大江慎也/向井秀徳アコースティック&エレクトリック @ 新宿LOFT

大江慎也/向井秀徳アコースティック&エレクトリック @ 新宿LOFT - PHOTO BY 大参久人PHOTO BY 大参久人
『SHINJUKU LOFT 14TH ANNIVERSARY LOFT×ROOFTOP presents “APRIL FOOL FOR YOU”』

身の震えが止まらなかった。新宿LOFTの移転14周年を記念するイヴェントで、エイプリル・フールに大江慎也と向井秀徳アコースティック&エレクトリックが相見えるという、それこそ嘘なんじゃないかという企画。ロック言語の、現代型マエストロとレジェンドによる極限対決と言ってもいいだろう。公演タイトルは『APRIL FOOL FOR YOU』で、もちろんザ・ルースターズの名曲に引っ掛けてある。最高だ。

大江慎也/向井秀徳アコースティック&エレクトリック @ 新宿LOFT
先行するのは向井アコエレ。今回は比較的、ナンバーガール時代のレパートリーを多く取り入れた選曲になっていて、さっそく“SENTIMENTAL GIRL'S VIOLENT JOKE”のグランジ色の強いゴリゴリのギター・リフとシリアスな情景を伝える歌によって緊迫感の中に叩き込んでくれるのだが、今回の対バンではこれぐらいタイトなムードの方がしっくり来る。「MATSURI STUDIOからMATSURI SESSIONを、ふんばりあがって、ふぬりあがって、しめじりあがってやって参りました、ジス・イズ・向井秀徳!」とお馴染みの口上にフロアが湧き、今度はZAZEN BOYSから“Water Front”だ。アコエレのレパートリーである“SAKANA”は、「ン! ハッ!」と奇天烈なギター・リフをループさせ、サウンドを上塗りしながら届けられていった。“TATOOあり”に続いては、「新宿3丁目を歩いているときに気付きました。ちょうど、風が冷たくなってきたなあっちゅうときにですね、そう、鉄のような鋭い風が吹いて……」と歓声を誘いながら“鉄風 鋭くなって”が繰り出される。

大江慎也/向井秀徳アコースティック&エレクトリック @ 新宿LOFT
カポを用いた玄妙なコードで“Pixie Du”を披露すると、そのままオープン・コードで力強くリフを搔き鳴らし“はあとぶれいく”に繋げてしまう。アコエレの新曲と紹介された“前髪”(タイトル表記は聴き取り)は、レッド・ツェッペリンのケルト・フォークなテイストを彷彿とさせつつ、《あの子の前髪はいつも短すぎて 嘘をつけない》といったフレーズ(歌詞も聴き取り)が印象深い1曲だった。そしてディストーションがっつりの爆音インプロから傾れ込む“The Days Of NEKOMACHI”。向井は「うすら寒い拍手をありがとうございます」とか言っているが、オーディエンスとしては次に何が起こるかと常に息を呑んでいるので、ときどき反応が遅れてしまうのだ。叫ぶような歌声で届けられる“性的少女”を経て、「大江慎也さんとの共演、しかも新宿LOFTで、たいへん光栄に思っております……十数年前にフクオカCITYからトーキョーCITYにやってきまして、最初にビビったことは……まあ東京すべてにビビってたんですが……野良猫の目付きの鋭さでした。特に歌舞伎町の」と語る。そして最後には圧倒的な情報量とエモーションで届けられる“自問自答”だ。曲感にビールを煽りながら、視線と言葉、音と間のすべてに強烈な記名性が宿る「マイペース」の極みのステージ。5月からは全国ツアーも予定されているので、ぜひチェックを。

大江慎也/向井秀徳アコースティック&エレクトリック @ 新宿LOFT
続いてはいよいよ、大江慎也の登場である。2月には地元・福岡でオリジナル・メンバー4人のルースターズのライヴを行い、3月29日には下北沢でソロのライヴ、その翌日3月30日には福島県でライヴと、精力的な活動を展開している。黒いジャケットとサングラス、シャツの胸元を少し開けた大江は、「なんか最近、俺のMCが難しいって言われてて。だから今日は簡単なやつを……タンスにゴン、タンスにゴン、なぜか今夜は胸騒ぎ……くだらねー!」と、のっけからご機嫌な言葉遊びを放つのだった。なんかめちゃくちゃ嬉しい。オープニングの1曲には、いきなり来た、“Fool For You”だ。柔らかいタッチのギターとウィスパリング・ヴォーカルによって、オーディエンスの熱いシンガロングを引き出すという心憎いプレイだ。サングラスを外しながら大江、「俺の暦にはエイプリル・フールはないよ。だって普段から嘘ばっかりついてるもん」。やばい、めちゃくちゃかっこいい。

大江慎也/向井秀徳アコースティック&エレクトリック @ 新宿LOFT
そこからは、ギターのコードを目一杯搔き鳴らしながらの“Good Dreams”、裏打ちの高速カッティングが跳ねる“Rosie”と、ルースターズ曲を連発していった。甘く優しいギター・サウンドに包まれながらの“Girl Friend”の時点で、もう既に視界がぼやけてしまうような展開だ。出だしは少し、歌声に危ういところもあったのだけれど、自ら繰り出すロックンロール全開の鋭いギター・プレイに乗っかるようにして、歌の調子も上げてゆく。「ルースターズの初めてのMCのとき、おもしろい?って訊いたんだよね(笑)」といったエピソードも語りつつ、カヴァー・レパートリーではブルージーに嗄れたヴォーカルで迫力の熱唱を放ってくる。ジョン・ハイアットの“The Riding WIth The King”は、エリック・クラプトンとB・B・キングのコラボ・ヴァージョンに寄せるリスペクトのようで、大江のYouTubeアカウントでは動画も披露されている。リズム・マシンでビートを刻みながらの“I'm A King Bee”や、ボトルネック・スライドでぐいぐい引っ張る“Little Red Rooster”といった孫カヴァー、それにイントロでハープを吹き鳴らす暖かいブルース・フォーク曲“Sweet Virginia”と、普遍のローリング・ストーンズ愛ももちろん忘れない。

大江慎也/向井秀徳アコースティック&エレクトリック @ 新宿LOFT
オーディエンスがそうであるのと同様、自ら奏でるロックンロールにエネルギーを注ぎ込まれているような大江の姿があった。ブライトなギター・サウンドのイントロに歓声が上がる“Case of Insanity”の熱量が凄まじい。そしてやたらにBPMが速い“恋をしようよ”。大江の頭も高速でシェイクする。欲望と衝動、やるせなさと人間臭を最短距離で射抜くこのナンバーは、向井アコエレの“自問自答”と好対照で素晴らしかった。こちらも動画がアップされているオリジナル曲“I Love You”で本編を締め括ると、新宿LOFTとのコラボTシャツ一枚に着替え、首にはルースターズのタオルを掛けて“Mona (I Need You Baby)”やイギー・ポップの“Tonight”で更に加熱するアンコールへ。「おまけ!」と向井を呼び込み、互いのニューヨークでの経験を語ったり、衣装を褒められた向井の「背広を来てやれるように頑張ります」という言葉に大江が「あんなの、バーゲン品だよ」と答えたりして、2人でスペシャル・セッションへと向かう。“Sitting On The Fence”フィーチャリング・6本の狂ったハガネの振動とでも呼ぶべき、奇跡の一幕だ。大江は「向井! さあ後は迎え酒!」と最後にもご機嫌な駄洒落を言い放ち、自分でズッコケていた。最っ高。ロックがもたらすエネルギーは本当にすごい。そんなことを改めて、素直に思えた夜であった。(小池宏和)
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