THE BACK HORN @ Zepp Tokyo

THE BACK HORN @ Zepp Tokyo - all pics by TEPPEIall pics by TEPPEI
「今日ここZepp Tokyoで、バックホーンの15年分を、そしてみんなのバックホーンに対するいろんな想いを、一緒にバックホーンの音楽に乗せて、凝縮して、胸に刻んでいく、そんな夜にしたいと思うんで。一瞬一瞬、一秒一秒を感じて、素敵な夜にしたいと思います!」という松田晋二の言葉に、満場のZepp Tokyoが雄叫びのような歓声に包まれる! THE BACK HORN初のカップリング集『B-SIDE THE BACK HORN』とニュー・シングル『バトルイマ』を引っ提げて、10月2日・横浜BLITZ公演を皮切りに全国10公演にわたって開催されてきた、THE BACK HORNの全国ツアー『「KYO-MEIワンマンツアー」~アナザーワールドエクスプレス~』もこの日が最終日。結成15周年アニバーサリー・イヤーを迎えた4人が磨き上げてきた、どこまでも鋭利で真摯で強靭な音世界が、オーディエンスとの確固たる信頼関係の中で熱く燃え盛る、至上のロック・アクトだった。

THE BACK HORN @ Zepp Tokyo
冒頭から黒のストラトを構えた山田将司が歌い上げる“異国の空”の、意気揚々とした躍動感で暗夜行路を進むような音世界で、いきなりZepp Tokyo丸ごと地底深くの決起集会のような不穏な空間へと叩き込む。そこへ、赤黒くとぐろを巻くロック・オペラ的な“赤い靴”が鳴り渡り……と、開演早々『B-SIDE THE BACK HORN』の楽曲でがんがん攻めていく4人。途中“サニー”や“生命線”といったシングル・タイトル曲を織り込みつつ、極太リフがミステリアスにうねる“ハッピーエンドに憧れて”、切なくもエモーショナルな“白い日記帳”など、本編15曲中8曲を『B-SIDE THE BACK HORN』の楽曲で構成し、よりディープでハード・エッジな世界を生み出していく。が、それらが渾然一体となって描き出すのは、たとえば最新作『リヴスコール』のツアーをはじめアルバム・リリース・タイミングのツアーとはまったく違うTHE BACK HORN像……かというと、さにあらずで、むしろ全身全霊を傾けて人間の核心に肉迫していくTHE BACK HORNの表現の「今」の剛性とダイナミズムは、どんな異なるパーツ(楽曲)を組み上げても雄々しいほどに揺るぎなくそびえ立っていく――ということを改めて厳然と示していた。

THE BACK HORN @ Zepp Tokyo
THE BACK HORN @ Zepp Tokyo
そして、すべてを焼き払うような菅波栄純&岡峰光舟のリフと松田のタフなビートに導かれて突入した“カラビンカ”。全身痙攣のように震わせながら激しく舞台を跳ね回る山田のアクションが観る者すべての狂騒感を煽り倒す中、菅波がスライドギター用のボトルネックをくわえて岡峰のベースと山田の(途中から構えた)ギターのネックにぐりぐりと迫ったり、最後はあのリフが菅波&山田のWギターで轟々と鳴り響いたり……獰猛なロックの化身と化した4人の野性が極限炸裂した、圧巻の名場面だった。この15年間の歩みに想いを馳せつつ、「地元を愛していきたいし、今はもう東京が第二のふるさとみたいになってるんだけど、それもまたよくて。大事な場所を胸に、これからも生きていきたいなって、気づかされますね」としみじみ語る山田のMC。そこから続けて披露したバラード“水芭蕉”のたおやかで雄大なメロディ。山田のアコギ・カッティングと菅波のハイブリッドなギターの音色が乱反射しながら、妖しくも美しい音像を描き出した“クリオネ”……自らの深淵を解き放っていくような言葉と楽曲の数々が、オーディエンスの情熱と高揚感を天井知らずに沸き返らせていく。

THE BACK HORN @ Zepp Tokyo
「ここ(Zepp Tokyo)でワンマンって何年かぶりで。久しぶりに帰ってきた感じなんですけど。いいですね東京、改めて」と、熱気あふれるフロアを見回す松田。「東京ワンマンって1月の武道館以来ってことで……一応ホームなのかな? 東京結成ってことで。結成してすぐ、大阪でライブやった時に、『あのー、東京から来ました、THE BACK HORNなんですけどー』(福島訛りで)って言ったら『嘘つけ!』っていう声が(笑)」と会場を沸かせつつ、「B面集出して、全国各地で濃密な夜を過ごしてきて……今歌いたい曲とか、今やりたい音楽とか、『こういうことを伝えていきたい』みたいな方向に向かっていくんだけど。でもやっぱり最終的には、聴いてるみんなの顔を想像しながら作ってるところもあって。こうやってライブで感触を確かめられるのは、とても嬉しく思います」と、このツアーで得た手応えを力強く語る松田に、大きな拍手が巻き起こる。そして、そこから「どうですか、みんな? ご三方?」と他の3人に話を振ったところから、MCは一気に脱線。菅波が突然「あのバンド、カッコいいよね」と楽屋で聴いていた音楽の話をし始めたり、「ベルトが取れそう」(菅波)、「さっきからずっといじってるよね?」(山田)、「『下半身をいじってる』って言い方やめて!」(菅波)とフロアを爆苦笑に包んでみせる。そんなやりとりを眺めていた岡峰、思わず「俺が警官だったら、公務執行妨害だよ(笑)。逮捕していいよね、あれね?」……といった凸凹MCもまた、会場の熱量をさらにぐいぐいと高めていた。

THE BACK HORN @ Zepp Tokyo
スタッフが自腹でメンバー4人に作ってくれたというトロフィー(「BEST ROCK BAND THE BACK HORN」と書いてあったらしい)を紹介しつつ、シングル『バトルイマ』のカップリング曲“雨に打たれて風に吹かれて”からライブは怒濤の終盤へ。場内丸ごと真っ白にスパークさせるような“真夜中のライオン”のサウンドスケープ! “ブラックホールバースデイ”の不協和音コードのキメに沸き上がるコール! “コバルトブルー”でZepp Tokyo一面に拳が突き上がりシンガロングの声が噴き上がる! そして、「みんなと歌いたいんだよ、次の曲は!」と山田。「また俺らがこうやって会うために、絶対みんな負けないでくれよな。自分にも負けねえようにさ、世の中にも負けねえようにさ……行こうぜ。行こうぜ!」のコールに、割れんばかりの大歓声! そのまま雪崩れ込んだ“バトルイマ”の、♪ウォーオーオオオーオーと巨大な地鳴りの如く轟く大合唱! 《今!》と幾度も繰り返される歌声に、魂の叫びで応えるオーディエンス。どこまでも感動的な幕切れだった。

THE BACK HORN @ Zepp Tokyo
アンコールで再びステージに現れた4人。ここで松田から、「12月23日に、『マニアックヘブン』やります!」の発表が飛び出す。普段のライブではやらないインディーズ曲/レア曲まで、選曲はもちろん演出まで含めメンバー自身によってマニアックに構成されるスペシャル・イベント『マニアックヘブン』、実に2年ぶりの開催!のアナウンスに、歓喜が瞬間沸騰したような大歓声が満場のZepp Tokyoを震わせていく。「去年は『リヴスコール』のツアー中でできなくて。今年は15周年っていうタイミングで、最後の最後にみんなと一緒に、熱い、濃縮したライブをやりたいなと思って」と松田。抑えきれない会場の興奮を“舞い上がれ”の優しい歌と山田&菅波の麗しのアルペジオで抱き止めた後、激烈エモーショナルな“涙がこぼれたら”“光の結晶”連射で完全燃焼して終了!――かと思いきや、アンコールを求めて鳴り止まない手拍子に応えて三たび4人がオン・ステージ! Wアンコールの“刃”を爆演する菅波&岡峰に、騎馬戦の要領で強引によじ昇ってみせながら、エネルギーの最後の一滴まで絞り出すように絶唱する山田。そんなカオスな光景ごとロックの彼方へぶん投げるような松田のパワフルなビート……時代と向き合い続ける覚悟を胸に、形振り構わずロックと狂騒の果てへと突き進むその姿が、観る者すべての衝動を激しく震わせながら、最高の一夜の終わりを鮮烈に彩っていた。

THE BACK HORN @ Zepp Tokyo
「15年振り返るばっかりじゃなくて、ここからどんどん新しい道を歩んでいきたいと思うし。その道の途中とか、行く先に、みんながまた一緒にいてくれたら、嬉しいなと思います」と松田は語っていたが、15年のバンド・ヒストリーと「今」の充実感と「その先」への闘志が惑星直列して途方もないパワーを放つような珠玉のステージを、この日のTHE BACK HORNは確かに見せてくれた。12月23日に新木場STUDIO COASTにて開催される『マニアックヘブン Vol.7』では、THE BACK HORN初の試みとして、セットリストの楽曲投票が実施されるとのこと。15周年アニバーサリー・イヤーを締め括るこのライブはどんなものになるのか?と、ライブを観終わったそばから心待ちにしている。(高橋智樹)

[SET LIST]
01.異国の空
02.赤い靴
03.サニー
04.ハッピーエンドに憧れて
05.生命線
06.白い日記帳
07.カラビンカ
08.水芭蕉
09.夢の花
10.クリオネ
11.雨に打たれて風に吹かれて
12.真夜中のライオン
13.ブラックホールバースデイ
14.コバルトブルー
15.バトルイマ
Encore 1
16.舞い上がれ
17.涙がこぼれたら
18.光の結晶
Encore 2
19.刃
公式SNSアカウントをフォローする
フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on