SOPHIA @ 日本武道館

SOPHIA @ 日本武道館
3月から始まったニューアルバム『未来大人宣言』のリリースツアーの序盤である4月9日、活動休止を発表したSOPHIA。5カ月に及ぶ長いツアーだったが、遂にその最終日である日本武道館公演を迎えた。つまりその日は、活動休止前の最後のライヴ(深夜にFC限定オールナイトイベント“朝まで生SOPHIA”が開催されたが)となる。19年にも及ぶ歴史を重ねてきたバンドである。メンバーはもちろん、ファンの思い、携わってきた人たちの思いは、計り知れない。九段下駅から武道館までの道には、彼らのライヴには欠かせないヒマワリを抱えた人たちで溢れていた。

階段や通路など、めいっぱい客席に近付けるように考慮されたような真っ白なステージ。それを、びっしりと360°取り囲む人、人、人。そこにSE“愛の讃歌”が流れると、客席が無数のLEDライトできらめいていく。ファンも一体となった阿吽の呼吸の演出だ。そして真っ白な衣装で登場した5人が鳴らし始めたのは、何と懐かしの“Eternal Flame”! その後の松岡充(Vo)のMC曰く「上京して初めてのSOPHIAのステージの1曲目でやった曲」だそうだ。やっぱり、今日は特別な日なんだ……緊張感が、武道館を埋め尽くしていく。そんな空気を自ら壊すように、松岡の第一声は「やあ、みんな」(笑)。さらに、「twitterで『この日が来ないで欲しいです』、『この日を避けています』って言われていたけれど、僕は今日生まれました!」と苦笑い。そう、今日は松岡の誕生日でもあるのだ。すかさず「おめでとう!」という声が飛ぶ。

SOPHIA @ 日本武道館
その後も、メモリアルな楽曲が畳み掛けられていく。松岡の「SOPHIAが誕生したキッカケの曲」という言葉からはじまったのは、これまた初期から演奏され続けている“Believe”。ド頭から、誰もがヴォーカリストのような大合唱。そして、関係各所から送られたヒマワリの生花で作られた、ステージからフロアに降りる階段が露わになった“ヒマワリ”。もちろん、オーディエンスもヒマワリを取り出し、360°ヒマワリ畑のような状態に! さらには“little cloud”、”“ゴキゲン鳥~crawler is crazy~”、”黒いブーツ~oh my friend~“……改めて、とびっきりポップだけれど、噛み締めるほどに深い名曲ばかりだ。しかも、ミュージックビデオも流れたりするものだから、思い出のアルバムをめくっているような気分にさせられてしまう。オーディエンスは、自らの思い出も重ね合わせるように手を叩き、コーラスする。本当にSOPHIAの楽曲は、オーディエンスがいなければ成立しない楽曲ばかりだ。そんな中を、メンバーも、見えづらい人がいないように、隅々まで動き回り、間近でコミュニケーションをとっていく。

「ノってるの半分くらい。半分くらいは今にも泣きそうだよ。解散じゃないよ? 生きてるよ? 白い服着てるけど」と松岡は笑いながら言っていたけれど、こんなセットリストにされちゃあ(しかも意味深に白い服なんて着られちゃあ)、感じずにはいられないでしょう! さらに、ヒマワリの階段を下りて客席に近付き、他のメンバーも呼び込む。もちろんいろんな時期があったんだろうけれど、今もメンバー同士、とても仲が良さそうだ。そのあたたかさが客席に伝播して、全員が身内のような空気になっていく。

SOPHIA @ 日本武道館
「俺たちの代表曲」と言って始まった“街”からは、どんどんディープになっていき、演出も盛り込まれていく。“CIRCUS”ではピエロと電飾が現れ、“ALIVE”では火柱が上がる。さらに、松岡以外の4人のインタヴュー映像から、一人一人のMCタイムも。都啓一(Key)は「重大発表」とドキドキさせつつ、実は血液型が今までプロフィールに記していたA型ではなく、B型だったことを報告(なんじゃそりゃ! 笑)。さらに赤松芳朋(Dr)は、こんな大事な日に芳明と誤植され、徹頭徹尾イジられ役を貫く(笑)。初期からエンタメ度の強かった彼らのライヴ、やはり松岡以外も役者である。

あたたかなハンドクラップに包まれた“理由なきNew Days”、まるで今日に贈るメッセージのような“旅の途中”などを続け、200曲以上ある中で、みんなの青春に流れているSOPHIAの曲を、MCをカットしてでも、少しでも多く演奏したいと言う松岡。そう、これだけたっぷり演奏して、まだ中盤なのだ。そして、SOPHIAはこれまで、数々のコラヴォレーションをしてきたこと、次にやる曲は岡村靖幸のプロデュースで、ロックファッションの老舗であるクリームソーダがヴィジュアル面を担当したこと……そして、ジャケットを羽織り、「クリームソーダの山崎社長に捧げます」と言って始まったのは、もちろん“HARD WORKER”。19年も活動していれば、出会いもあるし別れもあるだろう。何より、このすべてがハモった名コラボが世の中に刻まれ続けるということが素晴らしいのだと思う。さらに “青い季節”ではレーザー光線とみずみずしいメロディが弾け、“Early summer rain”では銀テープが吹き出て、“ヤングアダルト”ではダンサーのめろちんが登場。そして、ステージにはケーキが現れ(祝大人、と書かれてました)♪ハッピーバースデー、を大合唱……とにかく、華やかなムード。でも、確実に終わりは近付いてきた。

小さなライヴハウスで見た記憶が蘇るくらい変わっていなかった“Kissing blue memories”、大合唱の“エンドロール”を経て、おもむろに松岡が語り出した。「あなたと出会っていなかったら、SOPHIAは続いてこなかったでしょう」――と、2010年に都が悪性リンパ腫に羅患したこと、そこから復活できたからこそ、もっとSOPHIAを大切に思い、自分たちの決断で活動を休止させようと思ったことを、丁寧に説明していった。あなた、というたった一人に向けて語るところが、何とも彼ららしい。そして「俺たちもみんなも、いつの間にか大人になりましたね。自分のケツは拭ける大人になりたいし、なって欲しい」と、共に人生を歩んできた仲間ならではのメッセージ。「前に進んでいたら、曲がり角で会えるよ。会いたいもん」と、人間臭い本音を零して、ニューアルバム『未来大人宣言』から“未来大人宣言”、“happy birthday to you”と、最新の楽曲で思いを届けて、一音一言がズシリと響いた“Thank you”へ。

SOPHIA @ 日本武道館
そして、5人全員が前に進み出て、豊田“ジル”和貴(G)は「SOPHIAがもっと愛するバンドになった」、黒柳能生(B)は「大変だった思い出も笑って喋れたら」、赤松は「街で見たら声掛けて。さみしいもん!」と、各々らしく最後の言葉。やはり特に響いたのは都の「また会おう、生き抜こう、俺も生き抜く!」だった。そう、誰かがいなくなってしまったら、復活はありえないのだから……。啜り泣きだけではなく嗚咽まで聞こえる中、松岡は「最後に一曲。この曲を未来のSOPHIAに繋げたい」とだけ言い、アカペラで未発表曲の“WHITE”を歌い出した。未発表曲で終わるところに、絶対にこれが最後ではないと思えた。これは、はじまりなんだ。

SOPHIA @ 日本武道館
気付けば全28曲、3時間半越え。それでも、スタッフロールが流れる中、BGMの“月光”を歌い続けるオーディエンス、手を振り続ける5人。いよいよステージには誰もいなくなり、映し出されたのは松岡からのメッセージ。「SOPHIAの旗は降ろさない」、「また、逢おうね」、「次は獅子に翼(=数年に一度開催している、スタジアム・クラスのライヴ)がいいね」……もしかして、彼自身も名残惜しいのではないだろうか? そんなことさえ思ってしまった。これだけ約束してくれたのだから、次がないわけがないだろう。誠実に「あなた」と向き合ってきたバンドが、充実した状態を迎えて復活を遂げる時を、期待して待ちたいと思う。(高橋美穂)

SOPHIA「SOPHIA TOUR 2013 未来大人宣言」
01. Eternal Flame
02. Believe
03. ヒマワリ
04. little cloud
05. ゴキゲン鳥 ~crawler is crazy~
06. 黒いブーツ~oh my friend~
07. 街
08. CIRCUS
09. ALIVE
10. Place
11. 理由なきNew Days
12. one summer day
13. 僕はここにいる
14. 旅の途中
15. HARD WORKER
16. STRAWBERRY & LION
17. 青い季節
18. 蜘蛛と蝙蝠
19. Early summer rain
20. KURU KURU
21. ヤングアダルト
22. cod-E ~Eの暗号~
23. Kissing blue memories
24. エンドロール
25. 未来大人宣言
26. happy birthday to you
27. Thank you
28. WHITE
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