スプーンのジム・イーノらをプロデューサーに迎えてレコーディングされた最新作『スリラー』は、!!!にとって明らかな転機作だったと言っていい。一聴して真っ先に気づく変化は音が整理されエレガントになっていることで、不可測フリーキーな音塊の興奮がまんまパッケージされていたかつての彼らの作品と比較すると、ファンク系のナンバー、ディスコ系のナンバー、ソウル系のナンバーと楽曲毎にテイストがはっきり色分けされ、輪郭を持っている『スリラー』はこれまでとは全く異なる完成度を持つアルバムとなった。そんな新作の方向性が!!!らしさが最も発揮されるライヴにおいて果たしていかに作用するのか、その点に注目してUNITに向かった。
続く“All My Heroes Are Weirdos”はラップのように畳みかけるニックのヴォーカルとドラムスが共に打楽器としての快感を増幅させていくナンバーで、“Get That Rhythm Right”の整然とした印象が一気にぐにゃっと歪み、フロアの熱も急速にヒートアップしていく。「ワッツアップトーキョー!」と叫ぶニック、そして始まったのが“Californiyeah”。完全にリズムが主役のナンバーで、ファンクの横ノリとブレイクビーツをごっちゃにしながらステージ上の全員がパーカッションを担う間奏は圧巻だ。ニックは早くもフロア・ダイヴをかましている。この冒頭3曲は言わば美しく整えられた最新作『スリラー』のナンバーの「かたち」を無形へと、プリミティヴなかつての!!!へと還していく、そんなベクトルを感じさせる流れだった。
そして、ゲスト・ヴォーカルを迎えてプレイされた“One Girl / One Boy”は再び無から「かたち」を掘り起こすようなパフォーマンスとなった。“One Girl / One Boy”は『スリラー』中でも最もポップなナンバーの一つだけれども、70年代のソウル・ミュージックのビンテージ感、まるで「ソウル・トレイン」のワン・シーンのように歌われ、演奏されるその普通さがむしろ!!!のライヴとしては新しい光景だったと言っていい。
とは言え、“Jamie, My Intentions Are Bass”以降の本編クライマックスは!!!の真骨頂と呼ぶべきフリーキーなファンクネスが炸裂し、場内はお馴染みの奇祭じみたムードに支配されていく。ニックの咆哮と共に幕を閉じた本編ラストの“Heart of Hearts”の頃には完全にかつての!!!のライヴの快感に身体が立ち返っていた。
Get That Rhythm Right
All My Heroes Are Weirdos
Californiyeah
Even When The Water's Cold
One Girl / One Boy
Except Death
Station
Careful
Slyd
Jamie, My Intentions Are Bass
Me and Giuliani Down by the School Yard
Heart of Hearts
(Encore):
Must Be the Moon
Yadnus