●このシーンの中での立ち位置を確立するための強みとしているところ、もしくは今回の作品を作る上でその強みが変化した部分はありますか?
ローレン「私達って、そもそもイメージとかマーケティング戦略みたいなものとは一切関係ないところでやってることだからな……ただ、結果的にはそれが良かったんだと思う。1つのジャンルには収まらないというか、ポップの感性を持ちつつオルタナ的な、インディ的なバックボーンに支えられてるという……そういう独自の路線を行ってるから、他のバンドと競わなくていい、みたいなね」
マーティン「うん、それぞれ違った個性を持つ3人が集まって、バンド的なメンタリティで協力しつつ音楽をやってるっていう、それは強みだよね。難しい状況に直面したときにも、お互いの関係性で乗り越えてる部分もあるし……これまで困難にも遭遇してきたけど、3人とも同じ気持ちで向き合ってたし。その意味では今のほうがずっとやりやすいよ。
ローレン「(5年前にも)私も2人のことを知ってはいたけど、2人の付き合いの長さからいったら、そこまでじゃなかったし、それがこうして3人で一緒に音楽を作ることになって、それがこうしてうまくいってすごくラッキーだったと思うの。
これまで3人で一緒にバンドをやっていく上で、色んな変化もあったし重要な決断を下さなくちゃいけない場面もあったけど、今は昔よりもだいぶラクっていうか、お互いのことを昔に比べてよく知ってるからね。
要するにコミュニケーションってことが大事なのよ。3人とも、物事に対する基本的な見方とか姿勢とか趣味ですごく似てる部分が多いし、それでだいぶ助かってる部分もあるんだけど、その上でお互いにどうやって正直に自分の意見を伝えて、相手の意見を受け止めるかってことなのね」
仲が良いのもそうだし、お互いがハッピーでリラックスできる関係っていうのも大事だと思う。リラックスしてるときのほうが、自分がうまく表現できるものだし、お互いに自由に自分の思ってることを言えるしね。(マーティン)
●年を重ねるにつれてどんどん仲良くなってるってことなんですか?
マーティン「本当にそうだよ。音楽を作ってるとき以外にも一緒にいる時間が多いし。まあ、年に何度かお互いから離れて充電期間みたいなものを設けることもあるけど、本当にすごく仲が良いからね。バンドを続けていく中で、バンドとしても友人としてもどんどん絆が深まっていくのを感じるし」
イアン「というか、仲良くないのにどうやって一緒にバンドをやっていけるんだろうって不思議に思うけど。売れてるバンドとかでも、お互いに嫌い合ってるバンドとかたまに見かけるけど」
マーティン「それって精神的に相当キツくない?」
ローレン「毎日が憂鬱そう(笑)」
イアン「でも、バンドとしてはそれなりに成功してるんだよ? 嫌いな者同士でどうやって一緒にバンドをやってるのか不思議でたまらなくてさ。今、自分達がこれだけ長い時間一緒に過ごしてることを考えると、これが嫌いな人間と一緒だったらと思ったら相当しんどいだろうなって」
ローレン「私なんて、たとえ10分でもイヤな気持ちになったら、そのあとしばらくずっとイヤな気持ちを引きずっちゃうのに、一緒にいてイヤな人達に四六時中囲まれてるって、本当にどうなっちゃうんだろう(笑)?」
●絶対仲が良い方が仕事はしやすいですよね(笑)
マーティン「仲が良いのもそうだし、お互いがハッピーでリラックスできる関係っていうのも大事だと思う。リラックスしてるときのほうが、自分がうまく表現できるものだし、お互いに自由に自分の思ってることを言えるしね」
●でも、仲が悪くなってくるバンドをたくさん見たんですけど(笑)
3人「(笑)」
●このバンドの場合は反対なんですね。その秘訣はなんですかね。
イアン「いや、正直、何が秘訣とか訊かれてもわからないんだけど、ただ、このバンドの場合はなぜかうまくいってるんだよね。まあ、3人の性格もあるだろうし、お互いに尊重したり譲り合う気持ちがあるからね」
マーティン「要はコミュニケーションってことだよね」
イアン「そう、パートナーとして、友達として、どうやってお互いに尊重し合いながら協力していくのか、経験を通して学んでるというか……そりゃまあ、たしかに難しいこともたくさんあるけど、できるだけポジティヴな方向に持っていきたいし、お互いにそういう気持ちで行動してるから」
●制作に対して行き違いとか考え方の違いが生まれたときににはどう解決しますか?
マーティン「意見が食い違ったときの、決まった対処法とかルールがあるわけじゃないけど……」
イアン「お互いに納得いくまで、とことん話し合うしかないよね」
マーティン「そう、ただひたすら対話やコミュニケーションを繰り返していくしかないんじゃないかな。僕達は何も自分達のエゴでこのバンドをやってるわけじゃないんで……エゴとか一切入り込まないように3人で協力しながらやってるわけで……誰か1人が強い主張をしたとしても、それがエゴから発してる意見じゃないってことがわかるから、そこで対話が途切れてしまうことがないんだよね。
もしメンバーのうちの誰か1人が、あるアイディアなり行動なりに強い思いを抱いていて、それに対して責任を負う覚悟があるなら、残りのメンバーもそれをサポートするか、もし納得いかなかったら、さらに議論を続けていくまでだし……もし誰か1人の意見に対して他のメンバーがまったく正反対の意見を持ってるとしたら、本格的に議論しなくちゃならないだろうけど、この3人の中でそこまで意見が割れることは、今さらないような気がしてね……とくにスタジオの中ではね」
ローレン「ただ、これまでの経験から、誰か1人が強く反対意見を言うときには、意固地になってるからとか相手を困らせようとかそういう理由からじゃないってことが、お互いにわかってるから。自分のやりたいことに無理矢理つき合わせるよりは、はっきりイヤって言ってもらうほうが、むしろスッキリするし。他のメンバーに無理強いして自分のやりたいことにつき合わせたって、そこから良い結果が生まれるとは思わないしね」
愛っていう絶対的な価値観が揺らいでいる中、どういう存在でありたいか、どういう世界に生きていたいか、どういう価値観を自分の核にして生きていきたいのか、一人一人が問われている時代だと思う。(ローレン)
●『ラヴ・イズ・デッド』というタイトルはこれまでの作品と比べてアグレッシブだと感じたのですが、これは現代社会に対する問いかけだと捉えて間違いないでしょうか? だとすれば、皆さんの中には答えが出ているのでしょうか。
マーティン「ハハハハハハ」
ローレン「そう、そこが狙いなの。思わず考えさせられてしまうような、大きなお題を投げかけるっていうね……今回は多くの曲で、色んな問いを投げかけてる。自分はなぜこんなふうに感じてるのか、なぜこんなに混乱してるのか、どうやって立ち上がればいいのか……」
マーティン「自分でもまだ答えは出せてないんだよね」
ローレン「そう、自分でもわからない」
●では、《ラヴ・イズ・デッド?》という疑問を投げかけなければならない現代において、どういう存在でありたいですか?
ローレン「ただ、今まさにそういう時代に生きてるってことよね。愛っていう絶対的な価値観が揺らいでいる中、どういう存在でありたいか、どういう世界に生きていたいか、どういう価値観を自分の核にして生きていきたいのか、一人一人が問われている時代だと思う。そこを突き詰めないまま、今よりも先に進むのは難しいような気がするの。今の自分自身を知らずして、その先に進むことはできないのよ」
チャーチズの3rdアルバム『ラヴ・イズ・デッド』の詳細は以下。
●リリース情報
チャーチズ『ラヴ・イズ・デッド』
レーベル:Hostess
発売日:2018/5/25(金)
価格 2,490円+税
※ボーナストラック、歌詞対訳、ライナーノーツ付(予定)
●トラックリスト
1. Graffiti
2. Get Out
3. Deliverance
4. My Enemy
5. Forever
6. Never Say Die
7. Miracle
8. Graves
9. Heaven/Hell
10. God’s Plan
11. Really Gone
12. ii
13. Wonderland