桑田佳祐 @ 横浜アリーナ

桑田佳祐 @ 横浜アリーナ - 写真は12月31日のカウントダウンライヴ写真は12月31日のカウントダウンライヴ
いやあ、すごい。歌舞伎調の「弁天小僧、桑田佳祐たぁ、俺のことだ!」という陰アナの口上とともに開演早々飛び出した“悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)”から、3時間以上にわたるアクトの隅々にまで歌心とサービス精神と祈りと祝祭が凝縮された、最高のステージ。全国ツアーとしては実に5年ぶりとなる今回の10都市・22公演のツアー『docomo presents 桑田佳祐 LIVE TOUR 2012 I LOVE YOU -now & forever-』を、昨年の震災復興支援ライブ『宮城ライブ~明日へのマーチ!!~』の開催地でもある宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(9月15日/16日)から3ヵ月にわたってサーキットしてきた桑田佳祐。そのツアーのラストを飾るのが、12月27日/28日/30日/31日(年越し公演)と4日間にわたって行われた横浜アリーナ公演。ここでレポートするのはその初日:27日の公演であり、新年カウントダウンの瞬間を分かち合う独特のスペシャル感こそないものの、桑田が歌う1曲1曲が力強く「今」と「明日」を祝い尽くしていく、どこまでもスペシャルでエモーショナルな一夜だった。

今年7月にリリースされたスペシャル・ベスト・アルバム=『I LOVE YOU -now & forever-』を引っ提げてのツアーということで、“いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)”あり“真夜中のダンディー”あり、ブルース・サイドの結晶たる“東京”“月”あり、もちろん“白い恋人達”や“波乗りジョニー”もあり、さらに“幸せのラストダンス”をはじめ2012年の楽曲もあり……といった具合の、25年に及ぶ桑田ソロ・ワークスの集大成的な下記のセットリストだけでも、ライブを見ていない方でもガッと体温が上がること必至のポップ過積載ぶりだ。が、やはり素晴らしかったのは、何よりひとつひとつの歌を「届ける」「心に響かせる」ことにすべてを捧げていく桑田の姿であり、斎藤誠(G・Cho)・河村“カースケ”智康(Dr)をはじめ鍵盤/ブラス/ヴァイオリン/コーラスまで辣腕プレイヤー揃いの大編成バンドと一丸となって横浜アリーナをびりびりと震わせていくヴォーカリゼーションの力だった。そこに、ステージ背後のスクリーン&左右のヴィジョンを使った映像効果や火の玉などの特効や水着ダンサーが加わり、時にバンド・メンバーまで加わってのコミカルな演出が加わり、極上のワンダーランドが生まれていくのである。

自らの食道ガンの治療のため前ツアー『桑田佳祐 LIVE TOUR 2010 全国への階段 〜Stairway to Nippon〜』をキャンセルせざるを得なかったこと。そして、2011年3月の東日本大震災を経て、宮城での復興支援ライブを自らのライブ復帰の場所に選んだこと……彼にまつわるそれらすべての記憶と感慨が、5年ぶりの全国ツアーで日本のトップ・オブ・ザ・ポップとしてのダイナミズムを堂々と発揮しているまさに今この瞬間の歌の感激と一緒になって、客席を包み込んでいく。そんなオーディエンスの高揚感を、「こんばんは! 鳳啓助でございます。知らねえか(笑)。帰ってきました! ただいま!」と軽妙なMCでかき混ぜていく桑田。中盤では「大好きだったお酒もタバコもやめまして。飲みに誘ってもらうこともなくなって。音楽だけが友達、健康志向。でも朝勃ちもするんだよ? 少し(笑)」といった話から、バンド・メンバー紹介を挟んで「夫婦で来た人!」「最近結婚した夫婦!」と客席に挙手を呼びかけ、近々挙式するという夫婦を見つけるとすぐさまカメラを向け「お名前は?」「(お互いの)どんなところが好き?」など矢継ぎ早に質問を繰り出し(それを逐一ホワイトボードに列記し)、挙げ句に桑田が牧師となって横浜アリーナを2人の「簡易結婚式」会場へと変え、2人のキッスをオーディエンス全員で祝福して、そのまま“幸せのラストダンス”で《新しい人生を始めよう 共に》と高らかに歌ってみせるのである。惜しみない名曲連射だけでなく、とにかくオーディエンスの心を一瞬たりとも放さない、無欠のエンタテインメント空間がここにはあった。ヴィジョンに表示される歌詞テロップも、長年のファンだろうと今日初めて来た人だろうと全開放的に楽しませる彼のマインドの象徴と言える。

聴く者すべての望郷の念を揺さぶった“明日へのマーチ”。亡き人を想う気持ちを《また生まれ変わって僕と踊ろうよ》という至上の言葉とメロディに託した“愛しい人へ捧ぐ歌”。特に最近の桑田の、「今を生きること」へより鮮明にフォーカスを合わせた歌には、触れるだけで魂を熱くさせるようなヴァイブが宿っている。僕らの「大事なこと」を、ありったけの輝度をもって鳴らしていくーーそれこそが、ミュージシャンとして/表現者として震災以降の日本と向き合った彼の、あまりにも根源的な命題だったのだろう。それによって、彼のメロディはさらにエヴァーグリーンな訴求力を増していく。そんな究極のサイクルが、ここ横浜アリーナの舞台で最大限のきらめきをもって解き放たれ、大観衆の胸を打つ。

中原中也/太宰治/芥川龍之介など文豪の傑作を稀代のロック・オペラに編み上げた“声に出して歌いたい日本文学〈Medley〉”から“現代東京奇譚”、さらに“白い恋人達”へ——と本編後半は(演出等を挟みつつ)ノンストップで楽曲を畳み掛けていく。オーディエンスが一丸となって拳を突き上げてみせた“Let's try again 〜kuwata keisuke ver.〜”の壮大な風景の中、《ニッポンの元気な未来へ/みんなで立ち上がれ/Let's try again!!》という最後のフレーズから「元気出していこう!」と“YOUNG MAN(Y.M.C.A.)”へと突入し、途中「Y! M!」から「O!」と続けたところで演奏がYMOの“ライディーン”に変わり、さらに「Y! A! Z! A! W! A!」で矢沢永吉“止まらないHa〜Ha”、「Y! U! M! I! N! G!」でユーミン“恋人がサンタクロース”へ……という大ネタが生み出す超高気圧的な開放感を、そのまま“波乗りジョニー”へジャック・イン! そして、ステージ上のスクリーンに写し出された『ちびまる子ちゃん』の映像とともに大きな歓喜を花開かせた“100万年の幸せ!!”。本編だけでたっぷり2時間半のステージを終え、「ちょっと水飲んでくるから待っててね!」と桑田&メンバーは一時退場。アンコールを求めるオーディエンスの想いが、客席のあちこちででっかいウェーブを巻き起こしていく。

アンコールではいきなりゴージャス&パワフルな新曲“涙をぶっとばせ!!”をドロップして会場の温度をさらに上げてみせ、10年経った今ますますその凄味を増した反骨のナンバー“ROCK AND ROLL HERO”へ雪崩れ込む。桑田の独唱とギターから始まった“可愛いミーナ”に合わせて、客席から沸き上がる合唱の声。名バラード“月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)”の《巨大(おおき)な陽》を日の丸とオーバーラップさせてみせた映像から滲む、この国の「今」への切実な願い。観客への感謝の想いをこめて深々と、長々と一礼する桑田。最後、大所帯のコーラス隊とともに歌い上げた“明日晴れるかな”が、この場に集まった者すべての希望そのもののようにあたたかく、優しく響き渡った。すべての音が止み、祭り提灯で彩られたステージにメンバーが整列、会場全体の一本締めで大団円。「お前が言うなって言われるかもしれないけど、健康でいてくださいね」と、桑田はこの日のMCで繰り返しオーディエンスに語りかけていた。ユーモアもエロスも全部引っ括めて無上の生命讃歌を響かせてみせた彼が覗かせる「生」への飾りなき想いが、むせ返るような会場の多幸感とともにいつまでも熱く胸に残った。

なお、WOWOWで生中継された31日年越しライブの模様は1月13日(日)17:00から再放送が決定。加えて、このツアーのライブ&ドキュメント映像作品『桑田佳祐 LIVE TOUR & DOCUMENT FILM 「I LOVE YOU -now & forever-」完全盤』(DVD・Blu-ray)とトリプルA面の新作シングル『涙をぶっとばせ!!』(他2曲タイトルは後日追加発表)を3月13日に同時発売するし、さらには2月13日にリニューアルされるサッポロビールのノンアルコール ビールテイスト飲料「サッポロ プレミアムアルコールフリー」の新CMキャラクターとして1月2日からTVに登場するし……2013年開幕早々ド派手な号砲のように押し寄せる彼の姿と音楽が、どこまでも痛快だし、嬉しい。あのライブの余韻が未だ冷めない中、今年もグウの音も出ないほどに僕らを楽しませてほしい!と元旦から願わずにいられない。(高橋智樹)


[SET LIST]

01.悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)
02.今でも君を愛してる
03.いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)
04.本当は怖い愛とロマンス
05.MY LITTLE HOMETOWN
06.真夜中のダンディー
07.東京
08.月
09.幸せのラストダンス
10.明日へのマーチ
11.愛しい人に捧ぐ歌
12.声に出して歌いたい日本文学〈Medley〉
13.現代東京奇譚
14.白い恋人達
15.ダーリン
16.銀河の星屑
17.Let's try again 〜kuwata keisuke ver.〜
18.波乗りジョニー
19.100万年の幸せ!!

Encore
20.涙をぶっとばせ!!
21.ROCK AND ROLL HERO
22.可愛いミーナ
23.祭りのあと
24.月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)
25.明日晴れるかな
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