【コラム】ミクスチャーロックの絆はなぜ涙を誘うのか?――DA、10-FEET、MWAMの競演を考える

【コラム】ミクスチャーロックの絆はなぜ涙を誘うのか?――DA、10-FEET、MWAMの競演を考える

9月26日・27日に開催された「TOWER RECORDS presents Bowline 2015」のうち、Dragon Ashのキュレーションによって開催された26日の回は、彼らがかつて掲げていたジャンル無用のイベントコンセプト=「TMC(Total Music Communication)」を2015年の今に再び突き上げるものだった。そして、トリを務めたDragon Ashのステージには、10-FEET・TAKUMA/the telephones/MAN WITH A MISSION/山嵐といった出演者が次々に舞台に姿を現している(詳細はこちら http://ro69.jp/news/detail/131528)。自身のアイデンティティとしてミクスチャーロックを鳴らし、異ジャンルも含めシーン全体をリフトアップしてきたDragon Ashだからこそ実現できた、まさに歴史的な一大競演だった。

一方、4日間で25万人を動員した「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」。その大トリ:10-FEETの全曲クライマックス的なアクトの中でも、ひときわ感動的な名場面として際立っていたのが、Dragon Ash・Kjを迎えてGRASS STAGEを満場の大合唱へ導いた“RIVER”だった。さらにその前日には、同じくRIJF2015のMAN WITH A MISSIONのステージにもKjはオオカミ姿で登場。「地球人ども! 飛び跳ねろ!!」とキッズを煽り倒して至上の狂騒感を呼び起こしていた姿はどこまでも感動的だった。

さらに遡れば、「京都大作戦2015」では主催者:10-FEETのステージにKj(1日目)、MWAMジャン・ケン・ジョニー&トーキョー・タナカ(2日目)がゲストとして出演しているし、Dragon Ashは台風直撃で中止になった「幻の第1回」から「京都大作戦」のラインナップに毎年名前を連ねているし、10-FEETはデビュー間もないニューカマーだったMAN WITH A MISSIONをいち早く「京都大作戦2011」に招聘しているし、MAN WITH A MISSIONは現時点で国内唯一のフィーチャリングゲストとして10-FEET・TAKUMAを自身の作品に招いているし(『database feat.TAKUMA(10-FEET)』)……といったトピックを逐一細かく挙げるまでもなく、精鋭ひしめくミクスチャーロック勢の中でも、Dragon Ash/10-FEET/MAN WITH A MISSIONの3組が特に熱い絆を築いていることは誰もが感じていることと思う。

ひと口に「ミクスチャーロックの象徴」と言っても、そこからイメージするバンドは人によって異なるはずだ。Dragon Ashを連想する人もいるだろうし、10-FEETを思い浮かべる人もいるだろうし、MAN WITH A MISSIONを想起する人もいるだろうし、あるいはレッド・ホット・チリ・ペッパーズやレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンを挙げる人もいるかもしれない。だが、音楽的にはまるで異なるそれらのバンドに、ひとつだけ共通していることがある。それ自体が「根ざすべき特定のジャンル」ではなく「今のシーンで鳴っているロックの“その先”を切り拓くためのボーダレスな表現のアティテュード」であるミクスチャーロックの核心をリアルに体現する存在である、ということだ。ミクスチャーロックを象徴するバンドは、常にミクスチャーロックの先を走っていなければならないのである。

成功に固執せず、自らの必勝パターンに甘えず、音楽的にもマインド的にも常に最先端であり続けることそのものが、リスナー/オーディエンスとの信頼関係を作り上げる何よりの原動力となっていく――Dragon Ash/10-FEET/MAN WITH A MISSIONが各地のフェスで見せた邂逅はまさしく、彼らが常に新たなロック像を最も鮮烈に提示してきたことを讃え合う決定的瞬間でもあった。ミクスチャーロックを牽引する彼らの不動の絆は、ミクスチャーロックの「その先」で固く強く結ばれているのである。(高橋智樹)
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