今年で2回目の開催となる、東京カランコロン主催の「ワンマ ソフェス2013」。渋谷O-west、O-nest、7th floorの3会場で合計17アーティストが出演し、各会場で入場規制がかかるライブが続出するほど大盛況なフェスとなった。
オーディエンスからの注目度が最も高かったバンドの一つが、phatmans after schoolだった。ライブ開演直前となっても、会場外には長蛇の列が続き、渋谷O-nestには入場規制がかかったほどだ。インストアのイベントを除くと初めての東京でのライブとあって、バンドも観客も気合い入りまくり。トレードマークのクマのお面を被って登場した彼らは、30分のステージとは思えないほど濃厚で濃密なステージを見せた。うねりを上げながらフロアを巻き込んでいく太いグルーヴ、どこまでも突き抜けていくようなメロディの疾走感で観客を牽引。ほとんどが彼らを初めて見たであろうオーディエンスをガンガンに熱狂させていく求心力たるや、すさまじいものがあった。“メディアリテラシー”とラストに披露した、新曲“ツキヨミ”での爆発的な盛り上がりたるや圧巻だった。
渋谷O-westに登場した藍坊主は、初期の名曲“ガーゼ”から9月に配信リリースされたシングル“宇宙が広がるスピードで”まで、新旧入り交じったセットリストで観客を大いに沸かせてみせる。「僕らは本当に東京カランコロンのことが大好きなんです」(藤森)と、まさかの東京カランコロン“ワンモアタイムをもう一度”をカヴァーするというサプライズまで披露。これがまた、Hozzyと藤森のツインヴォーカルで描かれる“ワンモアタイムをもう一度”は、藍坊主の新曲かと思ってしまうほどの出来で、会場は驚きと喜びの入り交じった歓声に包まれる。どんな楽曲だろうと、この4人が鳴らせば藍坊主の歌になってしまう。そんな彼らの威風堂々たる矜持すら漂うステージだった。ラストは“ホタル”の爽快な熱狂は、「ワンマ ソフェス2013」のハイライトの一つだっただろう。
ものすごいハンドクラップに迎えられて、渋谷O-nestのステージに登場したのはSAKANAMON。 “花色の美少女”、“マジックアワー”とたたみかけてフロアを笑顔で埋め尽くすと、“空想イマイマシー”では、おそらく東京カランコロンのライヴを見るために会場を後にしている観客に向かって、藤森元生(Vo/G)が「最後まで見ようよ〜」と東京カランコロンの“16のbeat”を替え歌で披露するという一幕も。これにはフロアも拍手喝采。森野光晴(Ba)が「東京カランコロンとツアーに回った時は、移動中の車内で(佐藤)全部さんと意外と熱い話をする」という意外なエピソードを披露しつつ、2年連続となる「ワンマ ソフェス」で堂々たるステージを繰り広げてみせた彼ら。アンコールでは新曲も披露し、“妄想ドライバー”でフィナーレ。そこに居合わせる誰もが笑顔で飛び跳ねてしまう彼らのステージは、眩しいほど痛快だった。
そして、高らかに鳴り響く“愛は勝つ”に乗って颯爽とステージに登場したのは、東京カランコロンの5人だ。もちろん、「ワンマ ソフェス2013」の大トリを飾るアクトである。佐藤全部はなぜか、肉と魚のクッションを手にステージに現れ、「肉! 魚! 野菜が足りない〜」と謎の第一声。いきなりの“泣き虫ファイター”で幕を開けた彼らのライブはもう、トキメキという名の宝石たちを渋谷O-westに巻き散らかしていくかのような、目まぐるしいほどカラフルで瑞々しさに満ちあふれている。“ハートフルホット”、“フォークダンスが踊れない”でフロアの興奮を加速させると、歪な心地よさを響かせる“永遠の19才です”で会場はハチ切れんばかりに集結したオーディエンスを一気に掌握してみせる。歌い終えると、「そそそそ〜」というコーラスの意味不明さについて、いちろー(Vo/G)とせんせい(Vo/Key)が笑って語る。昔の曲の歌詞は、自分たちでも分からないところがあるそうだ。
爽快な疾走感に満ちた“走れ、牧場を”、バラードナンバーの“指でキスしよう”という2曲の新曲を続けると、普段のライブではあまり演奏しない楽曲を演奏する、恒例の「ドキドキゾーン」へ。ここではメロウなナンバー“It’s more wonder”と“ララララ”が立て続けに披露され、フロアも2階席も観客でいっぱいの渋谷O-westに、なんとも親密で幸福な空気感が充満する。本当に、東京カランコロンのワンマンライブ会場のようだ。フロアの歓喜が爆発したのは、“いっせーの、せ!”。軽やかなサウンドにせんせいといちろーの歌声が絡み合って、爽快な高揚感を巻き起こしていく。オーディエンスからの大ハンドクラップに迎えられた“16のbeat”でさらに駆け抜けると、「〈1、2、1、2〉言う曲をやります」と本編ラストは“true!true!true!”で終了。「カッコいい」と「可愛い」と「面白い」が絶妙にブレンドされた東京カランコロンという世界が、観客の胸に鮮やかな感動を刻んでいった。
アンコールでは、11月リリースのニュー・アルバム『5人のエンターテイナー』収録の新曲“誰かのエンターテイナー”を5人がアカペラで歌うという展開に。今の彼らの思いをそのまま綴ったような歌詞と、5人のハートウォーミングなコーラスが、なんとも胸に熱く響いてくる。楽しそうに歌う5人の笑顔も、本当に心に染みた。アンコールラストは、バンド随一のメロウナンバー“ラブ・ミー・テンダー”。この空間を思い切り抱きしめるようなせんせいの甘い歌声が、「ワンマ ソフェス2013」のフィナーレに優しく響き渡った。(大山貴弘)