「すごい緊張してます。憧れのフラカンと対バンできて。でも、ただ対バンしに来ただけじゃなくて。今日はフラカンに勝ちに来ました!」という尾崎世界観(Vo/G)の決意表明に、フロアから沸き起こる大歓声! その言葉通り「勝ちに行く」という気合に満ちた両者のライヴ合戦から、一瞬たりとも目が離せない一夜だった。クリープハイプが主催する対バン企画「ストリップ歌小屋」。ゲストに迎え撃つのは、かねてから彼らが大ファンだと公言するフラワーカンパニーズ。イベントタイトルと花魁の浮世絵がプリントされたバックドロップを掲げたステージを前に、フロアには開演前からムンムンとした熱気が立ち込めている。開演時刻を少し回った19時7分。SEに乗って現れたのは先攻・フラワーカンパニーズ。「どうも、フラワーカンパニーズです!」という鈴木圭介(Vo)の挨拶から雪崩れ込んだのは、いきなりの名曲バラード“深夜高速”。イントロで沸き起こった「おおっ!」というどよめきを制するように、ミスター小西(Dr)&グレートマエカワ(B)が刻む重たいビートと、竹安堅一(G)が奏でる哀愁漂うギターフレーズが鳴り響く。続く“はぐれ者讃歌”“煮込んでロック”の連打でフロアを燃え上がらせたところで、最初のMCタイムへ。「今日は誘ってくれてありがとう。ストリップ歌小屋へようこそ。もうストリップは始まってますよ! 彼はズボンしか履いてません‼」(圭介)と指をさされるのは、もちろん地肌にオーバーオール1枚というお馴染みのステージ衣装を着たグレートマエカワである。昨年10月にアルバム『ハッピーエンド』を発表し、現在もリリース・ツアー真っ只中のフラカン。“チェスト”で幕を開けた中盤では、そんな最新アルバムの楽曲が立て続けに披露されていく。≪恥ずかしい話ですが≫という前置きから「うだつの上がらない俺」の実態が淡々と吐露される“SO LIFE”、≪ロックンロールは続いてく≫という熱のこもった歌声がまっすぐ届けられる“ロックンロール”、そして、≪ただ人間と名乗っているだけで≫≪何にもできない肉のクズ≫と己の無力さを罵るような言葉を経て、≪ああ ロックンロールを鳴らしておくれ≫という祈りにも似た叫びに帰結する“エンドロール”。そのどれもが、一気に臨界点へと到達するようなフラカンならではのアップ・チューンとは一線を画したシリアスなナンバーだが、そこに宿るすさまじい熱量、すさまじい切実さ、すさまじい説得力に驚かされる。1月23日にリリースされたばかりの最新シングル“ビューティフルドリーマー”の、風にたゆたうような牧歌的な響きもよかった。歓喜の渦へと瞬時に引きずり込むような派手さや攻撃性はないけれど、こういったタイプの楽曲こそが圧倒的にリアルなメッセージになり得ているフラカンの今に、大きな頼もしさを感じずにはいられない。4月21日@日比谷野外音楽堂のツアー・ファイナル、3月20日のライヴ・アルバム発売の告知をした後は、クライマックスへ向けて猛ダッシュ! “脳内百景”“NUDE CORE ROCK’N’ROLL”の連打でタイトに引き締まったアンサンブルを猛然と走らせたところで「最後にもう1曲いけますかー? 盆踊りできるー!?」と放たれたのはキラー・チューン“真冬の盆踊り”。「ヨサホイヨサホイ、クリープハイプ!」「ヨサホイヨサホイ、ストリップ‼」と威勢のいい掛け声を場内に響かせて、今夜のホスト=クリープハイプに襷を繋いだ。そして20時28分。暗転とともにSEなしでフラリとステージに現れた、クリープハイプ。冒頭の尾崎の決意表明を経て、1曲目を飾ったのは“オレンジ”! この鉄壁のアンセムを冒頭に持ってくるあたりに、今夜の対バンにかける並々ならぬ気合いが感じられる。さらに最新シングル“おやすみ泣き声、さよなら歌姫”、“SHE IS FINE”と畳み掛け、フロアを大きく揺さぶっていく4人。時折うわずった声で届けられる尾崎のハイトーン・ヴォイスが、キラッキラのメロディと相まって、とてつもなくエモーショナルな情景を描いていく。「高校一年生のときに空けたピアスの穴がいまだにあって……」という前置きからスタートしたのは、“左耳”。≪左耳 知らなかった穴/覗いたら昔の女が居た≫という、日常に散りばめられた何気ないキーワードを切り口として大きな哀しみや喪失感を歌うクリープハイプならではの歌世界が堂々と展開されていく。さらに小川幸慈(G)の透明なギターソロが冴えわたった“蜂蜜と風呂場”、こんがらがった心情をヘヴィ&ラウドなサウンドに焼きつけた“ABCDC”、小泉拓(Dr)のダイナミックなビートが轟いた“バイト バイト バイト”と繋いで、尾崎と長谷川カオナシ(B)のツイン・ヴォーカルが繰り広げられる“グレーマンのせいにする”“火まつり”の連打へ。それまでのヒリヒリとした焦燥感をたたえた青白いサウンドから一転して、心地よい酩酊感を誘うグルーヴが渦を巻いていく。なによりすごいのは、どの曲でも弾けんばかりのクラップやハイジャンプが沸き起こっていたこと。独特の湿っぽさや哀愁をたたえたクリープハイプの歌が、ポップに開けたメロディによってオーディエンスをアッパーに躍動させていくさまは何度観ても快感である。そんなクリープハイプならではのマジックが、「大嫌い!」の連呼がフロアに歓喜の輪を生み出した“ウワノソラ”で炸裂! さらに“ウワノソラ”を全力で叩きつけ、「恥ずかしい話をしていいですか?」と尾崎が口を開いたMCが最高だった。そこで語られた話をまとめると、なんでも1月11日のライヴの打ち上げで泥酔した尾崎はひょんなことからドラムの拓に掴み合いの喧嘩を挑んだとのこと。それを「やっと見つけたメンバーを大事にしろ!」とスタッフに怒られた尾崎は、猛反省の末に大号泣し、メンバーと涙ながらに絆を深め合ったというのだ。そして「バンドって本当に面倒くさくてクソだなと思うんですけど、最高に楽しいです。これからも宜しくお願いします」という言葉から、“イノチミジカシコイセヨオトメ”“手と手”“愛の標識”とノンストップで駆け抜けて本編終了。どうしようもなく噴き上がる自己嫌悪やネガティヴィティを露にした歌とメロディが、この日最大級の熱狂を生み出したことは言うまでもない。アンコールでは、「なんか去年は『セックスのバンド』みたいになったから、2013年はあの曲はやりません」と尾崎。「えー!」という悲鳴が飛び交うフロアに、焦らすように放たれたのは勿論この曲、“HE IS MINE”。リキッドの天井を突き破るかのような「セックスしよう!」の絶叫でオーディエンスとひとつになると、再びステージ袖に下がってダブル・アンコールへ。最後は3月6日にリリースを控えたシングル“社会の窓”をプレイして、この日のステージを締めくくった。ちなみに「今回はリリース直前まで音源を公開しません」という前説とともに披露されたこの曲は、どしゃめしゃなビートとうねるベースライン、そしてマシンガンのように放たれる尾崎の高速リリックがせめぎ合うスリリングな楽曲。クリープハイプの真骨頂とも言える煌びやかなメロディに彩られた1stシングル“おやすみ泣き声、さよなら歌姫”とは180度ベクトルの違うこの曲を2ndシングルとして発表するところを見る限り、2013年もクリープハイプの快進撃は続いていきそうだ。(齋藤美穂)
セットリスト
フラワーカンパニーズ
1. 深夜高速
2. はぐれ者讃歌
3. 煮込んでロック
4. チェスト
5. SO LIFE
6. ロックンロール
7. ビューティフルドリーマー
8. 吐きたくなるほど愛されたい
9. エンドロール
10. 脳内百景
11. NUDE CORE ROCK’N’ROLL
12. 真冬の盆踊りクリープハイプ
1. オレンジ
2. おやすみ泣き声、さよなら歌姫
3. SHE IS FINE
4. 左耳
5. 蜂蜜と風呂場
6. ABCDC
7. バイト バイト バイト
8. グレーマンのせいにする
9. 火まつり
10. ウワノソラ
11. 身も蓋もない水槽
12. イノチミジカシコイセヨオトメ
13. 手と手
14. 愛の標識
アンコール1
15. HE IS MINE
アンコール 2
16. 社会の窓
クリープハイプ @ LIQUIDROOM ebisu ゲスト:フラワーカンパニーズ
2013.01.31 17:30