【コラム】Mr.Children、ゆず、「新曲ライヴ」に込めた「願い」とは何なのか?
2015.11.09 21:30
《これから世の中に出ていく新曲たちを、まずライヴでファンの皆さんに聴いてほしい》――10月20日からスタートした全国ツアー「YUZU ARENA TOUR 2015-2016 TOWA-episode zero-」に先駆けて、ゆずはそんなコメントを発表していた。当初、ゆずの13thアルバム『TOWA』は今秋リリース予定だったが、8月に開催した横浜スタジアム2DAYS弾き語りワンマン「二人参客」を経て、ライヴで伝わる“音楽の力”を改めて実感したという。実際にニューアルバム『TOWA』のリリーススケジュールを、『TOWA』の楽曲をメインに据えたツアーの終了後=2016年1月へと変更することを決定している。そして。「アルバム発売前のアルバムツアー」と言えば、今年前半に行われたMr.Childrenのアリーナツアー「TOUR 2015 REFLECTION」を誰もが連想することだろう。計23曲収録・トータル110分に及ぶ「USBアルバム」=『REFLECTION {Naked}』と、そこから14曲を抽出したCD盤『REFLECTION {Drip}』の発売日は、「TOUR 2015 REFLECTION」のファイナル当日=6月4日。“足音 ~Be Strong”“REM”といった既発曲や“fantasy”“進化論”などタイアップ曲以外は誰もアルバムの全貌を知らない状態で、『REFLECTION』の収録曲を軸としたツアーを展開してみせた。ご存知の通り、Mr.Childrenはアルバムの発売後にも『REFLECTION』曲を核とした75万人動員のスタジアムツアー「Mr.Children Stadium Tour 2015 未完」を行ってはいるが、アルバム発売前のアリーナツアー・全国25万人という規模だけ見ても十分破格だ。「新作アルバムのリリース後、そのプロモーションのためにライヴツアーを回る」という「常識」は、アーティストやスタッフだけでなくリスナーまで含めて「当然」として共有されている。「誰も知らない曲を聴いても(演奏しても)盛り上がるはずがない」と。そんな中、Mr.Childrenとゆずが行ったアクションは、「アルバムのプロモーションのためのライヴ」という発想を綺麗に引っくり返し、ライヴそのものに軸足を置いて「新曲ライヴの魅力を追体験するツール」としてアルバムを再定義するくらいの痛快なラジカルさを孕んでいる。冒頭に挙げたゆずのコメントには以下のようなメッセージが続いている。《振り返ると、できたばかりの新曲をお客さんの前で初披露し、そのお客さんの盛り上がりをみて「よし、この曲をカセットテープで売ろう」と2人で話していた路上時代。あれから十数年経ったいま、その感覚がふつふつと蘇り、「当時やっていたことを、いまのゆずがやったらどうなるんだろう?」と好奇心が湧いてきました》《初めて披露する新曲たち。みなさんがどんな反応をしてくれるのか、気に入ってくれるのか。ほんの少し不安でもあり、でも、ものすごく楽しみでもあります》「アルバム発売前のアルバムツアー」という常識に囚われない行動を、ライヴシーンにおいて日本屈指のスケール感を持つMr.Children&ゆずという2組が選択したことは実に示唆的だ。そしてもちろん、それは「新作アルバムの楽曲=自分たちの音楽の“最新型”」と「新曲を演奏するライヴパフォーマンス」に対する揺るぎない自信に裏打ちされていることは言うまでもない。(高橋智樹)