9mm Parabellum Bullet/all pics by RUI HASHIMOTO (SOUND SHOOTER)
THE BACK HORNこれぞ、対バン。ザッツ、決闘。2009年『大惨事目眩対戦』以来となる、9mm Parabellum BulletとTHE BACK HORNの2マン・ツアー『決闘披露宴』が、この3月に全7公演のスケジュールで開催された。東北ライブハウス大作戦で知られる宮古・大船渡・石巻の3店舗に始まって、福島いわき、そして大阪、名古屋、東京と各公演が行われるはずだったのだが、THE BACK HORN・菅波栄純(G.)がインフルエンザを発症したため、いわき公演は4/10のclub SONICに振替公演が設けられた。今回レポートをお届けするのは、THE BACK HORN・松田晋二(Dr.)が語るところの「旧ファイナル」こと東京公演の模様なので、いわき公演を楽しみにしている方は、以下本文の閲覧にご注意を。
THE BACK HORN『決闘披露宴』特製のバックドロップを背負い、オープニングSEを押し返すように鳴り響くオーディエンスのクラップ。その中を、まずは先攻のTHE BACK HORNが登場だ。栄純のギター・フレーズが閃光のように駆け抜け、やり切れない日常の光景から戦いを始める“光の結晶”が、パフォーマンスの幕を切って落とした。フロアからは、白熱の戦いぶりを見せてくれ、と言わんばかりの声量でOIコールが上がり、山田将司(Vo.)は昂ったシャウトを繰り出してそれに応えるのだった。“声”から“バトルイマ”にかけてはまさに戦いのど真ん中。岡峰光舟 (Ba.)のベース・ラインが激しくのたうち回り、赤・青の照明に半々で染め抜かれたステージはまるで血管のように目に映る。マツが5年ぶりの2マン・ツアーにかける思いを込めて挨拶を挟むと、この後に披露されるのは2月にリリースされた最新シングル『シンメトリー/コワレモノ』収録の“コワレモノ”だ。鋭利でファンキーなビートが立ち上がり、栄純のギターは不穏なミニマル・フレーズを刻んでゆく。暗がりのステージに情景をくっきりと浮かび上がらせてしまうような、音と言葉の効力がヤバいナンバーである。
THE BACK HORN
THE BACK HORN生き難さを率直に描き出し、暴くことこそがTHE BACK HORNの戦いだ、とでも言うような“ジョーカー”や“雨”が襲いかかり、かと思えば底なしの優しさを歌った“世界中に花束を”は、オーディエンスの温かい拍手を呼ぶ。「この東京がファイナルということで収まる予定だったんですが、神様が福島でファイナルやれってことで(笑)。そういうつもりじゃなかったんですが」と語るマツの脇で、申し訳なさそうに頭を垂れる栄純。ともに福島県出身である。マツは「この時代を共に生きて、鳴らすべき音楽を鳴らしてる。高め合ってる姿を観てくれて、ありがとうございます!」と続け、4/9 リリース予定のニュー・アルバム『暁のファンファーレ』については「今、鳴らすべき音が籠っていると思います」と自信に満ちた一言。山田が「先月出たシングルをやります。みんな、歌ってくれるか? 歌ってくれよーっ!!」と言い放って届けられる“シンメトリー”は、確かな足取りで力強く歩を進める、バンドにとっても大切に育て上げられた1曲だ。そして岡峰の暴れベースが切り出す“コバルトブルー”からは、怒濤のシンガロングにまみれる必殺ナンバー連打へ。汗でずぶ濡れの髪を搔き上げた山田が「また会おうぜ! THE BACK HORNでした!!」と晴れやかな表情で“刃”を歌うまで、新作の充実したヴァイブをいち早く伝える、激闘60分であった。
9mm Parabellum Bulletさて、続いては9mm Parabellum Bulletだ。菅原卓郎(Vo./G.)の挨拶から4人一斉の音出しを一発、中村和彦(Ba.)はその瞬間に早くも高々と足を蹴り上げる。そして鋭利にして鮮烈なサウンドと共に、オーディエンスとのコミュニケーションを推し量る“Answer And Answer”が叩き付けらた。涼しい顔をして満場のオーディエンスを跳ね上がらせるかみじょうちひろ(Dr.)の猛烈なビート、激しいアクションとギター・プレイの合間にきっちりとハーモニー・ヴォーカルを加えてゆく滝善充(G.)。フィニッシュで卓郎が軽くガッツ・ポーズを決めると、立て続けに“The Revolutionary”、“Vampiregirl”といったナンバーで激流の如きパフォーマンスを披露していった。『決闘披露宴』どころか革命だし、妖艶極まりない夜会である。そして“荒地”までを一気に駆け抜けると、「いやいや、『決闘披露宴』ファイナル、いやさ旧ファイナルへようこそ。言葉の上では旧ファイナルですが、俺たちには関係ないよね。もう、みんな燃え上がってるよね。さすがバックホーン」「俺たちも、このひと月の間に成長したと思うので。昨日の俺とはひと味違うぞ、みんな」と、こちらも自信満々に告げる卓郎である。
9mm Parabellum Bulletその言葉どおり、驚異的なスピードでエモーションを刻み付ける“The Lightning”の最中にも卓郎はアドリブの言葉で煽り立て、一方滝は“悪いクスリ”で雄弁極まりないリフやギター・フレーズを注ぎ込んで来る。「今から、バックホーンのニュー・アルバムの話をしようと思ってるんだけど、一足先に聴かせてもらって……いいだろう!! 羨ましかったら、みんな対バンしようぜ!」「一曲目を聴いた瞬間に、あ、だめだ、これは名盤だと思って。でもどうしても、全曲聴く時間がなくて」「メロディも、リズムも、バックホーンの音楽の冒険が詰まってます。いやあ、凄いわ! この一言で最後にします。『暁のファンファーレ』というタイトルは、バックホーンに名付けられるのを待っていた言葉だと思います」といった調子で、 もはや自身のことのように熱弁を振るいまくる卓郎であった。
9mm Parabellum Bullet音の鮮烈さの中にも、たっぷりと情感や物語性を込める“キャンドルの灯を”や“The World”を繰り出し、卓郎は改めてTHE BACK HORNとの2マンについて「何が起こるか分からない世の中、何が起こってもおかしくない世の中で、バックホーンも9mmも鳴らすべき音楽を鳴らしてる、って言ってくれて、ありがとうございます」「音楽の混ぜ方、ミックスの仕方が近いな、と思ったりもして。(THE BACK HORNが)年上なんだけど、生意気な言い方をすると、仲間だと思っています。みんなも、仲間になってくれるか? ここに来てくれてる時点で既に仲間だよ。どうもありがとう!」と語る。「何が起こるか分からない世の中にも、ひとつだけハッキリしていることがあって、5/7にライヴDVD(『act O』と『act E』。限定盤には2ディスク+1のセット仕様も)が出ます(笑)」と、ここでようやく9mmのリリース告知である。ツアー中も言うのを忘れていたらしい。その作品に収められた武道館2デイズの濃密な9mmワールドに触れていたから尚更思うのだが、情報量は膨大なのに驚異的なスピードと精度で情景や感情を分かち合う9mmの表現は、2マン・ツアーのヴァイブの中で、更にその機動力を高めていた。

“Discommunication”から向かった終盤戦は、疾走感の中でもじっくりとメッセージを伝える“黒い森の旅人”、そして轟音と和彦スクリームが拮抗する“The Silence”と、息つく暇も無いムードで最高潮へと到達してゆく。さらにこの後には、「余興しかないパーティ、楽しんで頂けましたか? 9mmからバックホーンへの最大級のリスペクトを示すために、今からバックホーンの曲を演奏します!」と大歓声を誘って繰り出される“刃”だ。9mmの機動性を見事に発揮したカバーで、かみじょうはスティックをくるくると回しながらビートを刻み付け、本家に勝るとも劣らないシンガロング空間を生み出してしまった。ダメ押しには、「仲間入り」という歌詞のフレーズに引っ掛けて呼び込まれたTHE BACK HORN・山田と“Black Market Blues”の共演である。卓郎とブーツ姿の山田が、ユニゾンで、或いは交代でリード・ヴォーカルを務めるというレアな一幕が盛り込まれて、歓喜のフィナーレヘと向かう。全力でしのぎを削り、それゆえにリスペクトの思いも溢れた『決闘披露宴』。それはもちろんバンド人生の終着点ではなくて、両バンドの、新たな季節への旅立ちを告げる晴れ舞台でもあった。(小池宏和)
セットリスト
●THE BACK HORN
1.光の結晶
2.声
3.バトルイマ
4.コワレモノ
5.ジョーカー
6.雨
7.世界中に花束を
8.シンメトリー
9.コバルトブルー
10.シンフォニア
11.刃
●9mm Parabellum Bullet
1.Answer And Answer
2.The Revolutionary
3.Vampiregirl
4.荒地
5.The Lightning
6.Termination
7.悪いクスリ
8.キャンドルの灯を
9.The World
10.Discommunication
11.ハートに火をつけて
12.新しい光
13.黒い森の旅人
14.The Silence
アンコール
15.刃 (THE BACK HORN カバー)
16.Black Market Blues(w/山田将司)