現在発売中のロッキング・オン2月号では、フランツ・フェルディナンドについての論考を掲載しています。
以下、本記事の冒頭部分より。
文=粉川しの
フランツ・フェルディナンドは、24年にアルバムデビュー20周年を迎えた。22年にはベスト盤『ヒッツ・トゥ・ザ・ヘッド』もリリースし、彼らは最初の20年にいったんピリオドを打ち、新作『ザ・ヒューマン・フィアー』で新たな10年に向けたスタートを切ったと言っていい。フランツは『ザ・ヒューマン〜』の前に5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。20年で6枚だから、多作なバンドというわけではない。その代わり彼らが際立っているのは、一枚たりともブレた作品、らしくないアルバムがないことだろう。それはフランツが常にひとつの命題を追い続けてきた、凄まじく自覚的なバンドであるからだ。
フランツ・フェルディナンドは01年、アレックス・カプラノス、ボブ・ハーディ、ニック・マッカーシー、ポール・トムソンによってグラスゴーで結成された。ちなみに最年長のアレックスは当時既に30歳間近で、フランツが結成当初から明確なビジョンを持ってバンドを築いてきたのは、彼の年の功も大きいはずだ。博覧(オタク)的な音楽趣味、ショーマンとしてのプロ精神、また、アートスクール出身の感性も含めて、アレックスにはどこかパルプのジャーヴィス・コッカーと近いものがあるが、このふたりは遅咲きという共通点もある。
とはいえ、フランツの場合は結成から火が付くまではあっという間だった。デビューシングルの“Darts Of Pleasure”の時点でインディシーンの話題を独占していた彼らは、続く“Take Me Out”で一気にメジャーに浮上。とことん愛敬たっぷりでダンサブルだけれど、奇妙に捻じ曲がったコーナーを無理やりドリフトするような意外性、そしてパンク精神も宿ったこの曲は、まさにフランツのシグネイチャー=ポップとアバンギャルドの融合を真っ先に刻んだ名曲だった。結果、04年のデビュー盤『フランツ・フェルディナンド』は全英3位、英国内だけで130万枚近く売り上げる大ヒット作に。彼らと契約した弱小レーベル(しかし極めて重要な作品をリリースしてきた)ドミノはフランツ、そして翌年のアークティック・モンキーズの獲得によって、今やイギリスで最も成功したインディレーベルのひとつとなっている。フランツのデビューはニューウェイヴ/ポストパンクリバイバルの英国における号令となり、同デビュー盤はY2Kインディスリーズの代表作のひとつとして、今なお若い世代に参照され続ける名盤だ。
(以下、本誌記事へ続く)
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