「今回はリリース・ツアーっていうんじゃなくて、全国9ヵ所10公演回ってきたんですけど。まあ、我々レコード会社を移籍して、ねえクボくん?」と話を振るタケシタツヨシ(B・Cho)に慌てつつ、「そうですね、そのご報告と、今日がファイナルってことで……ただいま!」とフロアに呼びかけて熱烈な拍手喝采を巻き起こすクボケンジ(Vo・G・Syn)。2004年のメジャー・デビュー以来在籍したワーナーミュージックから今年4月にキューンミュージックへ移籍を発表、アニメ『宇宙兄弟』オープニング・テーマにも決定したシングル『クレーター』のリリースを8月21日に控えたメレンゲが、6月22日(土)・HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3から仙台/広島/福岡/札幌/金沢/名古屋/大阪と日本各地を巡ってきた全国ツアー『Space Frontier Foundation Tour』。そのフィナーレを飾る東京・リキッドルーム恵比寿2DAYS公演の2日目となるこの日のステージには、クボ自身が繰り返し「再出発」と口にしていたように、晴れやかな凱歌として鳴り渡った“旅人”で幕を開けた瞬間からアンコール最後を飾った新曲“クレーター”まで、新たなステージへの旅立ちに臨むメレンゲの胸躍る「今」がぎっしり凝縮されていた。
「GREAT3の片寄さんに一緒にリハとか入ってもらって、ああしようこうしようとか話をして……わりと片寄さんの言う通りにやってみたりとか(笑)。それでよくなってきたんじゃないかと思っております!」とクボも冗談めかして言っていた通り、今回のツアーにはGREAT3・片寄明人がライブ・プロデューサーとして参加。《明日は君に見せたいな 寝ないで作った本当の僕を》(“君に春を思う”)、《僕らは永遠じゃない 消えちゃうまで触り合ってたいだけ》(“午後の海”)といった情景描写や心情も含め、個々の楽曲をライブ全体の大きなストーリーへと編み上げてみせていたのが印象的だった。「懐かしい、あまりやらない曲を……」という紹介とともに披露した“スターフルーツ”の切なくも瑞々しいメロディがリキッドルームの空気に爽快な躍動感を与えたところで、「昨日に引き続き、連チャンなんですけど……僕はバッチリです! 体調は。どうなんですか?」とタケシタに振るクボ。「こんな満員で、すっげえみんな楽しんでくれてるから、文句なんかないでしょ!」とやけに勇ましく叫び上げるタケシタ。「あの、自由にノってもらって結構なんで……」とクボがおずおずと語るところにかぶせて、ヤマザキタケシ(Dr)が“クラシック”の弾むようなモータウン・ビートを轟かせて、フロアを笑いと歓喜で包んでいく。
クボ/タケシタ/ヤマザキの3人に、レギュラー・サポート:大村達身(G)&「デビュー当時からずっと一緒」:皆川真人(Key)をサポートに迎えた5人編成でのステージ。“8月、落雷のストーリー”の朗らかなメロディが「新たなメレンゲ」への決意の歌として響いたり、“underworld”のセンチメンタルな物語が「その先」への広がりの予感に満ちていたのも、3人+サポート2人+片寄が一丸となって築き上げていたポジティブなヴァイブゆえだろう。「去年から新曲いっぱい作ってきたので。新曲をやらしてもらってよろしいでしょうか?」というクボの言葉とともに終盤に演奏した新曲“ライカ”での、ハード・ロック風のシャッフル・ビートと大村のエッジ感あふれるフレーズが目映いくらいのポップなサビへと流れ込む爽快感。リキッドルームを心地好く揺らした“フィナーレ”のディスコ・ファンクのリズム。クボが鍵盤を弾きながらフロア一面の高らかなクラップを呼び起こした“ミュージックシーン”の多幸感……クボ自身「ちょっと、暑いです! 溶けそうです!」とこぼすくらいの熱気があふれる中、本編を締め括ったのは“願い事”。《願い事ひとつで 抜け出そうって決めて旅に出たよ》と歌うクボの声が、ひときわ力強く胸に響いた。
アンコールでは『クレーター』のカップリング曲“Ladybird”、さらに“July”“ラララ”と続けた後、「8月21日、シングル『クレーター』発売します!」と宣言するタケシタに熱い拍手が沸き上がる。「どんな気持ちで書いたとか……いい感じで説明してくれる?」とクボに無茶振りするタケシタ。「『いい感じで』って!」とクボも苦笑。「いや、もうメレンゲの再出発とか、すごいこめて作りましたよ……お前マンガ持って来てんの? そんなとこに(笑)」というクボの言葉の最後は、ベース機材と一緒に置いてあったマンガ『宇宙兄弟』を取り出したタケシタに向けたものだ。「『宇宙兄弟』のオープニング・テーマに決まりました!」(タケシタ)という言葉に湧き起こる大歓声を、そのまま“クレーター”の推進力に変えてみせる5人。性急なビート感の中で咲き乱れるコードワークとメロディが、そしてさらなる音楽の冒険へと飛び出す期待感そのもののようなクボの渾身のヴォーカリゼーションが、最高の夜の終幕を鮮やかに彩っていた。
演奏が終わって舞台を降りようとするクボを呼び止めて、5人でのカーテンコールへと誘うヤマザキ。「この人ね、こういうの好きなんすよ!」と照れくさそうに笑うクボ。手に手を取って一礼する5人に、惜しみない拍手が降り注いでいた。ツアー大団円を迎えたメレンゲ、今週末の『夏びらきMUSIC FESTIVAL '13』を経て、2009年以来4年ぶりとなる『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』出演が実現! 初日:8月2日(金)・PARK STAGE、お見逃しなく。(高橋智樹)
[SET LIST]
01.旅人
02.チーコ
03.君に春を思う
04.午後の海
05.スターフルーツ
06.クラシック
07.彼女に似合う服
08.8月、落雷のストーリー
09.underworld
10.輝く蛍の輪
11.ムーンライト
12.アルカディア
13.ライカ(新曲)
14.フィナーレ
15.ミュージックシーン
16.バンドワゴン
17.ビスケット
18.願い事
Encore
19.Ladybird
20.JULY
21.ラララ
22.クレーター
メレンゲ @ リキッドルーム恵比寿
2013.07.18