【コラム】ましまろ、1stアルバムついにリリース! マーシー、何を歌う!?

【コラム】ましまろ、1stアルバムついにリリース! マーシー、何を歌う!?

真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)と真城めぐみ&中森泰弘(ヒックスヴィル)による新バンド「ましまろ」結成発表から約半年、いよいよリリースの時を迎えた1stアルバム『ましまろ』。3人の交流は1980年代前半から実に30年以上に及ぶそうだが、片やザ・ブルーハーツ→ザ・ハイロウズ→ザ・クロマニヨンズとロックンロール街道をひた走ってきたマーシー、片やロッテンハッツを経て1994年に結成したヒックスヴィルでグッドメロディを紡ぎ続ける真城&中森――とまったく別の軌道を描いてきた3人が、こうして新たにひとつのバンドとして音を鳴らしていることに、おそらく誰よりもメンバー本人が驚きと喜びを感じていることだろう。

GS/ガレージ/ネオアコ/フォークなど多彩な音のエッセンスが織り成す「平熱の高揚感」とでも呼ぶべき豊潤な空気感。《いつもはやわらかい夕暮れ時が/かたまり ひびわれて ぶつかる ぶつかる》(“ガランとしてる”)、《生命の謎やがて解けて 何も驚かなくなり》《恋の謎だけは 解けないでほしい》(“ずっと”)といったノスタルジックなセンチメントの風景越しに、心の奥底のやわらかい場所を直接震わせてくるマーシーのメロディと歌詞(4曲目“いつかどこかできっとまた”のみ中森詞曲)。そして、マーシーの歌。シングル『ガランとしてる』のカップリング曲“しおからとんぼ”(今作アルバムにも別アレンジを収録)でもリードヴォーカルをとっていたマーシーの、高く伸び上がるごとに心地好くざらつくあの歌声が、今作でも随所で前面にフィーチャーされ、真城の艶やかな歌声とゆっくりじっくり絡み合っている。

同じく「終わりゆく夏」のノスタルジックな質感の作品ということで連想される、マーシーの1stソロアルバム『夏のぬけがら』(1989年)はしかし、“夏が来て僕等”にしても“アンダルシアに憧れて”にしても、「ロックンロールギタリストが歌う楽曲」としての暴発寸前のヴァイブをその渇いた空気の中に孕んでいたし、彼のメロディを歌い続ける唯一無二のヴォーカリスト=甲本ヒロトの存在を逆説的に想起させるものでもあった。しかし、マーシー本人が歌っている曲も真城が歌う曲も、今作『ましまろ』に結実したマーシーのメロディは、ザ・クロマニヨンズともこれまでのマーシーのソロ作とも違った、「誰のものでもあり、誰のものでもない」とでも形容すべきノーガードな開放感に満ちている。

マーシー自身、そんな「無記名の普遍性」を解き放つ場を求めていたからこそ、新たな形態のバンドを求めたのかもしれない。あるいは逆に、真城&中森とのコミュニケーションの中でその可能性に気づいたのかもしれない。いずれにしても、彼にとって「ましまろという場所だからこそ、今だからこそ描ける歌」が確かにあることを、今作『ましまろ』でのマーシーの虚飾なき歌が雄弁に物語っている。(高橋智樹)
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