【コラム】DAOKOの初ワンマンを観た! 18歳のアイコンが語った表現の「本質」って?

【コラム】DAOKOの初ワンマンを観た! 18歳のアイコンが語った表現の「本質」って?

《雨降りの渋谷 傘で覆われて/カラフルに彩る 水たまりがなんだか/ちょっぴり 僕には眩しい 今欲しいものは/109から出てきたギャルに舌打ちされたって/めげないメンタリティ》(“BOY”)

《太陽が照らす小田急線内/あの子の中じゃ今もまだ圏外/恋愛 縁無い やっぱ焦んない/携帯からのミュージック安定剤》(“水星”)

《QFRONTに流れてく歌詞は/どれだけの影響力を持つの/流れてく時間/ヒト モノ 労働 情報》(“嫌”)

今春高校を卒業し、セルフタイトルのアルバム『DAOKO』で晴れてメジャーデビューを果たした18歳の女子ラッパー/シンガーソングライターのDAOKO。その囁くようなトーンのラップは、彼女が切り取った情景と心象をそっくりそのままリスナーの脳内に移し替え、新進気鋭/ベテランミュージシャンとタッグを組んで産み落とされる斬新なトラックからは、ふくよかなイマジネーションの彼方にまでリスナーを連れ去るように歌メロが放たれる。

アルバム『DAOKO』のリードトラックでMVも製作された“水星”は、tofubeatsとオノマトペ大臣による同名曲をリメイクしたものだ。そもそも、tofubeatsヴァージョン自体がテイ・トウワのプロデュースによるKOJI1200(今田耕司)の“ブロウ ヤ マインド〜アメリカ大好き”(1996年)を元ネタにしているので、当時から連綿と受け継がれるジャパニーズヒップホップのメンタリティを嗅ぎ取ることが出来る。

8月17日に渋谷WWWで行われたDAOKO初のワンマンライヴでは、ストリートもポップもサブカルも、あらゆるカルチャーの枠組みを踏み越えてゆくDAOKOの浸食力が全開になっていてとても興味深かった。表情がうかがえる程度の薄い紗幕スクリーンの向こう側でバンドセットのDAOKOがパフォーマンスし、スクリーン上の刺激的な映像が音楽とシンクロする。アルバム『DAOKO』の全曲と、インディーズ時代からのレパートリーが3曲。そして新曲が3曲。この3つの新曲というのが、2015年10月21日(水)にリリースされるファーストシングル『ShibuyaK/さみしいかみさま』の収録曲である(こちらのニュース記事参照→http://ro69.jp/news/detail/129443)。

アップリフティングなエレクトロサウンドと鮮烈な歌メロに彩られた“さみしいかみさま”は吉崎響監督による映像と共に衝撃をもたらし、ポエトリーリーディング風の“ゆめみてたのあたし”では、彼女の声の情感が丸裸になる。そしてアンコールで披露されたキャッチーな“ShibuyaK”では、指を交差させる振り付けまでが繰り出される(「Kは交差点のKです」と説明されていた)。インディーズ時代から大きな注目を浴びていた若い才能が、何よりも先に自分自身の表現領域を開拓し、全力で押し広げようとする姿が、そこにはあった。初ワンマンを成功させた後日の8月21日、DAOKOは自身の公式ツイッター上に、長い文章を投稿した。その一部を紹介したい。

「メジャーという立場になってから、段々と明確になったことがあります。曖昧な気持ちでなんとなく“お金”と“名声”を求めて『何処か』へ目指しても、薄まった水の様な味のアーティストになってしまうということ。そのような志で生きていくのは、この恵まれた状況下で 沢山の関わってくれている方々に対して無礼だということ。本質は何なのか? 日々自問しながら、泣きながらでも、ベストを尽くして、アーティスト生命を全うしたいです。」

センセーショナルな面ばかりに注目してしまいがちだけれど、DAOKO自身の思いはベタなくらいひたむきな努力へと向けられている。成長し、社会に戸惑い、躓き、なお生きる。DAOKOが切り取ったリアルな情景と心象が広く分かち合われるとき、その繋がりを何よりも強く支えるのは、そのベタなくらいの生活力なのだと思う。まずはニューシングル、期待していてほしい。(小池宏和)
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