クリープハイプ、野音で打上げ! 4ヶ月に及んだロングツアー最終日を即レポ
2015.05.18 21:00
1月より全国ライブハウスツアー「一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう 前編」、3月より全国ホールツアー「一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう 後編」を開催し、約4ヶ月にわたって全国をまわってきたクリープハイプ。その最終公演となるライヴ「『一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう 』総集編〜東京の中心で◯◯◯を叫ぶ〜」が、2015年5月16日、日比谷野外大音楽堂にて行われた。RO69では、この模様をライヴ写真とレポートでお届けする。
--------------------------
「これからも前に進んでいきましょう。どんどん年を重ねていって、お互い前に進みつづけた先で、また色んなところで会いましょう」――ダブルアンコールの“二十九、三十”に入る前、尾崎世界観(Vo・G)はそう言っていた。その力強い口調に驚かされたとともに、いつの間にか、こんなにも前向きな言葉が似合うバンドに彼らがなっているという事実に、胸を打たれた瞬間だった。昨年12月リリースのアルバム『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』を引っ提げ、今年1月から約4カ月間にわたって全国ライブハウスツアー(前編)とホールツアー(後編)を実施してきたクリープハイプ。その総集編となる初の日比谷野外大音楽堂ワンマンは、成熟の時を迎え新たな使命に突き動かされはじめたバンドの今を、鮮烈にアピールしていた。
最新アルバムの楽曲をじっくり聴かせてきたここまでのツアーと違い、この日はバンドの歴史を総ざらいするような特別なステージ。「どうしても明るいうちにコレをやりたかったんですよ。子どもが帰っちゃう前に、一緒に悪いことしましょう!」と、いきなり「セックスしよう!」(“HE IS MINE”)の大合唱を日比谷の空に響かせる。そのまま“ウワノソラ”を畳み掛け、客席を歓喜の渦に落とし込んでいく4人。こういった往年のキラーチューンをのっけから持ってくるあたりに、今のバンドの強さを感じる。瑞々しくタイトなアンサンブルと、尾崎の甲高い歌声も、いつにも増してシャープな切れ味を湛えているように感じた。
そんなバンドに空も味方したのだろうか。雨の予報があったにもかかわらず、わずかに雨が降ったのは、切なくディープな詩情を綴った“傷つける”のときだけ。「空に傷ついて雨が降ってきたのかな」という尾崎のMCも冴えわたり、野外ライヴならではの趣が生まれていく。しかも次の“オレンジ”に入るなり、それまでの小雨が嘘のように止んでしまうという奇跡も。スコーンと突き抜けたサウンドと歌声のエネルギーが空に伝播しているようで、これには尾崎も「ウチの雨がご迷惑をおかけしました」とご満悦の様子だった。
後半に入ると、リフとビートがカオティックに切迫する“エロ”を威勢よく叩きつけ、格段に成熟したバンドサウンドの凄みを見せつける4人。“イノチミジカシコイセヨオトメ”“手と手”とアッパーな曲を畳み掛け、“憂、燦々”の目も眩むような高揚感へとつなげてみせる。その後も「5年ぐらい前に(バイト先の)立川のラブホテルでパートのおばさんにイジメられている時期があって。色とりどりの入浴剤を箱に入れながら『チクショー』って思っていたんだけど。まさかこんな大勢の前で5年後にライヴができるとは思ってもいませんでした」と“ラブホテル”をプレイしたり、ミラーボールの閃光とともに最新シングル“愛の点滅”をダイナミックに放ったりと、クリープハイプならではの甘酸っぱいエモーションと眩いサウンドが全開のステージを経て、本編ラストの“ねがいり”へ。「今まで色んなことに後悔してばかりだったけど、自分で選んだものは間違いないと思いたい。後からでもいいので、自分のやったことを良かったなって思えるように生きていきましょう」と届けられた歌が、現実に傷ついたすべての人々の心を癒すように、強く、優しく響いた。
この日、何度も「ありがとう」と言っていた尾崎。その感謝を胸に新たなバンドへと進化しつつあるクリープハイプの未来が、大ラスの“二十九、三十”の歌に力強く映し出されていた。ひねくれた態度で現実への不満や鬱憤をブチ撒けるバンドではなく、大切な仲間を引き連れて未来を切り拓いていくバンドへ――作品とライヴを重ねる度に見違えるほど頼もしくなっていくクリープハイプの物語は、まだまだ続いていく。(齋藤美穂)
●セットリスト
01. HE IS MINE
02. ウワノソラ
03. 大丈夫
04. 風にふかれて
05. ヒッカキキズ
06. 本当
07. グレーマンのせいにする
08. 傷つける
09. オレンジ
10. エロ
11. イノチミジカシコイセヨオトメ
12. 手と手
13. 憂、燦々
14. ラブホテル
15. 火まつり
16. かえるの唄
17. チロルとポルノ
18. 左耳
19. 愛の点滅
20. 百八円の恋
21. 社会の窓と同じ構成
22. 社会の窓
23. ねがいり
(encore 1)
24. ボーイスENDガールズ
25. さっきはごめんね、ありがとう
(encore 2)
26. 二十九、三十
--------------------------