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    きゃりーぱみゅぱみゅ@日本武道館

    きゃりーぱみゅぱみゅ@日本武道館 - pics by 上飯坂一pics by 上飯坂一
    『ドキドキワクワクぱみゅぱみゅレボリューションランド2012 in キラキラ武道館』

    モデルとしてシンガーとしてタレントとして、さらには原宿カワイイ大使、最近ではクラブDJ等々、国内外をまたにかけた、もしかしたら今一番広い守備範囲で動き回っている人ではないかとさえ思える、フルネームで言うと“きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ”略して“きゃりーぱみゅぱみゅ”。そんな彼女の初の日本武道館公演というわけで、集まったオーディエンスは実に種々雑多。原宿ファッションの女子ももちろん多いが、一見普通の男子・女子、クラブ音楽好みのやや年齢上の若者、そして子供にせがまれて来たであろう親子連れなど(ほとんどのお子さんはしっかりときゃりーのコスプレ)、これまたジャンルや世代を超越しているところに、彼女の人気ぶりを実感する。ちなみに、この日のライヴタイトルは「ドキドキワクワクぱみゅぱみゅレボリューションランド2012 in キラキラ武道館」という、夢見心地ワードを山盛りにしたもの。

    場内に入ると、ステージ上には絵によるいくつものカラフルなサーカス小屋が建っており(いわゆる書割ということです)、象や虎が何匹もそこかしこにたたずんでいるなど、開演前から早速、異次元空間に誘われる。オルゴールの調べによるBGMが流れる中、オーディエンスがそれぞれの色のペンライトを準備し始める姿や、あちこちで聞こえる子どもの歓声などからも、開演の瞬間に向けての期待感の高まりが伝わってくる。

    という、ドリーミーな雰囲気の中で始まったライヴだったのだが、最終的な印象はどちらかというと最初に想像していた非・日常空間みたいなものとはむしろ反対なところが面白いものでもあった。もちろんエンターテイメント性も充分な内容だったのだが、それよりとにかくきゃりーがよく歌った、よく踊った、というスポーティーな、もっというと体育会的なライヴ(汗こそあまりかいていないように見えましたが、あれはなにかしらの汗止め秘策があるはず)。スタートから終演までの約2時間、途中数回の着替えタイムこそあったものの、それ以外は武道館という大会場のオーディエンスに正々堂々立ち向かうべく、ほぼ間断無く次から次へと楽曲を繰り出してくる、そんなストレートさに貫かれたライヴだった。

    開演時刻ほぼちょうど、18時30分に場内がすっと暗くなり始め、場内が大歓声に包まれるや(ペンライトも一斉に点灯)、ライヴはアルバムのオープニングと同じく“ぱみゅぱみゅレボリューション”からスタート。まずはステージ両脇から一斉に“きゃりーキッズ”と称する8人の子どもダンサー達が現れ、キレッキレのダンスで会場を盛り立てる。そんな喧騒状態の中、アリーナ席にせり出したセンターステージの下から勢いよく飛び出してきたきゃりー。早速、客席の度肝を抜いたところで得意気な表情でメインステージへと走っていくのだが、そこから“おねだり44℃”でのライヴの一体感を想定した「キュキュキュキュ」コーラスで、冒頭のムードを一気に作っていく流れが実にスムーズ。続く“みんなのうた”では、彼女が「手~を上げて」と歌えば、みんなが手をあげ、「手~を開いて」と歌えば、みんなが開いて、「ぱんぱん、ぱんぱんぱん」と歌えば、みんながその通りにクラッピング大会に突入~と、曲そのものがライヴ~パーティーに直結した作りになっているので説明抜きで盛り上がる。ちなみに、登場時の彼女の衣装はふんわりしたパッチワークドレスで、自分もサーカスの動物になったという設定でバンビやキリンや豹やいろいろな動物の柄をあしらったもの。当人いわく「動物愛護団体の方々からフルボッコにされそうな」デザインでした。

    きゃりーぱみゅぱみゅ@日本武道館
    「こんばんは、きゃりーぱみゅぱみゅです! おこしいただきましてありがとうございます。こんなにもたくさんの人が見つめている場所は初めてで緊張しますが、みんなで楽しみたいと思います!」と、まずは元気いっぱいの挨拶を聞かせるきゃりー。そこからの彼女の説明によると、この日のテーマは「飛び出す絵本」とのこと。なるほどそう言われて見れば、ステージセットもデザインこそ派手だが、サーカス小屋といい動物たちといい、ほとんどが板張りで作られた装飾は実に手作り感の溢れる素朴なもの。実際その後の展開においても、例えばレーザーとかCG画像とか、ハイテクな演出はほとんど無かったのが今時のアリーナライヴらしくないところで、じゃあ何があったのかというと、きゃりーがキッズダンサーたちと懸命に踊って歌うという、人間力そのものがあったわけなのだ。中盤でラベンダー色の妖精コスチューム(羽付き)で登場し、ワイアーで宙吊りになりながら“RGB”(capsuleのカヴァー)を歌い、同時に大量の「妖精の粉」を振り撒くなどの凝った演出を見せる場面もあったが、それとて手法としては古くからあるもの。時代の寵児であるかのようなイメージとは反対にアナログ感重視の手法で、つまりカラダを張ってステージに挑んでいく姿が逞しいライヴだった。

    そして、どちらかというと彼女のイメージではないセンチメンタルな楽曲が、前半に続けざまに登場したのも印象的なメニューだった。例えば、彼女に象徴される一見派手めな印象の若者たちも、実は心の奥底に寂しさややるせなさを潜ませていることを歌った“スキすぎてキレそう”。そしていじらしいラヴソング“ピンポンがなんない”など、どの曲もダンサブルながらメロディーの切なさをしっかりと聴かせるステージ運びで、歌詞のテーマをまっすぐに伝えていた姿も多くの人の胸に強く残ったのではないかと思う。

    きゃりーぱみゅぱみゅ@日本武道館
    本編最後の着替えではピエロの衣装で登場した彼女(蛍光色の黄色ストライプとピンクドット柄のサロペット)。あの衣装が動きやすいものなのか、そうでないのかは最早よくわからないのですが、終盤もとにかく踊って歌うきゃりー。“きゃりーANAN”では「アンアンアアンアン」のリピートコーラスで場内を満たし、間奏のソロではエアギターにエア笛に大忙し。そして本編最終曲“ちゃんちゃかちゃんちゃん”では、アッパーな曲調の中にも切実な声で何度も「ありがとうございました。」と繰り返していた彼女。のんびりした瞬間はほとんど無いまま一気に最後まで突き進んだライヴは、夢見心地というよりむしろ爽やかな疾走感が胸に残る、やり切った感こそが主役のステージだったと思う。

    アンコールでは、スクリーンに突如、「SMAP×SMAP」で稲垣吾郎が扮するごりーぱみゅぱみゅが写し出され、「今日のステージを乗っ取ってやる!」と宣言して乱入してくるも、きゃりーに優しく諭されてそのまま仲良く一緒に踊るシーンも。そして最後の最後にはヒット曲“つけまつける”で場内一体となって歌って踊るという大団円で、ステージは幕となった。

    なお、アンコール前に画面に流れた情報によると、彼女は来年2月にフランス・ベルギーなどを含むワールド・ツアーをワンマンで行なうことが決定。日本でも3月にZeppツアーを全国5会場で9公演を行うことが発表されるなど、来年もまだまだこの旋風は止まりそうもない気配です。年末には「COUNTDOWN JAPAN 12/13」の12月28日(金)に出演。(小池清彦)

    セットリスト

    1 ぱみゅぱみゅレボリューション
    2 おねだり44℃
    3 みんなのうた
    4 100%のじぶんに
    5 スキすぎてキレそう(Short ver.)
    6 チェリーボンボン
    7 ピンポンがなんない
    8 ちょうどいいの
    9 CANDY CANDY
    10 きゃりーのマーチ
    11 キミに100パーセント
    12 ぎりぎりセーフ
    13 おやすみ
    14 RGB
    15 ファッションモンスター
    16 PON PON PON
    17 でもでもまだまだ(Short ver.)
    18 きゃりーANAN
    19 ちゃんちゃかちゃんちゃん
    <アンコール>
    20  CANDY CANDY with ごりーぱみゅぱみゅ
    21 つけまつける
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