端正にしてダイナミック、エレクトロ・ポップのストイックな求道――そして溢れる光!チャーチズの最新公演を観た

端正にしてダイナミック、エレクトロ・ポップのストイックな求道――そして溢れる光!チャーチズの最新公演を観た - pic by Masanori Narusepic by Masanori Naruse

チャーチズのライブ・パフォーマンスには、常々「端正」という印象を抱いていた。シンセ・ポップ風のギター・ロックや、シンセをベタなフックにしたダンス・ミュージックが巷に溢れる今時にしては珍しいほど、自分たちのコアなアイデンティティとして生真面目でストイックに80S風エレクトロ・シンセ・ポップを追求し続ける彼女たちのパフォーマンスは、何をしてもフォトジェニックなローレン・メイベリーというアイコンの存在も含めて、逸脱や暴走よりも調和と美観を極める意思を強く感じさせるものだったからだ。

昨年のフジロックから約半年ぶりとなる今回の来日ツアーも、結論から言えばまさに端正なものだった。しかし端正であると同時に大きくうねってアップダウンを繰り返すダイナミズムも新たに生じていて、非常に動的なライブでもあった。今回の編成にドラマーがいたことも大きいだろう。ザクザクとインダストリアルなビートを刻む“Bury It”や、生ドラムと打ち込みの応酬で分厚い弾幕が生じた“Gun”、マーティンがステージを端から端まで高速移動しながら歌いまくしたてる“Under The Tide”などは、チャーチズの調和と美観の許容域が一気に広がったことを感じさせるパフォーマンスだった。

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その一方で、海の底から波間で揺らぐ陽光を見上げるような照明も繊細で美しかった“We Sink”や、シンセがポリリックな点描として置かれていく“Graffiti”を筆頭に、彼女たち固有の端正さは随所に健在で、ゲストで登場した水曜日のカンパネラのコムアイが「ローレンはどんなに動いても全然汗かかないんだよね、ほんとフェアリーみたい」と言っていたけれど、長めのチュチュみたいなスカートを翻し、くるくると回りながら歌うローレンの可憐さももちろん不変だ。そして、そんなコムアイとローレンのシャウトの応酬でガール・パワーが炸裂した“Out Of My Head”は、この日の中盤のクライマックスとなった。

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そんな“Out Of My Head”、思いっきりブーストさせたシンセが幾重にも重なり合った“Miracle”のヘヴィネス以降の後半は、徐々に圧を抜き、レイヤーを一枚ずつ脱ぎ捨てて身軽になったシンセ・ポップのピュアな響きが際立つ展開へ。この日の豊洲PITは残念ながら満員とはいかなかったけれど、障害物が皆無でだだっ広いPITの音の抜けも見晴らしも良い環境は、そんなチャーチズの拡大&収束自在の現在の音響モードにぴったりだったと思う。ちなみにサマソニでの再来日も決定したチャーチズ。今回の単独を見逃した人も、成長著しいこの『ラヴ・イズ・デッド』期の彼女たちのライブを今夏にぜひ体験してほしい。(粉川しの)

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