通算51回目を数えるロッキング・オン主催の恒例ライヴ・イヴェント『JAPAN CIRCUIT』は、ここ数年『JAPAN CIRCUIT WEST』 として大阪のみで行われていたけれども、今年は4年ぶりに東京での開催が復活。好天の新木場スタジオコーストに6組のアクトを迎え、ロックなゴールデンウィークを締め括る1日となった。出演アクトはタイムテーブルの順に、[Champagne]、宇宙まお、東京カランコロン、溝渕 文、andymori、そしてトリのDOES。匂い立つほどに男気溢れるロック・バンドから、フレッシュな才能が注ぎ込まれた楽曲群を届けてくれる女性アーティスト、ライヴ空間を賑々しく謳歌する男女混成バンドまでが揃い踏みである。それでは以下、各アクトのステージを駆け足でレポートしていきたい。
■[Champagne]
川上洋平(Vo./G.)の「JAPAN CIRCUITへようこそ! We are [Champagne]!! 最高の一日にしようぜ!」という熱っぽい第一声を合図に、“Kill Me If You Can”から持ち前の高い機動力を見せつけるスリリングな必殺ナンバー連打で1日の幕を切って落とした[Champagne]。がっちりと作り込まれたロックンロールを、何でもないことのように勢い良く乗りこなしてゆく4人のライヴ巧者ぶりはいつもながらに素晴らしく、川上、曲中にも曲間にも「イエーー!! 気持ちいいー!」「超楽しい、やべー!!」とあからさまに興奮気味である。“Cat2”でオーディエンスと一体になってハンド・クラップを打ち鳴らしながら踊り回ると、「昨日、レコーディングが終わりました! 嬉しい。泣きそう。午前2時だぞ!」と。それでか。ツアーも同時進行してしまうというレコーディング期間だっただけに、溢れ出る感慨を止められないのだろう。もちろん、止める必要もない。段取りを無視して「新曲やっちゃう?」と口走る川上に対し、「俺は別にいいけどさ。一応、決めたこととかあるじゃん?」とやんわりいなす磯部寛之(Ba./Cho.)の立ち回りが見事だ。“Forever Young”や“starrrrrrr”といった、豊かな歌心を伝える2013年のシングル曲群も交え、バンド活動の生々しい息遣いが持ち込まれたステージであった。新作も楽しみ。
01. Kill Me If You Can
02. rocknrolla!
03. Cat2
04. Forever Young
05. Waitress, Waitress!
06. city
07. starrrrrrr
■宇宙まお
先にバンド・メンバーがイントロを鳴らし始めたところに、両腕を高く掲げ、満面の笑みを浮かべてステージに駆け込んでは、オーディエンスにお辞儀する宇宙まお。アーティストにとっての神秘的なインスピレーション体験を、フレッシュに歌い込んだ“ロックの神様”からパフォーマンスがスタートだ。ライヴ・アレンジも更にこなれて、どっしりとした手応えを残してくれる。楽曲の足腰が強いというか、この若きシンガー・ソングライターによる数々の作曲が、辣腕サポート・メンバーたちの迫力の演奏と拮抗してしまっているのが凄い。「こんなに大きなステージでやるのを楽しみにしてました! そしたら天気に恵まれて、こんなにたくさんの人が観てくれて、本当にありがとうございます!」と、話し振りはいかにも若々しいアーティストのそれなのだが。いまだ音源化されていない新曲“哀しみの帆”は、彼女自身の説明によると「哀しいことも、嬉しいことと同じように、大切な人と共有できたらいいな、という曲」。ゆったりとしたメロディが、まさに大海原を駆ける船のように人々を乗せてゆく。彼女のポップ・アーティストとしての懐の深さを伺わせる一幕であった。最後は、タオルを振り回しながら高く飛び跳ねるオーディエンスも多く目に付く“あの子が好き”でフィニッシュである。
01. ロックの神様
02. 穴だらけ
03. ブルーナ
04. 哀しみの帆
05. あの子が好き
■東京カランコロン
“survival dAnce〜no no cry more〜”のオープニングSEに、見事な間の手を加えてバンドを迎えるオーディエンス。みんな、若いのによく知っているなあ。「trfの後輩、東京カランコロンです!」といちろー(Vo./G.)が挨拶し、せんせい(Vo./Key.)のイタズラでキュートな歌声が弾ける“少女ジャンプ”からスタートだ。自由奔放・奇想天外・予測不能、そのくせえらいことキャッチーという、カラコロ・マナーに染め抜かれたステージでオーディエンスとの共犯関係を築き上げてゆく。ミュータント・ディスコな“true!true!true!”をハンド・マイクのファルセットで歌い、ワン・ツー・コールを巻き起こしたいちろーは、「『JAPAN CIRCUIT』を昔スカパー!で観て。ゴイステ(GOING STEADY)とかsmorgasとか出てて(2002年のvol.5。出演者は他にエレファントカシマシ、BAZRA)。ミネタさんがキンタマ押さえながら前転してたっていう……俺、ゴイステのコピー・バンドやったもんね」と思い出を語ってくれる。一方、せんせいは、フロア前線のオーディエンスの中に、それぞれ掌に「せ」「ん」「せ」「い」の文字を書き込んでかざす2人組を見つけて嬉しそうだ。暖かく柔らかいサウンドで触れるものを包み込みながら、グニャリと時空を捩じ曲げてしまう“ラブ・ミー・テンダー”。そしてメジャー初フル・アルバム『We are 東京カランコロン』のオープニング曲でもあった“いっせーの、せ!”と、誰よりも先に自分たちが楽しみ、人々を巻き込んでしまうステージを繰り広げてくれた。
01. 少女ジャンプ
02. CAN'T STOP 運命線
03. true!true!true!
04. ラブ・ミー・テンダー
05. いっせーの、せ!
06. 泣き虫ファイター
■溝渕 文
スタジオコーストの広いライヴ空間が、その表現力にとてもよく似合っていた溝渕 文。自らの4カウントで切り出した“Color Color Color”が空間の色彩を一気に塗り替え、「数々のイヴェントが行われている中、集まって頂いた上に聴いて頂いて、ありがとうございます!」と、清々しいぐらいに張りのある声で感謝の言葉を投げ掛けてくる。媚びず、しかし虚勢を張るのでもなく、これだけ大きなステージに立つパフォーマーとしては意外なほど等身大な彼女の、だからこそナチュラルに滲み出るスケール感に驚かされた人も多いはずだ。語りかけるような歌詞の転がし方が秀逸な、「初めて作った曲です。歌えて嬉しかった」という“二十六”や、「私の結婚観みたいなものを込めた曲です。周りの結婚ラッシュみたいなのって、あるじゃないですか。まあ、私は独身ですけどね……」と笑いを誘う“マリー”など、一曲ごとに丁寧な説明を添えて楽曲にアクセスし易くさせてくれるステージングも、彼女ならではのペース。そしてクライマックスは、地元・香川に実在する橋の上で、過去の自分と現在の自分が邂逅を果たすという名曲“坂本橋”だ。とめどなくクレッシェンドするバンド・サウンドによって、一人の人間がそれぞれに抱えた物語の大きさを映し出してゆく。彼女の堂々たる存在感を見せつけてくれたステージであった。
01. Color Color Color
02. 雨粒
03. 二十六
04. マリー
05. 坂本橋
■andymori
『JAPAN CIRCUIT』には、今回で3回連続出場を果たしている常連のandymoriである。一発目の音出しと共に眩いバック・ライトを浴び、サポートにくるりのファンファン(Tp./Key)を迎え、ツアーではお馴染みの編成で“投げKISSをあげるよ”からパフォーマンスをスタート。小山田壮平(Vo./G.)による膨大な言葉数の、クリアな情景と生々しい感情を浮かび上がらせてゆく歌が響き渡り、ハーモニーの援護で熱量を高めてゆく。ファンファンのトランペットも華々しく吹き鳴らされる“ベンガルトラとウィスキー”そして“革命”にかけてスピードに乗ったバンドは、もう手がつけられない。フロアは既に揉みくちゃの狂騒である。“グロリアス軽トラ”では、《新木場の空の下》と歌詞を変える定番のサーヴィスもあった。髪の一部がピンクに染められたファンファンを「一段とかわいいー!」と小山田が絶賛しつつ、詩情がフロアに溶ける“青い空”から“1984”、雄弁なバンド・サウンドで情熱が押し広げられる“ユートピア”と、オーディエンスの体が心地良さそうに揺れる楽曲群も配置されるのだが、“FOLLOW ME”以降は再び加速して休む間もなく楽曲を繰り出し、フロアを沸騰させてしまう。andymoriライヴの真骨頂だ。このスピード感の中であっても、いや、このスピード感の中だからこそ、歌を共有することの奇跡とロマンがしっかりと分かち合われるところが素晴らしい。それを象徴するような“シンガー”のフィナーレまで、ものの40分の間に14曲を披露してしまった。セット・リスト上では14曲だけれど、本番前のサウンド・チェックでは“Life Is Party”も聴くことができた。大満足である。
01. 投げKISSをあげるよ
02. ベンガルトラとウィスキー
03. 革命
04. ボディーランゲージ
05. グロリアス軽トラ
06. 青い空
07. 1984
08. ユートピア
09. FOLLOW ME
10. クラブナイト
11. Sunrise & Sunset
12. everything is my guitar
13. すごい速さ
14. シンガー
■DOES
さあ、今回のアンカーはDOESだ。氏原ワタル(Vo./G.)、赤塚ヤスシ(Ba.)、森田ケーサク(Dr.)というただでさえ鉄壁の3人に加え、サポート・ギタリストにシラサワオサム(ファズピックス)を加えた4ピース編成。タイトなこと極まりない硬質なグルーヴと、ギラギラと妖しく煌めくようなギター・サウンドを撒き散らし、その中から爆発力と色気を兼ね備えたワタルのヴォーカルが搔い潜ってくる。“夢見る世界”のカップリング曲“S.O.S.O”で《さあ楽しもうぜ》と呼びかけ、パーティの1日のバトンを握りしめてひた走る“ロッカ・ホリデイ”、「今日はいい1日になったんじゃないの!? 最後まで残ってくれてありがとう、DOESです!」と“ナイスデイ”に繋ぐという、やたら気が利いた選曲になっていて面白い。「アルバムを完全再現して、新曲も4曲やるっていうライヴを、毎月24日にやってるんだ。今月もやるから(5/24@新宿LOFT『The World’s Edge』)、みんな来てね!」とワタルが告知すると、今回のステージでも新曲“1234”を披露してくれた。これぞDOESというパーティ・ロック・ナンバーである。沸々とドラマティックに描き出される“赤いサンデー”や、道程に想いを馳せる“バスに乗って”といった歌心も伝え、“ジャックナイフ”や“バクチ・ダンサー”といったキラー・チューンに湧きまくる展開。なんと本編最後にも新曲“殺伐とラブニア”を配置し、お馴染みの楽曲群に負けず劣らず盛り上がってしまった。「暴れまくれる曲だから、あんま暴れんなよ」とはワタルの弁。アンコールに応え、止めとばかりにプレイされた“修羅”まで、見事な1日の締め括りを見せてくれたDOESであった。
01. S.O.S.O
02. ロッカ・ホリデイ
03. ナイスデイ
04. ユリイカ
05. 1234
06. 赤いサンデー
07. バスに乗って
08. ジャックナイフ
09. レイジー・ベイビー
10. バクチ・ダンサー
11. 殺伐とラブニア
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