ディスコパンク、エレクトロファンク、オルタナファンク、いろいろな形容がつけられてきたが、これほど長く、高いテンションで活動してきたバンドもないだろう、!!! (チック・チック・チック)。待望の新作『レット・イット・ビー・ブルー』が4月29日に出る。
昨年9月に“ファスト・カー”と“マン・オン・ザ・ムーン”のカバー2曲をシングルリリースし、まずファンたちの脳に着火してくれたが、ジョナス・ブルーのカバーも人気の“ファスト・カー”は80年代末から活躍するアフリカ系アメリカ人の女性シンガーソングライター、トレイシー・チャップマンがオリジナルで、貧困や辛い環境から速い車でどこかへ連れて行ってと訴える曲がさらにスピードアップしたアレンジにカオティックなディスコ風味を加えられアップデートされた。
もう一曲の“マン・オン・ザ・ムーン”の方はR.E.M.が92年に発表したもの。『サタデー・ナイト・ライブ』などで活躍し84年に亡くなった伝説的なコメディアン、アンディ・カウフマンを歌ったナンバーで、彼を描いた映画『マン・オン・ザ・ムーン』のタイトル曲ともなったオルタナギターロックなのだが、これをチック・チック・チックは、まるで70年代のオハイオ・プレイヤーズがプレイしているかのようなディスコバンド風に仕立て直していて爽快だ。
さらにアルバム先行で“ストーム・アラウンド・ザ・ワールド”が発表された。前作にも参加したマリア・ウーゾルを迎え哀愁感たっぷりなメロディにのって《世界中に嵐を巻き起こそう》と煽るナンバーは、まさにこの先がどんどん見えなくなってくる不透明感に包まれた時代に向けて力強い使命感のようなものが漂い、新作への期待は膨らむばかり。
ザ・ビートルズを連想せずにはいられない『レット・イット・ビー・ブルー』というタイトルにも、ただ悟ったような言葉で終わるわけにはいかない時代を生き抜く彼等の思いが詰まっているのだろう。ファンク、ハウス、ブレイクビーツ、エレクトロ、パンク、何が出てきてもまったくおかしくない連中によって研ぎ澄まされた一枚は上半期の話題作になるに違いない。来月号ではインタビューも届けられるはず。このまま盛り上げて進みたい。 (大鷹俊一)
チック・チック・チックの記事は、現在発売中の『ロッキング・オン』5月号に掲載中です。ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。