ルー・リードの最初の妻ベティ・クロンスタッド、初めてルーとの思い出について語る

ルー・リードの最初の妻ベティ・クロンスタッド、初めてルーとの思い出について語る

ルー・リードがヴェルヴェット・アンダーグラウンド解散からソロへと再起を図っていた60年代末から70年代にかけて、ルーのパートナーとして結婚もしていたベティ・クロンスタッドがルーと過ごした日々を振り返っている。

ベティは1968年、コロンビア大学の学生で19歳だった時に初めてルーに紹介され、ふたりの交際は5年続いたというが、その間、結婚していたのは1年足らずだったとインディペンデント紙に語っている。当初ベティはルーがヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーであることさえ知らなかったといい、ヴェルヴェットの解散直前にそのことを知らされたという。ヴェルヴェット解散後のルーについては実家住まいに戻り、よく失意の日々と説明されることが多いが、再起を図っていたとはいえ失意の日々だったとはまったく言えないとベティは振り返っている。ルーの家族は「素晴らしい人たちでルーを応援していた」とベティは語っていて、ルーが実家に戻ったのもそんな家族の支援のもとで自分を見つめ直すためだったという。その間、ルーは父親の会計事務所でタイピストとして働き、「ハーバード大学で発行している文学誌に詩もいくつか発表していた」という。

なお、ルーの魅力をベティは次のように振り返っている。

「一緒に住む前にはしばらく交際を続けたんだけど。ルイス(ルー)は物静かで、内省的な物書きで、抱きしめたくなっちゃうような人だったのね。彼の書いているものは本当に素晴らしいと思ってたし。どうして結婚したのかということを簡単に説明すると彼が"スウィート・ジェーン"を書いたからということになるわね」

ルーはその後、ベティとともにソロ活動を軌道に乗せることを決意し、ロングアイランドにある実家からマンハッタンへと出てふたりで生活を始めることになるが、「わたしたちの関係の目的はルイスのキャリアをしっかり立ち上げることにあった」とベティは説明する。

「わたしはルイスに成功できるようになんでも助けるし、自分のすべてを捧げてみせると約束したの。まだ夢を見てる子供だったし、恋もしていたわけだから。でも、ルイスと彼の才能と作品をわたしは信じていたのよ。ルーのことをよく知ってる人は、彼が個人的にも仕事の上でも、ほとんどの人のことを信用していないと言うものよ。でも、わたしはルイスを信じていたの。彼の家族にもしっかり受け入れられてたし、わたしがお金目的でルーの手助けをしているんじゃないってわかってもらえていたからなのね」

ベティとの関係を続けた時期にルーはソロの初期3枚である『ロックの幻想』、『トランスフォーマー』、『ベルリン』をリリースするが、特に1972年の『トランスフォーマー』でアメリカとヨーロッパのオーディエンスはルーに飛びついたとベティは説明していて、「"ワイルド・サイドを歩け"ですべてが変わったんだけど」と振り返っている。

「そもそもルイスは世界的なレヴェルで成功することにすごく腐心していたの。ルイスはずっとヴェルヴェッツでもそのレヴェルで成功できていたはずだと考えてて、でも、それは失敗していたから。ルイスはもうそういう巡りあわせがもう二度と自分にはこないんじゃないかってそれをすごく気に病んでいたのね」

「"パーフェクト・デイ"はふたりで公園に行った時のことを書いていて、まったくあの内容の通りのことになっていたの。その頃、ちょうど婚約もしてて。この曲の素晴らしいところはすごく単純なラヴ・ソングであるかのようでいて、好き合っていても大人の恋愛はすごく込み入ったもので単純にはいかないということをほのめかしてもいるからなのね。ルイスは"パーフェクト・デイ"の一番大切なくだりは『きみは俺自身を忘れさせてくれる/俺は別な人物になったかと思ったよ、もっと善人に』というところだと言っていたわね。確かにわたしはそういう気持ちにさせてあげられたのかもしれないけど、わたしにとってすごく印象的なくだりなのは、『きみのおかげで俺はしがみついていられる、しがみついていられるんだ』というところなのね。というのも、ルイスはしらふでいるためにわたしに頼っていたし、それはルイスだけでなく彼のマネジメントにも頼られていることだったから」

実は付き合い始めた頃からルーの酒量は尋常ではないものになっていて、ベティはルーからアルコールを遠ざけるという重責を常に担っていたという。それだけなく、薬物もソロ・デビュー後からルーの習慣のひとつになってきていて、ルーをしらふにしておいてほしいというマネジメントからの要請も大きなプレッシャーとなって肩にのしかかってきていたという。

「『ベルリン』のレコーディングとツアーの頃からもうなにも歯止めが利かなくなり始めて。わたしもヘリコプターでルイスのところに呼びつけられたりしてて、それはわたしなしでは仕事ができないのが明らかだったからなの。当時の女性っていうのは、そういうことを期待されていたのね。自分の主人をしっかり支えろって。それがわたしの仕事として突きつけられるようになったんだけど、そのせいでわたしたちの関係には大きなひびが入ってしまったのね」

その直後にベティはルーのもとを離れ、まったく別な道を歩むことになったが、ルーの訃報にうちひしがれたことに自分でも驚き、初めて自分からルーとのことを語ることを決意したという。

「2013年にルイスの死を知った時、悲しみでなにも見えなくなってしまって、本当に虚を突かれた感じになってしまったの。ルーが亡くなってこんなに深く傷つくとは思っていなかったのね。すべてあまりにも昔のことだったから。それで今わたしはルーとわたしのこうした話のいくつかを本としてまとめているところなの」
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