「神様も想像してなかったと思うよ。人間を作った時に、こんな素敵な世界ができるって……それぐらい今、君たちは美しいです。ありがとう!」という野田洋次郎の言葉に、開演の瞬間から壮大なクラップとシンガロングがあふれていた横浜アリーナにひときわ熱烈な歓声が湧き起こる! RADWIMPSがここ横浜アリーナで開催した2Daysライブ『RADWIMPS LIVE 2013 春ウララレミドソ』の2日目。彼らがステージに立つのは昨年8月の『SETSTOCK '12』以来8ヵ月ぶり、ワンマン・ライブに至っては『絶体延命』ツアー以来、実に1年8ヵ月ぶりということで、広大な会場を埋め尽くしたオーディエンスの熱気はオープニングSEが鳴った瞬間にあっさり沸点を超えるほどだったが、4人が鳴らす音は、そして野田の歌は、MAXまで振り切れた1人1人の歓喜を真っ向から抱き止めてさらなる生命力を吹き込んでいくような、途方もないスケールのエネルギーとエモーションに満ちていた。
沸き返る歓声の中、『RADWIMPS 2 ~発展途上~』の“愛し”のイントロを弾き語りで歌う野田。そこに桑原彰/武田祐介/山口智史の音色が加わったかと思うと、巨大な空間を一気に震わせる強靭なアンサンブルを編み上げていく。そして、「はっちゃけるぞ!」の野田のコールから“ギミギミック”のハード・エッジなサウンドへ突入。スタンディング・エリアもスタンドも丸ごと目も眩むほどのボルテージの狂騒世界へと叩き込んでいく――リリース間もないシングル『ドリーマーズ・ハイ』の楽曲はもちろん、“透明人間18号”“君と羊と青”など最新アルバム『絶体絶命』収録曲、“ソクラティックラブ”“おしゃかしゃま”(『アルトコロニーの定理』)、“有心論”“ます。”(『RADWIMPS 4~おかずのごはん~』)……と幅広い選曲で、RADWIMPSが歩んできた道程を満場のオーディエンスとともに祝福し合うような内容も素晴らしかった。
『ドリーマーズ・ハイ』のカップリング曲“シザースタンド”を、ピアノ/アコギ/ウッドベースの精緻なプレイで奏でたアシッド・フォークな音像。横アリをでっかく揺らした“有心論”でヴォーカルを会場の大合唱に委ねた瞬間の多幸感。“遠恋”で炸裂した桑原の超絶フレーズ&武田のスラップ・ベースの熱血ソロ・バトル……すべてが決定的瞬間のような場面の1つ1つが、観る者を一歩また一歩と高揚の高嶺へと誘うのに十分なものだった。が、何よりこの日のライブを最高のものにしていたのは、格段にタフで開放的な表現者として進化した野田の、一点の迷いもなく自らの全精力を注ぎ込んで観客1人1人と響き合おうとする決意そのものだった。
「横浜はやっぱり特別な場所です、僕たちにとって」と、野田。「この横浜アリーナであったバンド大会でこの4人は出会って、それから10年ちょっと……『10年とか生きちゃうんだな、人間って』って。長生きしてね! 長く生きるかわかんないけど、誰よりも濃く生きたいと思ってます。だから、負けないくらいみんなも、濃く太く、生きよう!」――生きることの大事さと難しさ、儚さについて誰よりも辛辣に歌ってきた野田は、この日のMCで繰り返し「生きる意味」をダイレクトに語っていた。「ミサイルが落ちてくるとか、地震があるとか、テロが起きるとか……さっき『こんな素晴らしい世界』って言ったけど、外に出ればとんでもない世界が待っててさ。『明日には終わっちゃうんじゃねえかな』って思って俺は毎日生きようと思ってる。みんなも『今日で最後でもいい』って思えるくらい、毎日を自分なりに生きてください! 自分なりに生きてるやつって、ピカって光ってるからさ。周りもピカって光り出すのよ。それが連鎖していったら、日本もピッカピカになるんじゃねえかなと思ってさ。その手始めに、ここから始めていいっすか?」。抑えきれない大歓声が、会場の隅々から沸き上がる。「まだ数十年しか生きてないのに、自分がどんなやつか勝手に決めちゃってない? 俺、そういうの嫌なんだ。もしかしたら今日から全然違うやつになるかもしれないわけ。たまにはさ、とんでもないダダっ子になってもいいと思うんだ!」という野田の言葉を受けて、山口のドラム・フレーズから“DADA”へ! ここで鳴っていたのは単にRADWIMPSの個々の「楽曲」ではなく、それらを真摯な想いとともに編み上げることで生まれるダイナミックな「RADWIMPSという名の物語」そのものだった。
野田洋次郎という稀代のソングライターが、人間関係の身も蓋もない真実を言い当てて悦に入るだけの人でないことは誰もがよく知っていると思うし、それを痛みと苦悩をもって鋭利でスリリングなロック・ミュージックに昇華してきたこともよく知っていると思う。が、この日のステージ上の野田は、時にハンドマイクで華麗に踊り回り、時に渾身のジャンプを決め、時に豊潤なピアノの音色で静謐な音風景を作り上げ、「やべえな、超楽しいっす! 本気で楽しい。ありがとう!」と呼びかけながら、歌だけでなく全身で、自らの足跡も含めたすべてを「今」を全肯定するためのポジティビティへと転化してみせていた――つまり、目に映るものを全部、愛で包もうとしていたのである。終始喜びに感極まりっ放しの横浜アリーナの空気感が、彼の放つヴァイブの強さとあたたかさを雄弁に物語っていた。
バンドへの想いを赤裸々なモノローグで綴った“独白”。《あなたが死ぬ そのまさに一日前に 僕の息を止めてください》と切実な愛情を優しく歌い上げた“25コ目の染色体”。“ます。”の疾走感でフロアを震わせ、“君と羊と青”のエンディングを繰り返しながら、さらに会場の温度を上げ、“いいんですか?”では高らかなクラップとともに《いいんですか いいんですか こんなに人を好きになっていいんですか?》と歌うオーディエンスに《いいんですよ いいんですよ》と野田が応える……夢のような時間はあっという間に過ぎ、“ドリーマーズ・ハイ”の高純度なアンサンブルを残して、4人はステージを後にした。会場一丸となって“もしも”を歌いアンコールを求める中、メンバーはなんとアリーナ後方に登場! 高くせり上がったセンター・ステージ上の4人が、ステージ・ピアノの前でぎゅっと身を寄せ合って座って“白と黒と4匹のワルツ”を演奏する姿が、さらなる感激を呼び起こしていく。さらにそれぞれ楽器を構えて“me me she”を披露した後、ループ・サンプラーを駆使して楽器音や「ウララレミドソ」のフレーズを幾重にも重ね合わせた実験的な楽曲で観客を沸かせていく。そして、この日の正真正銘最後のナンバーは、Wアンコールの“最大公約数”! なおも大きく会場を揺らし、割れんばかりのシンガロングを巻き起こして――終了。「今日を忘れずに、また生きていきます。ありがとう!」という野田の言葉に、惜しみない拍手喝采が降り注いだことは言うまでもない。
ライブの最中にも「しばらくライブの予定ないからさ、俺らの何ヵ月分か持って帰ってください!」と野田が言っていた通り、現在アナウンスされている次のライブは9月15日(日)に国営みちのく杜の湖畔公園みちのく公園北地区 風の草原で開催される『RADWIMPS 野外LIVE 2013 「青とメメメ」』のみ。RADWIMPSの「その先」の世界への期待感をさらに天井知らずに膨れ上がらせてくれた、至上の一夜だった。(高橋智樹)
※写真は4月17日に行われた公演のものとなります。
[SET LIST]
01.愛し
02.ギミギミック
03.ソクラティックラブ
04.透明人間18号
05.トレモロ
06.シザースタンド
07.有心論
08.遠恋
09.シュプレヒコール
10.ブリキ
11.螢
12.DADA
13.G行為
14.One Man Live
15.おしゃかしゃま
16.独白
17.25コ目の染色体
18.ます。
19.君と羊と青
20.いいんですか?
21.ドリーマーズ・ハイ
Encore1
22.白と黒と4匹のワルツ
23.me me she
Encore2
24.最大公約数