年のような無邪気な笑顔でパフォームしている4人の「おっさん」達の姿が美しい。

「SCOOBIE DOはライブ・チャンプだから、並みのバンドじゃ対抗できない。だから我々も死力を振り絞って、やっとこさ3曲やりました」とか「あの“おんな”っていう曲。俺らがやったら『♪おっさんっていいな』っていう歌詞になるね」とか、噺家も真っ青の語り口で爆笑を巻き起こしていく増子兄ぃのトークは今夜も絶好調。そこでイイ感じに温められた場内の空気は、“押忍讃歌”からのアップ・チューン3連打でさらに上昇。《こんな日本に誰がした》(“労働CALLING”)とか《息する事さえ面倒くさいけど 死ぬのもコレまたクソ面倒くせェ》(“愚堕落”)といったネガと悲哀が剥き出しの歌詞が、ザクザクと突き進むサウンドによってポジティヴなエネルギーに変わっていくさまが本当に痛快だ。続く“杉並浮浪雲”“歩きつづけるかぎり”の連打では、「たとえ報われなくても、生きていることそのものが美しい」というメッセージをストレートに解き放ち、クアトロを眩い光で満たしてしまった4人。《鳴かぬなら 俺は自分で鳴く》というフレーズに大シンガロングが沸き起こった“ホトトギ ス”に至るまで、怒髪天が全身全霊を傾けて鳴らすロックンロールが、このどうしようもない現実を生き抜くための発奮剤としてオーディエンス一人一人の心に作用していることがよくわかる、感動的なセクションだった。

怒髪天 @ 渋谷クラブクアトロ
怒髪天 @ 渋谷クラブクアトロ
10月24日リリース予定の2枚組DVD『“Tabbey Road” the film -夢追道中紀-』の告知を行った後は、“NO MUSIC NO LIFE”からラストへ向けて猛ダッシュ! “喰うために働いて 生きるために唄え!”でフロアを心地よく揺さぶり、“オトナノススメ”の「バン、ババン!」のコールでオーディエンスの歓喜を爆発させ、ラスト“美学”では残るエネルギーの全てを燃やし尽くすようなドシャメシャなアンサンブルが超高速で駆け巡ったところで増子がフロアへダイブ! 最後は「しゃがめー!」とオーディエンスをしゃがませて、会 場一丸のハイジャンプで1時間強のステージを盛大に締め括った。
最後は「生きてまた会おうぜー!」という言葉を残してステージを去った増子。その言葉が象徴するように、「生きること」の尊さを全力で見せつけるような気迫溢れるアクトだった。尽きることない闘争心とド根性魂を熱く燃え上がらせることで、至上の歓喜を生み出す40代男の人生讃歌。そこには、聴く者すべてをポジティヴな未来へと導く凄まじいパワーが宿っている。その証拠に、終演を伝えるアナウンスが流れても、場内に鳴り響き大きな拍手がしばらく止むことなかった。(齋藤美穂)
怒髪天 @ 渋谷クラブクアトロ
怒髪天セットリスト
1.情熱ストレート
2.俺達は明日を撃つ!
3.オレとオマエ
4.押忍讃歌
5.労働CALLING
6.愚堕落
7.杉並浮浪雲
8.歩きつづけるかぎり
9.ホトトギス
10.NO MUSIC NO LIFE
11.喰うために働いて 生きるために唄え!
12.オトナノススメ
13.美学
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