きゃりーぱみゅぱみゅ @ 横浜アリーナ

きゃりーぱみゅぱみゅ @ 横浜アリーナ - All pics by aki ishiiAll pics by aki ishii
アリーナの扉を開けた途端に目に飛び込んでくるのは、巨大なステージいっぱいにそびえ立つお城。そして、開演前から動物の顔をした道化師たちが皿回しやディアボロなどのパフォーマンスで観客を沸かせている図が、「きゃりーぱみゅぱみゅという名のテーマパーク」への期待感を刻一刻と高めていく……きゃりーぱみゅぱみゅ初の横浜アリーナでのワンマンライヴ『きゃりーぱみゅぱみゅのマジカルワンダーキャッスル』。前日(18日)の公演と合わせて2日間で実に約2万4千人を動員した今回のステージは、壮大なセットやファンタジックな演出よりも、「2014年はスーパーきゃりーぱみゅぱみゅに進化する」と宣言していた彼女の存在こそが巨大なポップ・ワンダーランドであることを完全に表現しきった、珠玉のアクトだった。

「ここは、遠くて近いところにある、もったいないとらんど。街の中心にそびえ立つ大きなお城には、心優しいプリンセスが……」。暗転したステージに響くナレーションが、呪いの使者らの手によってお城が呪いの大樹で覆われてしまった、と伝える。「お城に閉じ込められてしまったかわいそうなプリンセス。プリンセスを助けようと立ち上がったのは、この国を守る勇敢なナイト、動物騎士団。そして、プリンセスの心の友、妖精ポイパポイパ。果たして、もったいないとらんどに再び平和は訪れるのでしょうか?」……そんなナレーションと共に、舞台から長く伸びた呪いの使者・ジュモーヌが術をかけると、青白い光に照らされたお城は見る見るうちに呪いの大樹(の形をしたバルーン)に呑み込まれてしまい、BGMが不穏な空気を描き出す――そこへ響く“ファッションモンスター”のドラム・イントロときゃりーぱみゅぱみゅの歌声! スポットライトに照らされた彼女はプリンセス姿……かと思いきや、なんと「騎士きゃりー」の姿で、真っ赤なマントをたなびかせながら、天井から颯爽と登場! アリーナの空気が瞬間沸騰ばりの熱量で満たされたことは言うまでもない。満場の客席を色とリどりのサイリウムが彩っていく。

きゃりーぱみゅぱみゅ @ 横浜アリーナ
きゃりーのライヴでお馴染み「きゃりーキッズ」扮する「妖精ポイパポイパ」、動物マスクを身につけた「動物騎士団」が入れ替わり立ち替わり登場する中、“さいごのアイスクリーム”のパラパラをモチーフにしたダンスでフロアを軽快に揺らした後、一輪車に乗って花道へと移動して“キミに100パーセント”を披露したところで、「みなさーん、こんにちは! きゃりーぱみゅぱみゅでーす!」と呼びかける彼女の声に、ひときわ熱い歓声が湧き起こる。「今回はお城をコンセプトにライヴを進めていきたいなと思います。小さいお子さんもたくさんいると思いますので、今日は『ライヴに来ている』というよりは『テーマパークに遊びに来ている』ような感覚でライヴを楽しんでいただけたらいいなと思います!」というきゃりーの言葉通り、“くらくら”では動物騎士団とともに剣を振り回し、“ふりそでーしょん”から流れ込んだ“み”では宙吊りになってステージ上空高く飛び上がり、高々と噴き上がるファイヤーボールの特効とともに、大樹はあれよあれよと姿を消し、お城を解放することに成功! すると、今度は大きなティアラきらめくお姫様スタイルの「プリンセスきゃりー」として再び登場、“みんなのうた”の快活な歌で満場のクラップを生み出していく。

きゃりーぱみゅぱみゅ @ 横浜アリーナ
最新アルバム『なんだこれくしょん』はもちろん、1stアルバム『ぱみゅぱみゅレボリューション』まで一気に大開放して、ひとつの大きなストーリーを描き出すようなこの日のアクト。それこそミュージカルばりに演出満載のライヴで濃密な祝祭感を描き出しながら、“きゃりーANAN”“インベーダーインベーダー”“のりことのりお”など、あくまで「みんなのうた」としてのきゃりーの音楽が揺るぎない軸を成していた。「アンコールまで含め23曲のうち実に18曲がタイアップ曲」というだけでも、時代の真ん中を闊歩するアイコンとしてのきゃりーぱみゅぱみゅをこの場にいた誰もが感じたはずだが、何より驚いたのは、曲ごとにまったくテーマや目的の異なるタイアップ曲群が多数を占めたこの日のライヴが、他でもない「きゃりーぱみゅぱみゅの世界」をでっかく立ち上がらせていたことだ。きゃりーが時代の中で踊っているのではなく、時代そのものをその表現世界の中に抱き締めている……というような感覚を覚えるほど、彼女が体現する世界は目映く、鮮やかだった。

「今までいろんなコンセプトでライヴをやってきていて。遊園地だったり、サーカスだったり、前回は宇宙船でしたね。今回は『マジカルワンダーキャッスル』ということで、お城がテーマになってます!」と、今回の2デイズ・ライヴの「登場人物」=「プリンセスきゃりー」「騎士きゃりー」「動物騎士団」「動物音楽隊・道化師」「妖精ポイパポイパ」や悪役「呪いの使者ジュモーヌ」「デビルプラネッツ」をデザイン画とともに紹介していくきゃりー。客席にひしめく子供/大人問わず多数のコスプレ姿が、ステージ左右のヴィジョンに映し出されるたびに、きゃりーのコメントとともに拍手が広がっていく。

この2デイズ・ライヴでライヴ初披露となった“すんごいオーラ”からライヴは後半へ。“Point of view”から“おやすみ”“ぎりぎりセーフ”の流れの後、きゃりーの出世作的ナンバー“つけまつける”へ。オーディエンスが高く掲げる手がひときわ熱く揺れ、横浜アリーナが高揚感で満たされていく――と、曲の途中で悪の手下・デビルプラネッツが登場。曲が中断、プリンセスきゃりーがライフルで撃たれてしまう! 血の色に染まって倒れるきゃりー。駆け寄る妖精……すると、赤く染まったドレスのまま、きゃりーは立ち上がり、最後まで“つけまつける”を披露。「不死身のきゃりーぱみゅぱみゅ」の躍動感あふれる姿に、場内の熱気が感激とともに天井知らずに高まっていく。

きゃりーぱみゅぱみゅ @ 横浜アリーナ
ここで再びきゃりー退場、フロア天井から現れた忍者たちとデビルプラネッツが、ヴァイオリニストの奏でる“にんじゃりばんばん”に乗せてダンス合戦を披露したところに、今度は電飾付きのピンクのドレス&大きなゴールドの屏風を背負った姿に進化したきゃりーが登場! 生ヴァイオリンをフィーチャーしてさらに華麗さを増して響く“にんじゃりばんばん”。さらに“おとなとこども”から“PONPONPON”で満場のクラップを巻き起こした後、ラストを飾ったのは今回のライヴのテーマ・ソングと言うべき“もったいないとらんど”。《華やかな街をゆく明日消えるキラキラなんて もったいない もったいない ほら一緒にもったいないとらんど》というサビが最高の時間をひときわ鮮烈に輝かせる中、動物騎士団に花道に引っ立てられてきた悪役のデビルプラネッツが偽きゃりーに変身! 立場を超えてみんな一丸となって“もったいないとらんど”のメロディを全身で謳歌していく場面が、ワンダーランドのフィナーレをこの上ない多幸感で飾っていた。

鳴り止まないアンコールの手拍子に応えて、Tシャツにウサギの耳の被り物できゃりー登場。「私は2011年に“PONPONPON”という曲でデビューさせていただいて、武道館公演をしたりとか……最初は渋谷のクアトロというハコでライヴをさせていただいてから4年が経ちました。たくさんの人にお世話になってる中で、デビューして3年目で、こうして横浜アリーナという大きなステージに2日間立てるということは、いつも応援してくれているファンのみなさんのおかげです!」としみじみと感謝を伝えるきゃりー。「いやー、初めてこんなに大きいところでライヴをさせていただいたんですけど、めっちゃくちゃ楽しかったです! 本当にありがとうございました!」と喜びと充実感をあふれさせる彼女の言葉に応えて、惜しみない拍手が湧き起こっていく。「2月からはワールド・ツアー第2弾が決定しているので、また海外に行ったりとか、みなさんの前でライヴをさせていただける機会が増えるかなとは思いますが、ここで、2月に発売されます新曲を……」と、2月26日にリリースされるシングル曲“ゆめのはじまりんりん”を披露。卒業シーズンのセンチメンタルな想いを、軽やかなビートと弾み回るメロディに乗せて放つこの新曲が、きゃりーの進化の「その先」を照らし出すように鳴り渡った。この日の正真正銘のラスト・ナンバーは、ツアー定番の“ちゃんちゃかちゃんちゃん”。《see you again》《see you next time》とリフレインされる歌声が、満場のオーディエンスのクラップと響き合って……終了。タイトル通り、どこまでも高純度な魔法そのもののようなステージが、こうして幕を閉じた。

2度目のワールドツアー『KPP NANDA COLLECTION WORLD TOUR 2014』は、2月13日のシアトルを皮切りにアメリカ5都市&カナダ・トロントをまわった後、オーストラリア/香港/フランス/ドイツ/イギリス、日本凱旋公演=5月17日・18日のZepp Tokyo公演を挟んで台湾/シンガポール/タイの合計11ヵ国・地域/16公演にわたって開催される。2014年・きゃりーぱみゅぱみゅの劇的進化は、まだまだこれからが本番!ということをリアルに感じた一夜だった。(高橋智樹)

セットリスト
01.ファッションモンスター
02.さいごのアイスクリーム
03.キミに100パーセント
04.くらくら
05.ふりそでーしょん
06.み
07.みんなのうた
08.Super Scooter Happy
09.CANDY CANDY
10.きゃりーANAN
11.インベーダーインベーダー
12.のりことのりお
13.すんごいオーラ
14.Point of view
15.おやすみ
16.ぎりぎりセーフ
17.つけまつける
18.にんじゃりばんばん
19.おとななこども
20.PONPONPON
21.もったいないとらんど
Encore
22.ゆめのはじまりんりん
23.ちゃんちゃかちゃんちゃん
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