今回のバンド・メンバーであるニコラス・メイヤー(G.)、ロンダ・スミス(Ba.)、ジョナサン・ジョセフ(Dr.)らが、思わず仰け反るほどヘヴィな爆音でイントロの音出しを決めると、そこに白のギターを弾きながら、ジャケットにサングラス、右手首にはキラキラと光を乱反射するバングル状のアクセサリーを嵌めたジェフが、いかにも「弾きまくってやるぞ」という意気込みを漂わせながら加わる。衰えも、勿体付けた雰囲気もまったく感じさせないオープニングだ。というか、マジで音がでかい。このバンド・メンバーは、来る新作の制作メンバーでもあるということで、のっけからその新作曲である“Loaded”や“Nine”を叩きつけてきた。2010年のジャパン・ツアーにも登場した女性ベーシスト=ロンダがパンチの効いたプレイを刻み、何よりも語るように、あるときは歌うように、そしてあるときは叫ぶように響く、ジェフの雄弁なこと極まりないギターが早くも全開である。
「ハイ……ただいま、トーキョー。元気だったかい?」とジェフが挨拶を投げ掛けると、ニコラスが“さくらさくら”の旋律を奏で、そこから重厚にしてエキゾチックな新作曲“Yemin”が披露される。ニコラスは特に、こういったフォーク〜トラッド風のギター・プレイで大活躍を見せてくれるプレイヤーだ。また、演奏中、ステージ中央より上手側に密集した3人にジェフが寄って行くと、ステージ下手側の空間がぽっかりと空いてしまうのが気になったが、昨年のステージではここにヴァイオリン奏者のリジー・ボールが加わっていたようだ。そのため、このアンサンブルにヴァイオリンが加わったらどうなるのだろう、と贅沢な想像を膨らませてしまう結果にもなったが、素晴らしいパフォーマンスであることに変わりはないだろう。
本編前半は、新作曲も含めて近年のレパートリーが数多く披露されたけれども、この後にはジェフがトレモロ・アームを駆使しつつ名曲“Where Were You”を繰り出して歓声を浴びる。スタンダード・ジャズのカヴァー“Goodbye Pork Pie Hat”から“Brush With The Blues”にかけては、ニコラスとのギターのコンビネーションでダイナミックに展開し、ロンダの強烈な暴れベースで転がり出す“You Never Know”でのジェフは、まるでバンド・メンバーやオーディエンスを挑発するように激しいプレイを轟かせてゆくのだった。でも、個人的には、ギターに優しく歌わせる“Danny Boy”のようなジェフのプレイも、めちゃめちゃ好きだったりする。
そして、ソリッドなこと極まりないバンド・グルーヴの中でギター・サウンドが吹き荒れる“Blue Wind”から、オーディエンスの昂った間の手を巻く“Led Boots”にかけて『ワイアード』曲を連発。思いっきり、今のバンドの躍動感が溢れるロックになっているのが痛快だ。ギターを通してホーリーなムードを伝える“Corpus Christi Carol”を挟み、そこから爆発的にヘヴィな“Big Block”でもうひと盛り上がりすると、本編ラストはジョージ・マーティンのアルバム『イン・マイ・ライフ』に提供したビートルズ・カヴァーの大名演“A Day In The Life”だ。声のように届けられるクリアな音色も、激しく唸りを上げるギター・フレーズも、ここに詰め込まれている。珠玉のクライマックスであった。
セットリスト
M1. Loaded
M2. Nine
M3. Little Wing
M4. You Know, You Know
M5. Hammerhead
M6. Angel (Footsteps)
M7. Stratus
M8. Yemin
M9. Where Were You
M10. The Pump
M11. Goodbye Pork Pie Hat / Brush With The Blues
M12. You Never Know
M13. Danny Boy
M14. Blue Wind
M15. Led Boots
M16. Corpus Christi Carol
M17. Big Block
M18. A Day In The Life
En1. Rollin’ And Tumblin’
En2. Cause We’ve Ended As Lovers