東京スカパラダイスオーケストラ @ SHIBUYA O-EAST

東京スカパラダイスオーケストラ @ SHIBUYA O-EAST - All pics by Rickey WangAll pics by Rickey Wang
既にニュースとして報じられているとおり(こちら→http://ro69.jp/news/detail/85021)、スカパラ冬のライヴ・ハウス・ツアー(ファイナルは仙台でのカウントダウン・ライヴ)+『トーキョースカミーティング@福岡』の開催も告知されたわけだが、このたび行われたのは7/3にリリースされたニュー・アルバム『Diamond In Your Heart』(同日に、So many tearsと沖祐市ソロそれぞれの新作もリリース)の、一夜限りの発売記念ライヴである。Ustreamでの生中継も行われたのでそちらで観たというファンも多いはずだが、改めてこの夜の模様を振り返りたい。まず、この一発勝負のステージに掛けるスカパラの意気込みは、並々ならぬものがあった。ひたすら上昇し続けるばかりの会場内温度と胸の内の興奮。後述するセット・リストをご覧頂ければ分かるとおり、新作曲を踏まえながら息つく暇も与えない必殺曲の連打で、しかもその音楽と同等に熱い思いが、言葉と化してオーディエンスの身体に叩き込まれてしまう。

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けたたましいエグゾースト・ノートのSEが響き渡ってメンバーが姿を見せるなり、茂木欣一(Dr.)が「男! ワイルドに決めてくれよな! 女! セクシーの概念を変えてやれ!」と煽り文句を投げ掛け、ステッペン・ウルフのロックなスカ・カヴァー“Born to be Wild”が繰り出される。さっそく沖祐市(Key.)はヒョウ柄のキーボードを担いで前線に躍り出てくる。GAMO (Tenor Sax)→谷中敦 (Baritone Sax)→北原雅彦 (Trombone)と加速しながらのリレーを鮮やかに決める“LA Traffic”に続いては、大森はじめ(Percussion)がマイクを握って早くも“DOWN BEAT STOMP”を投下だ。ホーン・サウンドとオーディエンスによるコールが、フロアの宙空で正面衝突するような光景である。この時点で既に「あ、今回のライヴ、やばい」という予感があった。間断なく、耳馴染んだアッパーな旋律を猛スピードでぶっ放す“SKAN-CAN”(昔から運動会などでよく使われる、オッフェンバック“カンカン”のあの旋律)へと繋げてしまうのだから、これは恐ろしい展開である。

東京スカパラダイスオーケストラ @ SHIBUYA O-EAST
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「俺は、誰の心の中にもずっと変わらないピュアな部分があって、それはダイヤモンドだと思ってる。硬くて、透明で、輝いていて。全部のうちの1%か2%かも知れないけど、その部分があるから、他の部分で勇気を出して変われるっていうか。みんなの、そのダイヤモンドに向かって演奏するからな!」「音楽は、参加する人全員が勝つことの出来るゲームなんだよ! 戦うように楽しんでくれよ!!」と、谷中十八番の口上も、スカパラの最新テーマと結びつき合って熱を増幅させていた。そして、NARGOのトランペットが哀愁の渦を巻く“Aranjuez”から、一転してトロピカルでキャッチーな陽性ヴァイブスにフロアが笑顔まみれで揺れる“NATTY PARADE”と続き、沖が作曲した“Dizzily Dazzled”ではサックス奏者2人がまたもやエキサイトぶりを見せてくれる。新作曲はオリジナルのナンバーも含め、スカパラの核にある質実剛健な演奏やキャッチーさを引き出す手応えがあって、生々しい衝動の迸りを前のめりに鳴らしてみせた前作『欲望』とはどこか好対照だ。

東京スカパラダイスオーケストラ @ SHIBUYA O-EAST
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「大ヒット・ナンバーいくよ!? みんな絶対歌えるやつ!」と、“めくれたオレンジ”ではオリジナルの田島貴男に負けず劣らず、ここ一番の歌唱力を発揮してみせる欣ちゃん。NARGOの鍵盤ハーモニカが電飾で煌めき、勢いよく転がり出すのはもちろん“SKA ME CRAZY”で、大作映画のテーマ曲のような情景喚起力を誇る“Skactus”と触れる者をまとめて突き飛ばすようなジャイヴ&スウィング感の“Rushin'”はどちらも川上つよし(Ba.)作品だ。加藤隆志が「新曲行くぞー!!」と全力でギターを搔き毟る“Rockabilly Cutie”では、リズム・セクションによるビートの乱舞でカチ上げるような熱いソロも挟み込まれる。スカパラらしいメロディの波状攻撃で迫る“フィルムメイカーズ・ブリード”を経ると、声の通じないマイクをはたき落とした加藤が生声で煽り立てながらの“ルパン三世'78”だ。大森が背面ダイヴまで決行してしまうという、この抑揚もへったくれもない、ひたすら絶頂感が続くようなライヴは何なのだろうか。

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そして“Pride Of Lions”。なんとここで、白地のジャケットを羽織った細美武士が満面の笑顔でスカンキングしつつ登場である。ゲスト出演することは伝えられていたけれど、このタイミングだとは思わなかった。そんな気の利いた、ちょっとしたサプライズ感も大歓声を後押しし、シンガロングを巻き起こしつつ細美がリード・ヴォーカルをとる。もちろん、次に披露されるのは“Diamond In Your Heart”だ。優れたバンドに優れたヴォーカリストがゲスト参加する、とかそんな次元ではなくて、魂が共振している。だからこそ人々を強く巻き込む。まさにそんなコラボレーション。作曲を担当した、大学の先輩でもあるという加藤と、汗でびしょ濡れのまま思いっきりハグを交わす細美であった。そしてライヴ本編は、大森が拡声器を振り回してアジる“非常線突破”、最後までフロアから高らかなコーラスを引き出し続けた“(there's no)King Of The Ants”と続き、狂騒のままクライマックスへと到達してしまう。

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サッカー場にこだまするチャントのような「オ〜レオレオレ〜、ト〜キョ〜」の声に導かれたアンコールで、“5 days of TEQUILA”をプレイすると、谷中はこんなふうにも語っていた。「(細美くんと)一緒にやれて良かった。彼の、剥き出しの部分に教わることがあるっていうか。剥き出しだと傷つくことも多いし、いろんなことをカテゴライズして見れば楽なんだけど、全部を一から考えて、毎日新しい目で見るというか。毎日失敗するとか。そういうことが出来る人は、強いと思う」。そして、声を嗄らしながら「全員手を挙げろ! そのまま横に下ろして、隣の人と肩を組め! ありがとう!!」と“All Good Ska is One”に向かうのだった。細美もまたはち切れんばかりの笑顔で再登場し、真にパーフェクトな大団円を迎える。GAMOは、遂に白いジャケットを脱がなかった。2013年のスカパラの暑い夏は、まだ始まったばかりである。(小池宏和)

01. Born to be Wild
02. LA Traffic
03. DOWN BEAT STOMP
04. SKAN-CAN
05. Aranjuez
06. NATTY PARADE
07. Dizzily Dazzled
08. めくれたオレンジ
09. SKA ME CRAZY
10. Skactus
11. Rushin'
12. Rockabilly Cutie
13. フィルムメイカーズ・ブリード
14. ルパン三世'78
15. Pride Of Lions
16. Diamond In Your Heart
17. 非常線突破
18. (there's no)King Of The Ants
encore
01. 5 days of TEQUILA
02. All Good Ska is One
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