イェーセイヤー @ 代官山UNIT

イェーセイヤー @ 代官山UNIT - Photo:Takayuki MishimaPhoto:Takayuki Mishima
イェーセイヤー @ 代官山UNIT
2010年のフジ・ロックのステージが半ば伝説化しているバンドだけにもっと来日しているような気に勝手になっていたが、イェーセイヤーにとって実は今回が初めての単独来日、しかも東京で一回きりのショウというプレミアな一夜になったのが昨夜の代官山UNIT公演である。加えて昨夜のUNIT公演は、最新作『フレグラント・ワールド』(2012)を引っ提げての彼らの最新ワールドツアーの最終日でもあった。だからだろうか、クリス達のモードもかぎりなくハイな打ち上げテンションで、イェーセイヤー固有のサイケデリックやヒッピーライクなファンクといった陽性のグルーヴが、いつも以上にオープンに解放されていたように感じた。苗場の磁場が持つエネルギー&物語とシンクロして何やらとんでもない秘境の儀式じみた興奮を呼び起こしたのが3年前のフジ・ロックのステージだったとしたら、今回の彼らのステージはもっとずっとストレートで、そして等身大だった。UNITという小さな密室の効果もあったと思うのだが、彼らのグルーヴが直接自分の身体にアクセスしてくる感じが段違いだったのだ。

イェーセイヤー @ 代官山UNIT
セットリストは『フレグラント・ワールド』からのナンバーを中心に“Blue Paper”で幕を開けた。「Good Evening Tokyo」のフレーズがサンプリングされたイントロに乗ってポリフォニックで昂揚感に満ちたイェーセイヤー・ワールドが一気に広がっていく。続く“Henrietta”は一転してダビーでダーク、そのコントラストも鮮やかだ。「ハロートーキョー!次は古い曲だよ」とクリスが言って始まったのは彼らの最初期のナンバー“2080”だ。2007年当時、この曲の持つファンクネスがNYブルックリン発のインディ・シーンの熱気を象徴していたことを思い出させてくれる。“2080”のグルーヴに乗って身体が勝手に動き出す。当時はフリーキーだと感じていたこのグルーヴが今ではすっかりスタンダードになっているのを確認できた。

イェーセイヤー @ 代官山UNIT
ポリフォニック、ダブ、ファンクとオープニングから様々な種類のグルーヴとビートを繰り出していくイェーセイヤーだが、その後もバラエティは増していく一方だ。プリンスばりのセクシーなソウル“Longevity”、ディスコテック×アフロ・ポップでアゲアゲなピークタイムを演出した“O.N.E”と前半から容赦なく祝祭ムードを加速させていく。先日HOSTESS CLUB WEEKENDERで観たヴァンパイア・ウィークエンドにも感じたことだけれども、彼らのような2000年代後半にサイケデリックでアフロな前衛を鳴らし始めたバンド達の音が数年の歳月を経てめちゃくちゃシンプルに、スタンダードに、そしてポップに聞こえるようになったのがこの2010年代なのである。

クリス、アナンド、アイラの3パート・コーラスも最高だ。というかリズムやグルーヴのユニークさ、そして演奏技術ばかりが目立って見逃されがちだけれども、この人達は歌も十分に上手い。特にアナンドのソウルフルなファルセットはメジャー級のAORでも通用しそうな色艶である。そう、「歌が上手い」なんていう身も蓋もなくシンプルな感想に今更行きつくぐらい、今夜の彼らのパフォーマンスはオープンでわかりやすかったのだ。

イェーセイヤー @ 代官山UNIT
「初めての東京のライヴで興奮してるよ。フジで日本に来た時東京で少し遊んで大好きな街になったね。東京はほんと大好きだよ、美しい、最高の街だね」とクリスがまくしたてる。彼らはショウの最中に何度も「トーキョーサイコー!」と言っていたが、どうやら本当にこの街が気に入ったみたいだ。後半は再びファンキーなナンバーが続きクライマックスに向けてフロアの熱気も過熱してくる。本編ラストはイェーセイヤーのライヴでまさかのシンガロングが巻き起こるという、祭りのフィナーレに相応しい盛り上がりを記録した“Ambling Alp”だ。そしてアンコール・ラストはまさに今の季節にぴったりな“Wait For The Summer”。ラテンギターの弦の軋みも最高に生っぽく冴えわたるナンバーで、祭りの最後をぎゅっとタイトに〆るという構成も素晴らしかった。(粉川しの)

[SET LIST]
Blue Paper
Henrietta
2080
Longevity
O.N.E.
Don't Come Close
Madder Red
Demon Road
Fork Hero Shtick
Regan's Skelton
Ambling Alp
(encore)
Devil & The Deed
Fingers Never Bleed
Tight Rope
Wait For The Summer
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