開演時刻の19時ちょうど、いつものジャジーなSEに乗って登場したSCOOBIE DO。白いスーツで決めたコヤマ シュウ(Vo)の「We are SCOOBIE DO!」という挨拶を皮切りに1曲目へ 突入すると、オーディエンスが堰を切ったように身体を左右に揺さぶりはじめる。そのまま“Disco Ride”へ流れれば、小気味いいスカのリズムに乗ってフロアは一気に縦揺れ に! さらに怒髪天の“労働CALLING”のカバーを(やたらグルーヴィーでメロウになった「♪ウンガラガッタ」のフレーズが面白かったです)と、「もうすっかり秋だけど、ここは何故だか夏キブン!」と“おんな”の艶めかしい歌とビートを響かせて、怒髪天のTシャツを着たお客さんからスーツ姿のビジネスマンまで観客の腰を豪快にくねらせていくのであった。
その後も“What’s Goin’On”“ミラクルズ”と緩急それぞれの楽曲をテンポよく披露していく4人。「ヘイ、エヴリバディ!」「渋谷、踊ろうぜー!」というコヤマのキレのいい掛け声や、3人のソロ・リレーを間髪入れずに繰り出しながら、場内をゴージャスに染め上げていくライヴ手腕はさすが。その一方で、心にじんわり沁み入る歌とメロディーによって、なだらかな上昇気流が描かれていくメロウ・チューンの柔らかな空気感もいい。中でも印象的だったのは、「ありがとう渋谷! ここに足を運んでくれた皆のタイムアンドマネー アンドソウルに感謝! 呼んでくれた怒髪天にも感謝します。次は、今日集ったすべてのソウルに捧げるナンバーです」と放たれた“最終列車”。ソウルフルな歌声と繊細なアンサンブルに場内全体が酔いしれ、演奏後に温かな拍手がいつまでも鳴り響いたシーンには、スクービーならではの濃密なエモーションが見て取れた。
その後は“トラウマティック・ガール”の極太ファンクから、クライマックスへ向けてノンストップのダンス・タイム! 「床が抜けちゃうぐらい飛び跳ねちゃってくれー!」というコヤ マの扇動によって再び火を点けられたオーディエンスのダンス熱は、続く“Back On”のトロピカルなリズムで沸点へと到達する。さらにマツキ タイジロウ(G)の清冽なギター・サウンドが降り注いだ“夕焼けのメロディー”を経て、フリーキーなリフとビートが縦横無尽に飛び交うラスト・チューンへ! 「今日すげ え楽しかったぞ! これからも大好きなロックンロールをやり続けような! 最後、皆で勇気を出してバカになれー!!」というコヤマのシャウトに乗せて、ミラーボールの煌びやかな光で照らされたフロアは大きな狂騒空間に包まれた。
「SCOOBIE DOはライブ・チャンプだから、並みのバンドじゃ対抗できない。だから我々も死力を振り絞って、やっとこさ3曲やりました」とか「あの“おんな”っていう曲。俺らがやったら『♪おっさんっていいな』っていう歌詞になるね」とか、噺家も真っ青の語り口で爆笑を巻き起こしていく増子兄ぃのトークは今夜も絶好調。そこでイイ感じに温められた場内の空気は、“押忍讃歌”からのアップ・チューン3連打でさらに上昇。《こんな日本に誰がした》(“労働CALLING”)とか《息する事さえ面倒くさいけど 死ぬのもコレまたクソ面倒くせェ》(“愚堕落”)といったネガと悲哀が剥き出しの歌詞が、ザクザクと突き進むサウンドによってポジティヴなエネルギーに変わっていくさまが本当に痛快だ。続く“杉並浮浪雲”“歩きつづけるかぎり”の連打では、「たとえ報われなくても、生きていることそのものが美しい」というメッセージをストレートに解き放ち、クアトロを眩い光で満たしてしまった4人。《鳴かぬなら 俺は自分で鳴く》というフレーズに大シンガロングが沸き起こった“ホトトギ ス”に至るまで、怒髪天が全身全霊を傾けて鳴らすロックンロールが、このどうしようもない現実を生き抜くための発奮剤としてオーディエンス一人一人の心に作用していることがよくわかる、感動的なセクションだった。
最後は「生きてまた会おうぜー!」という言葉を残してステージを去った増子。その言葉が象徴するように、「生きること」の尊さを全力で見せつけるような気迫溢れるアクトだった。尽きることない闘争心とド根性魂を熱く燃え上がらせることで、至上の歓喜を生み出す40代男の人生讃歌。そこには、聴く者すべてをポジティヴな未来へと導く凄まじいパワーが宿っている。その証拠に、終演を伝えるアナウンスが流れても、場内に鳴り響き大きな拍手がしばらく止むことなかった。(齋藤美穂)
1.情熱ストレート
2.俺達は明日を撃つ!
3.オレとオマエ
4.押忍讃歌
5.労働CALLING
6.愚堕落
7.杉並浮浪雲
8.歩きつづけるかぎり
9.ホトトギス
10.NO MUSIC NO LIFE
11.喰うために働いて 生きるために唄え!
12.オトナノススメ
13.美学