ディスクロージャー&アルーナジョージ @ LIQUIDROOM ebisu

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たとえば、ジェイク・バグやザ・ストライプスといった若者たちがロックンロールの王道ど真ん中を奪還した新世代だったとしたら、このディスクロージャーやアルーナジョージはダンス・ミュージック/ポップ・ミュージックを鮮やかに更新しようとしている新世代である。ディスクロージャーとアルーナジョージの初来日公演がこうしてダブルヘッドライナー公演として実現したことも、彼らの新世代感をより強く濃く証明する一夜になったと言える。リキッドルームはソールドアウトの超満員。いち早く彼らと遭遇できるチャンスを逃してはいけないという直感でこの場に集ったオーディエンスの熱気が開演前からむせかえっていた。

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先行として登場したのはアルーナジョージ。アルーナ・フランシスとジョージ・リードの2人組である彼らだが、ライヴではそこにベーシストとドラマーが加わった4人編成でのパフォーマンスになる。デビュー・アルバム『ボディ・ミュージック』収録の“Just a Touch”で幕を開けたこの日のショウ。まず驚いたのが低音のヴォリュームだ。ジョージが繰り出すダウンビートとバスドラのキック、そしてぶっといベースがのっけから最大出力で放たれ、フロアの振動が身体に伝わって膝の裏がビリビリする。そう、土台はハードコアだしかつエッジーな彼らの音楽だが、その上でデザインされるメロディとフロウは圧倒的にポップでわかりやすい、というのがアルーナジョージにもディスクロージャーにも共通する感覚だ。

ディスクロージャー&アルーナジョージ @ LIQUIDROOM ebisu
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それこそセクシーなヘソ出し&ミニスカートで腰をくねらせ踊るアルーナなんて、デスティニー・チャイルド時代のビヨンセを思わず彷彿とさせるような瑞々しいアイコンだし、そんなアルーナの横で2010年代のナードの典型みたいなルックスのジョージがぴっちり襟まで止めた地味なシャツ姿で黙々とビートを繰り出している様も最高にクールで今っぽい。中盤以降は、ジョージのヲタクっぷり満載のインストを聞かせたり、よりアブストラクトでタフなダブステップに突入したりと、歌モノのキャッチーさだけではない彼らのヴァラエティ豊かな音楽性を証明するナンバーとライヴ・アレンジが続き、まだまだ青写真の段階だが今後の飛躍に期待させる流れとなった。そして、“Lost and Found”、ラストの“Your Drums, Your Love”ではフロアの隅々までウェイヴが広がる。大歓声を上げるオーディエンスの写真を嬉しそうに撮っていたジョージ、そしてアルーナは両手でハートマークを作って去っていく。くー! 最後までキュートでキャッチーだ。

そんなアルーナジョージ後の転換は約30分。ステージ上はアルーナジョージのバンド・セットからディスクロージャー用のダンス・セットへとすっかり様変わりする。シンメトリーに配置されたデスクには、それぞれこれまたシンメトリーにデスクトップとサンプラー、シンセ、エレクトリック・ドラムや各種パーカッションがセッティングされている。そして、いよいよ大歓声に迎えられてディスクロージャーの2人が登場する。デビュー・アルバム『セトル』は全英1位の大ヒット、そのブレイクは世界にも伝播し、もちろんここ日本にも伝わってきている。ジェイク・バグと並び立つUK新世代の雄であるディスクロージャーは、ガイとハワードのローレンス兄弟によって結成されたデュオ。弟のハワードはまだ10代で、あどけなさが残るルックスをしている。

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“F For You”でスタートしたこの日のショウの構成はまさにダンス・アクトのそれで、数曲ずつシームレスに繋がれ、その数曲毎にきっちりピークタイムとチルアウト・ブレイクを作っていく。そんな中で、オープニングはガイとハワードの生歌がフィーチャーされたセクションで、生ベースとパーカッションも多用してショウ全体の中でも一番バンドっぽい部分が表れていたスターターだったとも言える。“When a Fire Starts to Burn”を終えたところで「トキオー! ウィー・アー・ディスクロージャー! ハイ! アリガトー!」とガイが挨拶して“Boiling”へ。ここからは女性ヴォーカルのサンプリングを多用したガラージ~ハウスのセクションで、オープニングから一転してメロウでシルキー、そしてびっくりするほど洗練されたダンス・ポップが続く。音数はミニマムなのだが、熟達したエンジニアやプロデューサーの采配で取捨選択されたかのような完璧なポップスのミニマリズムなのに驚かされる。しかも恐らく2人は熟達したエンジニアやプロデューサーが経験に則って獲得したそのミニマリズムを、最初からそうあるべきかたちとしてポーン!と鳴らしてしまっている、そんな身も蓋もなさが何よりも彼らの新世代感なのだ。

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「日本語あんまりしゃべれなくて悪いんだけど、えーと、コンバンハ!ぼくらにとって初の東京でのショウだよ。ほんとにアメージングでびっくりしてる」と言って始まったのが“You & Me”。彼らの最新アンセムと言うべきこのナンバーのトライバルなリズム・シークエンスを皮切りにショウはクラブ・ミュージック、レイヴ・モードに移り変わっていく。ここの流れではアルバムを聴いただけでは分からなかった現在進行形の部分をまざまざと見せつけられる。ディスクロージャーはその若さに似合わずミニマルで洗練されたダンス・ポップ・ユニットであるだけではなく、その若さが爆発したガツガツ前のめりな、今まさに吸収・成長の真っ最中のダンス・アクトでもある。そんな彼らの底知れぬポテンシャルに興奮させられる格好だ。

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“White Noise”ではアルーナがゲスト・ヴォーカルで再登場し、場内はこの日一番の盛り上がりを記録する。そして“Voices”以降はまさにノンストップ・ミックスでラストの“Latch”めがけ、ステージの2人のフロアのオーディエンスが一丸となって突っ走っていく。このステージとフロアの垣根を無に帰し完全に一体化した高揚感も久々に感じたもので、“Latch”が遂に鳴った瞬間のエクスタシーは凄まじかった。その瞬間を捉えようと構えられたスマートフォンの液晶画面の光がいたるところで点滅し、フロアの後方から眺めるとステージの2人が星空の上に浮いているように見える。それは2013年の現在進行形の共時性って、ここにあるんじゃないかと感じさせてくれた瞬間だった。(粉川しの)

ALUNAGEORGE setlist
Just a Touch
Kaleidoscope Love
Best Be Believing
Outlines
You Know You Like It
(The Jam)
This Is How We Do It (Montell Jordan cover)
Attracting Flies
Lost and Found
Your Drums, Your Love

DISCLOSURE setlist
F For You
When a Fire Starts to Burn
Boiling
Tenderly
Flow
You & Me
Stimulation
Grab Her
White Noise(Ft.Aluna)
Voices
What’s In Your Head
Confess To Me
Running (Disclosure Remix)
Running (Disclosure Vip Rimix)
Help Me Lose My Mind
Latch
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