これぞ選ばれし者の歌声。観客の魂を震わせた、紫 今の初にして圧巻のワンマンライブを速報レポート!

これぞ選ばれし者の歌声。観客の魂を震わせた、紫 今の初にして圧巻のワンマンライブを速報レポート! - All photo by 河島遼太郎All photo by 河島遼太郎
少し緊張しながら会場に向かった。これまでインタビュー記事などでも伝えているように、私は紫 今を本気ですごい人だと思っていて、相当プッシュし続けている。この人は音楽シーンのど真ん中に立って引っ張っていく存在になる、そんなことを想像しながら彼女の魅力を言葉にし、何度も彼女から貴重な発言を預かって、世の中に発信してきた。そんな紫 今にとっての人生初ワンマンライブ。幼い頃から両親におぶられながらアフリカンミュージックを浴びて、母親からブラックミュージックの歌とグルーヴを鍛えられてきた紫 今が抜群の歌力を持っていることは、楽曲によって(もっといえば楽曲内のパートごとに)異なるボーカルを操っている音源からも十分に伝わってくるが、生の歌には、ワンマンライブには、どんな魅力が宿るのか。それは目撃してみないとわからない。そんな気持ちで会場に向かった。

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紫 今は、本物だった。アーティストの「本物」「偽物」ってなんだよ、と思われて当然だし、「本物」なんて、凄さをひと言で簡単に伝えるうえでのただの便利な言葉だとも思う。それでも、彼女の生歌を聴いて浮かんできた言葉はそれだった。「自分が歌いたいから歌っている」「好きだから音楽をやっている」という域を超えて、自分の歌を通して世の中や文化をよりよくする役割を与えられた人、歌から「あなたはもっとすごい歌を歌えるようになりなさい」という使命を受けている人だと思った。この日、人々と交差させたたっぷりのエネルギーと圧倒的なカリスマ性を纏って、最後、マイクを使わずに生声で「紫 今でした。また、遊ぼう」と挨拶して去る姿は、そう強烈に確信させるものがあった。

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紫 今は、人生初ワンマンライブをフェイクまじりのシャウトで始めた。ちょうど「SUMMER SONIC」にてクリスティーナ・アギレラのライブを見た際、紫 今のことを考えていた。圧倒的なボーカリゼーション。マイクを口から離しているのに伝わってくる、ものすごい声量。喉の震えにこちらの心が震える。全身を使って美しさと力強さと人間の可能性のかたまりを放出する。ソウルフルなR&Bの歌い方を習得しているだけでなく、自分で曲を書くことができて、社会で声をあげられない人たちの声を代弁し解放させるようにメッセージを発信して、しかも音楽だけでなくファッションなどにもこだわって総合アートをクリエイトする──それをやっている人を今の国内シーンで探すと、真っ先に思い浮かぶのが、紫 今だった。

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「いい歌」とは何か。それはただ「巧みなテクニックを身につけている」「ピッチが安定している」だけでは当然成立しない。それを聴いた人に何かを感じさせて、その人の心を少しでもいい方向へと動かすものこそが「いい歌」だと言えるだろう。紫 今の歌は、大地からエネルギーを吸い上げて、自分の身体を通して人々へ届けるものだった。人間にとって本来大切なことや、社会の中で見失いがちなことに気づかせてくれる歌。誰かの人生に刻まれて、節目や必要な時にこそ思い返される歌。そういうものがいくつも鳴っていた。

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たとえば、“ギンモクセイ”。これは紫 今にとって最新曲にして最高傑作である、とライブを観て思った。《どうか気づいてあなたは綺麗だ》《ハッピーエンドは/あなたが決めればいい》の《あなた》で腕を前に伸ばし、目の前にいる人たちに手のひらを差し出した時、紫 今は、目に見えない何かから力を託されているかのごとく、ちょっと神秘的でもありながら、とてつもないパワーを纏っているように見えた。さらに、痛みに入り込むようにして繊細に震わせた声から、フェイクを交えてパワフルな高音へ声を伸ばし、最後のサビに入っていく流れが圧巻。歌で人を癒す、その人があるべきところへと導く、そういうパワーを持っている人だと思った。

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“魔性の女A”についても触れておきたい。クラシック、アフリカンミュージック、ファンク、80年代シティポップ、K-POP、ロックなど、パートごとに国や時代の異なる音楽性を繋げていくこの曲を、ライブでどう再現するのだろうかと思っていたが、パートごとに歌の表現も、表情も、身振り手振りもコロコロと変えながら、見事に様々な年代・国の美しい女性を演じきっていた。十人くらいのボーカリストが歌い継いでいるようなことを、ひとりでやりきっていたのだ。しかもそんなテクニカルな曲なのに、《クレオパトラも見惚れちゃう》という大合唱が起こるポップミュージックとしての機能も兼ね備えているから凄まじい。

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最初はフードをかぶって登場した紫 今だったが、“魔性の女A”で上着を脱いで赤色のドレス姿になり、その次の“Not Queen”は自身の髪の毛や身体を触りながら妖艶に魅せた。それぞれの楽曲において、ステージをどのように使って、どのように身体を動かして魅せるのか、しっかりと準備が尽くされていたように見えた。右手でマイクを持ちながら、左の腕を挙げた時に曲げる手首の角度、そんなところまで見事に計算されているようだったし、髪型も含めて、パーフェクトなシルエットだった。さらにいえば照明も、たとえば“Server Down”ではサビの「♪サー・バー・ダウン」のテンポにあわせて曲のイメージカラーである青色が光ったり、“無言電話”では横から白い光が1本射して孤独を際立たせていたり、この規模のライブハウスで可能な限り照明の演出も作り込んでいて、彼女の脳内にある曲の世界観が伝わってきた。

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そもそもびっくりしたのは、初のワンマンライブを新曲から始めたことだ。しかも、なんと2曲連続。すごい度胸だと思った。そのうち1曲は、1年以上前に一部だけSNSに投稿された“正面”で、もう1曲(オープニング曲)は、終演後に話を聞いたところ、このライブのために書き下ろしたそうだ。ライブの冒頭にオーディエンスのボルテージを上げる楽曲が必要だと判断したゆえだと思うが、バンドとともに熱量を爆発させながらしっかりと巻き込んで、新曲にもかかわらずコール&レスポンスが生まれるほど一体感を作り出していた。それは、紫 今がライブの構成に必要な音を理解し、緊張などにも飲み込まれず、大勢の人を目の前にして臆することなく、冒頭から最後までライブを掌握できる人であることを証明していた。何度も言うが、これが彼女にとって人生初のワンマンライブだ。

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もうひとつ驚いたのは、“凡人様”。この曲をライブでやるとこんなことになるんだ、と想像していなかった光景ができあがっていた。そもそもこの曲は2ステップ(最近よく「NewJeansが取り入れている」と紹介されることが多い、イギリス発祥の変則的なリズムが特徴のビート)で、彼女のルーツにあるボカロ音楽の要素も取り入れたものであるが、豪快なドラムが加わり、歪んだギターが鳴り響き、さらに紫 今の歌がみんなに掛け声をさせる誘発材となっていた。さらに「おいで」と煽り、オーディエンスをステージ前方に集めて飛び跳ねる。サビが繰り返されるたび、掛け声の熱は高まっていく。最終的に、目の前にはパンクバンドのライブフロアのような光景が広がっていた。紫 今は、シーンの垣根を壊して新しいものを作り出す。そんなエネルギーまで確信させた瞬間だった。

やっぱり紫 今は、この先も追いかけたいアーティストだと思えた。そう思う一番の理由は、彼女の歌は、この先変化していくものだと思うから。圧倒的なテクニックがあるうえで「魂」を乗せて届ける彼女の歌は、人生経験や心情・思想などによって深さや声色が変わっていくものだと思う。だからこそ、私は、その変化を何十年もかけて見届けたい。(矢島由佳子)

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