『electraglide 2012』 @ 幕張メッセ国際展示場ホール9・10・11

11月23日(土)に千葉・幕張メッセ、そして明日(もう今日ですが)大阪ATCホールで、3年ぶりに開催となった(大阪は「なる」ですが)beatinkプレゼンツの大型屋内レイヴ『electraglide 2012』。スタートは2000年で、2005年まで続いたがそこで途切れ、2009年にWARPの20周年にちなんで4年ぶりに開催され、それから3年のインターバルを経て今回の開催、というわけですが、そこらへんの事情とか、それぞれの年に誰が出たとかは、その前回=2009年の時にここで書いたので、そちらをご参照ください。http://ro69.jp/live/detail/27861

さて。この『electraglide』、2005年以前は「今年はこの人がメインです!」みたいなわかりやすいアクトがあったが(アンダーワールドとかファットボーイ・スリムとかまたアンダーワールドとか、クラフトワークとかプロディジーとかまたまたアンダーワールドとか)、2009年に復活した時は、そういうイベントではなくなっていた。WARPの20周年と組んだ、という事情もあったと思うが、「そこまででかい存在はいないけど、いいアーティストいっぱい出ます」みたいな感じになっていた。で、どうだったかというと、めちゃめちゃすばらしかったし、楽しかった。「あ、これでいいんだ」と、素直に納得した。なので、今回も、最初の発表がフォーテットだったりして地味っちゃあ地味だったが(って失礼ですね。すみません)、「でもいいよ、絶対楽しいから俺は行くよ」と思っていた。が、いざ開催となってみると、「これ、わかりやすいアイコンはいないけど、実はかなり豪華じゃないか?」というメンツになっていました。こんな感じです。

HALL 9
21;30-22:40 KODE9
22:45-23:55 AMON TOBIN ISAM
00:00-01:00 DJ KRUSH
01:05-02:15 SQUAREPUSHER
02:25-03:15 TNIGHT(HUDSON MOHAWKE×LUNICE)
03:30-04:40 FLYING LOTUS
04:45-06:05 MARK PRITCHARD B2B TOM MIDDLETON

HALL 11
21:00-22:00 TAKAGI MASAKATSU
22:05-23:05 NATHAN FAKE
23:10-00:10 DJ KENTARO
00:15-01:15 DENKI GROOVE
01:20-02:30 FOUR TET
02:35-03:45 ORBITAL
03:50-05:20 ANDREW WEATHERALL

ね、豪華でしょ。なお、個人的なベスト・アクトは、以下のふたつでした。
まず、アモン・トビン。既にロッキング・オン編集部ブログで羽鳥も書いているが、あまりにもすごかった。私、初めて生で観たんだけど、いいとかすばらしいとかを超えて、ショックでした、もう。音とプロジェクション・マッピングの映像が完全にシンクロしているステージ。というのは、3年前のエレグラに出ていたクリス・カニンガムもそうだし、他にもそういうことをやる人はいっぱいいるが、そのシンクロのしかたが「何これ!?」「こんなのあり!?」なのです。しかも、全曲違う。つまり、1曲1曲、いちいち全部が「何これ!?」「こんなのあり!?」。ステージには、白いキューブを積み上げた要塞みたいなセットが建っていて、それがいわゆるスクリーンの役割を果たしており、そこに映像が映る。で、その要塞のまんなかへんの大きなキューブの中に本人がいるんだけど、その姿はたまにしか見えない。そんなステージの上で、さっき書いたような、1曲1曲、「何これ!?」「こんなのあり!?」な映像世界と、音世界が繰り広げられていく。という説明で、どんなふうにすごいかが、わかったでしょうか。わからないでしょう。私もさっきから「ああこれ全然説明できてねえ」って思いでいっぱいになりながら書いているので。映像作品出ているし、ネットとかにも転がってるので、それを観ればある程度はわかっていただけると思います。ぜひ観てみてください。ただ、生で観ないとわからないところも相当あるパフォーマンスだとも思うので、次に機会があったらぜひ観ていただきたい、とも思います。びっくりします、とにかく。
最後、音が止まって照明がついて、本人がいっぺん前に出てきてあいさつしたあと、アンコールっぽくさらに2曲やったんだけど、その2曲目の時の映像、特にすごかった。キューブが、がーって崩れて、まっくろくろすけみたいにばーって走り去って、そしてどわーって戻ってくるのです。で、回るのです。なんのことかわからないって、だから。でも、唖然としました。

そして、もうひとつは電気グルーヴ。って、別にここじゃなくても観れるじゃん、って話であって、実際、私、今年彼らのライヴを観るのはこれで4回目でしたが、にもかかわらず、異常によかった。最新シングルの「SHAMEFUL」「SHAME」と、「ガリガリ君」「キラーポマト」「Shangri-La」「スコーピオン」などなどの電気クラシックスたちを2012バージョンにリアレンジした曲たち、いずれも完璧。つくづく、今の電気のライヴ、すばらしいと思う。超満員のフロア、もうどこまでもどこまでも歓喜に向かってまっしぐら、みたいな熱狂ぶりでした。
というか、そもそも「エレグラに電気が出る」ということ自体に、ある種の感慨を持ってしまうところがある。WIREが始まったのが確か1999年、エレグラが2000年、当時はどちらも国内ではまだめずらしかった大型屋内レイヴであって、ゆえに「敵」とまではいかないが、ちょっとライバルっぽい感じがあったのです。ご本人たちはそんなこと思ってなかったかもしれないが、スタート時から両方に遊びに行っていた僕は、そんなふうに捉えていた。その電気が、メッセで、エレグラで、こんなにすばらしいステージをやっている。というような思いも手伝って、さらにぐっときた、というのもありました。

そのあと、オービタルのバキバキでなんだけどなんか懐かしい、音がどこか80年代っぽい(正確にはデビューは1990年なんだけど)、そしてそこが大変にすばらしく愛おしいステージを、「復活してよかったよかった」とか思いながら観ていて、ふと「あれ? 活動終了した時のラスト・ライヴって日本じゃなかったっけ? 俺、観た気がする」と思い出した。調べてみたら、それ、WIREでした。2004年。そうか、そういう縁もあるんですね。さらに感慨深いものがあります。
それから、アンディ・ウェザオールの、無骨で直球なテクノ、映像なし、演出は飛び交うレーザーとライトのみ、というDJも、朝方だったのも含めて、とてもよかった。何か、「ああ、こういうものだよなあ」と、しみじみと思いました、踊りながら。

ただし。今回もつくづく「これ、いいイベントだなあ」と思ったが、それは、ここまで書いたような、それぞれのアクトの充実ぶりとは、実はあんまり関係ない気がする。いや、関係なくはないか。なくはないんだけど、そのアクトそれぞれのステージがすばらしいからいいイベントだった、というだけではないものを感じる一夜だった。「アクトがいいから来た」のではなく「エレグラだから来た」人たちによって会場が埋まっていて(ほんとにしっかり入っていた)、個々それぞれが発するこのイベントへの信頼感が、幕張メッセの9・10・11ホールのあの広いスペースに満ち満ちているようで、だからこっちもホールに足を踏み入れた瞬間に、「ああ、これこれ、この感じこの感じ」と、うれしくなるような。そんな空気だったのです。
電気やオービタルはわかるけど、スクエアプッシャーもわかるけど、たとえばフォーテットやフライング・ロータスのようなアクトを、10,000人くらいの人が観ている、しかもすんごい真剣にステージに神経を注いでいる、という光景、少なくとも日本においては、他の場所ではありえないと思う。で、それ、本当にすばらしいことだと思う。

エレグラ、明日は(もう今日か)大阪です。アモンや電気など、大阪は出ないアクトもいますが、最も大事な、「エレグラの空気」は、間違いなく明日の大阪ATCにもあると思います。関西のみなさん、ぜひ。詳しくはこちら。http://www.electraglide.info/(兵庫慎司)
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